2023年10月03日
【映画評】BAD LANDS バッド・ランズ

イントロダクション
第151回直木賞を受賞した『破門』や、『後妻業』などで人間を突き動かす欲望を描いてきた黒川博行の重厚な傑作小説を、名匠・原田眞人監督が待望の映画化。監督の熱意が伝播し、歳月を懸け実現した本作の主演は、第46回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞した安藤サクラ。日本映画界を牽引する両名が初タッグを組み、大胆かつ疾走感ある映像をスクリーンに焼き付ける。そして、安藤サクラ演じる主人公ネリの弟・ジョー役には山田涼介。映画『燃えよ剣』以来の原田監督作品に出演し、気迫のこもった演技で新境地を魅せる。
ネリの“生きにくい世界を生き抜く美しさと強さ”を映し出す安藤サクラと、ジョーの抱える異常な愛と衝動に狂う姿を表現した山田涼介の二人が魅せる化学反応。さらに犯罪組織や警察といった姉弟の周囲で蠢く登場人物に、生瀬勝久や江口のりこ、吉原光夫、宇崎竜童といった多くの豪華俳優陣が脇を固め、名実ともに日本映画界の最前線を駆け抜ける傑作が誕生した。
姉弟が向かう先は“天国”か“地獄”か?予測不能のクライムサスペンスエンタテインメント!
原田眞人 監督・脚本・プロデュース
黒川博行さんの原作は2015年の発売直後に読みました。俗にいう「オレオレ詐欺」犯罪グループの内実がリアルに描かれていて、その世界観に惹き込まれ、監督目線で登場人物をあれこれ動かしたことを憶えています。実に刺激的な読書体験でした。その最大のポイントは、犯罪グループの元締めを補佐する立場の主人公橋岡を女性にしたらどうだろうということでした。例えば、ドストエフスキーの「虐げられた人びと」に登場するネリーを黒澤監督が「赤ひげ」に「包摂」したように。
ただ、私が手を挙げるのが遅かったために、映画化権は某社に渡っていました。辛抱強く6年待って、実現に漕ぎ着けたのは「ヘルドッグス」製作チームのおかげです。橋岡の性転換を心よく承知してくださった黒川さんにも感謝です。
理想のキャストも組めました。安藤サクラは「生きにくい」を「生き抜く」ネリーの魂の綱渡りを、橋岡ネリとして、美しく哀しく愛おしく舞ってくれました。世界の主演女優賞を全て差し上げたい名演です。原作の橋岡の疫病神的パートナーとなるサイコパス矢代穣は、沖田総司が現代に甦ったらこうなるのではないか、というコンセプトのもと山田涼介に参加してもらいました。沖田以上に切なく危険な若者を演じきった涼介の天才に私は魂を食いちぎられました。彼らを彩る関西演劇陣の濃厚なアンサンブルにも圧倒されます。一人一人紹介するのは公開間近まで待たねばならないのがとても残念。 沼津生まれのロスアンジェリーノ東京人の私が憧れ続けた「大阪弁フィルム・ノアール」はこの秋、世界に打って出ます!
前評判悪かったので観ていないのですが、監督前作「ヘルドッグス」と恐らく同じクオリティなのでは。主役の安藤サクラは言うまでもなく、宇崎竜童を筆頭にサリングロックなど味がある役者を多く揃えるも、核となる人物にふにゃふにゃのヘイセイジャンプさんを据えているのでシリアスなテーマのバランスが最後まで微妙に崩れた印象。客席には単独女性客が非常に多いこともありヘイセイジャンプさんキャスティングは興行的にアタリですが、藤井道人のヤクザ映画と同じく「よりすぐりの役者さんが一生懸命ヤクザを演じていますよ。どうですアクションも凄いでしょう?」風の演出が違和感ありありでダメ。要所要所は目を惹き面白いのですが、綺麗さっぱり後には何にも残らないコンビニ弁当風のおしゃれヤクザ映画でした。やっぱ原田眞人は好みが合わない。スタイリッシュなヤクザ映画が好きな人にはオススメ。
大阪府警の「hawks」「tigers」「buffaloes」はメチャウケたよ。hawks愛されているやん。
満足度(5点満点)
☆☆