2026年08月19日
【映画評】白パンと独裁者
イントロダクション
ドイツの勝利を願ってはいけないの?世界が変わる一週間の物語。
第二次世界大戦末期、本土へ向かう爆撃機が上空を飛行する中、ドイツ北部に位置するアムルム島はどこか美しく、楽園のような静寂を保っていた。戦地から疎開してきた12歳の少年ナニングは、父に代わり農作業で得たわずかな食糧で身重の母と幼い弟、叔母ら家族を支えている。 島民たちが終戦を待ち望むなか、ナチス国家、ひいてはヒトラーへの忠誠を信じて疑わない母・ヒレ。しかし、ラジオがその死を告げた瞬間、彼女は取り乱し、家族の日常も一変していく。生気を失い、食事を拒むヒレが唯一欲したのは、たっぷりのバターとはちみつが塗られた白パンだったー 母の願いを叶えるための冒険の中で、ナチスへの忠誠が当たり前だった少年が目にする、戦争の終わりと家族の秘密。彼が守りたかった世界を揺るがす、静かなる衝撃が明かされる。
ドイツの名匠 ファティ・アキン監督キャリア史上最大の新境地!恩師の幼少期にまつわる実話を描き出す
『女は二度決断する』(17)でゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞し、世界中を熱狂させてきたドイツの鬼才ファティ・アキン。本作は、彼の恩師でありドイツ映画界の重鎮ハーク・ボームの幼少期の記憶を、愛弟子であるアキンが映画化した渾身の一作。第78回カンヌ国際映画祭カンヌ・プレミア部門に正式招待されたほか、ドイツで最も影響力のある第47回バイエルン映画賞にて最高賞を受賞、ドイツ国内で観客動員数55万人を突破し大ヒットを記録するなど、国内外問わず世界的に喝采を浴びている。さらにはアキンとは初タッグとなる『インデペンデンス・デイ』(96)の撮影監督を務めた、カール・ウォルター・リンデンローブによるアムルム島の絵画のような海景、そして張り詰めた静寂の瞬間を美しく捉えた映像が高く評価され、第40回全米撮影監督協会賞にもノミネートされた。これまで個人の情熱をダイナミックに描いてきたアキンが、1945年の歴史の震えを、詩的なまなざしで捉えた本作は、まさにキャリア史上最大の新境地。本作が映画デビューとなる新星・ジャスパー・ビラーベックらフレッシュな感性と、ドイツ映画界のみならずハリウッドでも活躍するダイアン・クルーガーら実力者の確かな重みが見事に溶けあい、観る者の心に深く染み入る。
枢軸国側国民固有の情感というか、終戦前後の日本人のメンタリティに近いのが面白い。田舎者固有の排他主義や軍政への盲目感は等身大でよく理解できるし、何より島の自然や島民の生活描写が生々しくてとても印象深い。日本同様に不謹慎ざます正義リベラルが跋扈しているドイツでこのような「軍国主義賛美系」を撮るのは大変だったと思いますし、人間の弱さを描くにはいいテーマなんだよな。地味な作品ではありますが思想云々抜きにして結構心に残る作品でした。
満足度(5点満点)
☆☆☆☆








