2024年04月30日

【映画評】システム・クラッシャー

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多動9歳女児の話。ドイツ映画。

映画「システム・クラッシャー」オフィシャルサイト

イントロダクション
嵐のような9歳の女の子ベニー。幼少期、父親から受けた暴力的トラウマ(赤ん坊の時に、おむつを顔に押し付けられた)を十字架のように背負い手の付けようのない暴れん坊になる。里親、グループホーム、特別支援学校、どこに行こうと追い出されてしまう、ベニーの願いはただひとつ。かけがえのない愛、安心できる場所、そう!ただママのもとに帰りたいと願うだけ。居場所がなくなり、解決策もなくなったところに、非暴力トレーナーのミヒャはある提案をする。ベニーを森の中深くの山小屋に連れて行き、3週間の隔離療法を受けさせること…。

ケアホームからケアホームへ、里親から里親へ、「システム・クラッシャー」とは、あまりに乱暴で行く先々で問題を起こし、施設を転々とする制御不能で攻撃的な子供のこと。監督・脚本は、本作が長編デビュー作となるドイツ出身のノラ・フィングシャイト。ホームレスを描いたドキュメンタリーの撮影中、そこで「システム・クラッシャー」と呼ばれる子供がいることを知ったことから映画化。その強烈な演出により第69回べルリン国際映画祭銀熊賞とモルゲンポスト紙審査員賞の2冠を受賞。ドイツ映画賞では作品賞、監督賞、脚本賞、俳優賞、女優賞を含む8部門を獲得、世界各国で37冠(26ノミネート)に輝く。ベニー役にはへレナ・ツェンゲル。全身全霊の演技で力演、ドイツ映画賞主演女優賞を歴代最年少で受賞。

福祉制度が整っている国でも、そこからこぼれ落ちてしまう子供は少なからずいる。システムの仕組みから外れた破壊者は社会から排除するしかないのか?福祉制度が整っている国でも、そこからこぼれ落ちてしまう子供は少なからずいる。世界には怒りの感情を抑えられない多くのベニーがいる。本作は、どんなに脚色されていても、決して想像上の産物ではない。甘ったるさや教訓めいたものは語らず、観客の共感を1ミリも必要とせず描き切る。ベニーは可愛らしく素敵な女の子であると同時に、錆びた鍵がついた手榴弾だ。観たからには一生忘れられない魂の映画、この強烈なストレートパンチは長い間あなたの心に残るだろう。

どこにも居場所のない9歳のベニーは吠え、吠え、吠え続ける。可愛くて、狂暴で、優しくて、切ない…ぶち切れるのは愛の不足の裏返し、ただママに愛されたい少女の怒りと悲しみの物語。

ストーリー
いつもピンクのトップスを着込んだベニーは、9歳のどこにでもいる普通の女の子。だけど、怒りの感情にいったん火がつくと、あたり構わず暴力をふるい手がつけられなくなる問題児。里親の家庭、グループホーム、特別支援学校、トラブルを起こしては新たな保護施設へとたらい回し。学校にも行かず、街をぶらついては毎日を過ごす。そんなベニーは、顔を触られることが大嫌い。ママ以外、誰にも顔を触らせない。赤ちゃんの頃、顔にオムツを押し付けられたことがトラウマとなって、感情をコントロールできないほどのパニック発作を起こすから。

友達がいないベニーにとって、心を許して話せる相手はママ、そして社会福祉課のマリア・バファネの二人だけ。特にバファネは、ベニーがトラブルを起こすたびに受け入れてくれる施設探しに奔走し、ママ以上にベニーの将来を案じてくれる頼もしい存在だ。そんな彼女が、ベニーの新しい通学付添え人、ミヒャを見つけてきた。彼の役目は文字通り、ベニーの通学に付き添うこと。だがベニーは学校へ行く気などさらさらない。挙句、「学校に行きたくない」とグループホームで包丁を振り回しては、駆け付けた救急隊に鎮静剤を打たれ、病院へと連れていかれる始末。

閉鎖病棟へ入れてしまうか、精神病院に入院させるか。それとも海外の集中体験プログラムに参加させるか。バファネやグループホームの職員たちは会議で頭を抱え、ベニーの扱いに結論を出せずにいた。そんな中、ミヒャが口を開く。「森で3週間、1対1で世話をする。水も電気もない、あの子にはいい環境だ」。そして、二人の森の中での生活が始まった。最初は掃除も、ベッドメイクも、水汲みも「やる気なし」と素っ気なかったベニー。しかし、ときに厳しく、本気で接してくれるミヒャにベニーは心を開いていく…。

監督・脚本:ノラ・フィングシャイト
1983年ドイツ、ブラウンシュヴァイク生まれ。2008年から2017年まで、バーデン=ヴュルテンベルク・フィルム・アカデミーで舞台美術を学んだ。2014年、シュトゥットガルトのホームレスの女性についてのドキュメンタリー『Das Haus neben den Gleisen/線路の隣の家』で、撮影時に出会った14歳の女性が「システム・クラッシャー」として保護施設に拒否された事件が本作製作のきっかけとなる。2017年には、アルゼンチンのメノナイトの生活を描いた卒業制作ドキュメンタリー『Without This World (Ohne diese Welt)』でブラウンシュヴァイク国際映画祭最優秀作品賞を受賞。2019年、本作は第69回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に正式出品され、銀熊賞(アルフレッド・バウアー賞)とベルリン・モルゲンポスト紙の読者審査員賞を受賞。翌年のドイツ映画賞では最優秀作品賞、監督賞、脚本賞、俳優賞、女優賞を含む計8部門を受賞し、アカデミー賞長編国際映画賞ドイツ代表作品として選出された。2021年に、Netflix映画『消えない罪』を監督。オスカー女優サンドラ・ブロックを主演に迎え、重い罪を背負って生きる元受刑者を描き、大きな話題を呼んだ。2023年には、シアーシャ・ローナン主演で、スコットランド人作家エイミー・リプトロットの回顧録『The Outrun』を手掛けている。本作は、米映画製作会社MGMがリメイク化権を獲得、チャニング・テイタムが主演とプロデューサーを務め、フィングシャイトも製作総指揮として参加予定。




前評判通り非常に引き込まれる内容でしたが凄く体力消耗した。怒りの引き金が幼少期の虐待だったとしても、取り巻く我々はマジでどうしたらいいのだろう?クライマックスの赤ちゃんシーンは心臓が痛い。最後らへんは凍死したのかと思ったけど、アフリカに行ってどうにかなるのだろうか。不謹慎ながら我が子が正常で安堵したと思った観客も多いのでは。

二度目と観たくない名作映画の典型です。凄まじい。

満足度(5点満点)
☆☆☆☆



Posted by kingcurtis 固定リンクComments(0)映画 
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