2024年04月22日
【映画評】マンティコア 怪物

イントロダクション
ゲームデザイナーの青年が生み出したマンティコア [ 怪物 ]
人間の心の闇のタブーに踏み込んだ、衝撃のアンチモラル・ロマンス
空想のモンスターを生み出すゲームデザイナーのフリアン。同僚の誕生日パーティーで美術史を学ぶディアナに出会う。内気で繊細な性格のフリアンだが、次第に聡明でどこかミステリアスなディアナに魅かれていく。しかし、フリアンは隣人の少年を火事から救った出来事をきっかけに原因不明のパニック発作に悩んでいた。やがて彼が抱えるある秘密が、思いもよらぬマンティコア [怪物] を作り出してしまう…。
フリアンが自分自身のなかに見たマンティコア [怪物]とは何なのか。どこか不穏で想像力をかきたてる“見せない演出”は、まるで観客の無意識の底に潜む [欲望] を覗くかのような仕掛けとなる。もしそれが倫理的に許されない [欲望]ならば――その感情を抱くことは罪なのだろうか?ともすれば目を背けたくなるタブーなテーマを炙り出し、物語はやがて誰も想像し得ない衝撃の境地にたどり着く――。
スペインの鬼才で超日本オタク!カルロス・ベルムト監督(『マジカル・ガール』)最新作
監督は劇場デビュー作『マジカル・ガール』(14) が サン・セバスチャン国際映画祭グランプリ& 監督賞をダブル受賞する快挙を成し遂げ、巨匠ペドロ・アルモドバルに「この映画を猛烈に愛する」と言わしめたスペインの鬼才カルロス・べルムト。独創的なストーリーと先読みできない巧みな構成に批評家や映画ファンも唸り、日本でもカルト的な人気を博した。本作でも唯一無二の映画センスでオリジナル脚本をてがけ、人間の闇の欲望を見つめる。また、「日本文化は僕の血肉」と語り日本の漫画、アニメ、映画をこよなく愛するベルムト監督。『マジカル・ガール』は架空の日本アニメ「魔法少女ユキコ」に憧れる白血病の少女をめぐる物語だが、本作の主人公フリアンも日本オタクのキャラクターとして描かれており、日本テイストは健在 !
「マンティコア」とは
西ヨーロッパの中世美術にも広く普及した、エジプトのスフィンクスに似たペ ルシアの神話上の生き物。人間のような頭、ライオンまたは虎のような胴、ヤマアラシの羽に似た有毒な棘の尾もしくはサソリの尾を持つ怪物で 、人喰い(マンイーター)と伝えられる。
ストーリー
空想のモンスターを生み出すゲームデザイナーのフリアン。VR 空間で獣のデザインを立体的に形作っていく。ある日、自宅で作業をしていると助けを求める子どもの声が。アパートの向かいの部屋から炎があがっている。玄関のドアが開かずパニックになっているクリスチャン。フリアンは必死にドアを蹴破り救い出す。
夜中、息が苦しくなり目を覚ますフリアン。病院にたどり着くと気を失ってしまう。しかし、心電図も検査の数値も正常だ。強いストレスや恐怖に対する脳の自己防衛によるパニック発作だと診断される。
フリアンは同僚サンドラの誕生日パーティーで美術史を学ぶディアナに出会う。聡明でどこかミステリアスなディアナ。彼女の父は2年前に脳卒中を患い、いまはふたり暮らしで、ほぼひとりで介護をしているという。映画やゲーム、アートについて語りあい、次第に惹かれ合っていくふたり。
しかし、フリアンはある秘密を抱えていた。それは火事から子どもを救ったあの日から、まるで肺に吸い込んでしまった煙のように彼の中で静かに渦巻いている“ある感情”。やがてそれが思いもよらぬマンティコア [怪物] を作り出してしまう…。
プラド美術館が登場して凄く嬉しかった。大昔に一度だけ行きました。あのコーナー(黒い絵)に展示されているゴヤの絵画もよく憶えているよ。
お約束の「日本ラブ」な演出には好感持てますが、今回の「見せない演出」は響かなかった気がする。昨今のキャンセル・カルチャー、LGBT思想警察跋扈に対する処世術じゃないよね?リアルな演出はご法度だとしても、どうせCGなんだからグラフィックの上ならスクリーンに投影しても芸術性が下がる訳ではなく、リベラル先生方からも許して貰えるのでは?などと。
ということで正面からペドフィリアを描いた映画は「エコール」以外、正直知らない。思う存分描くにはハードルが高いテーマではあるよね。
満足度(5点満点)
☆☆
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