2022年12月20日

【映画評】母の聖戦

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メキシコ誘拐ビジネス実話ベース作品。
三度の飯より大好きなミシェル・フランコ監督最新作かと盛大な勘違い。本作監督はこれがデビュー作だそうで着眼点は面白い。この手の素材はそこら中に転がっているし益々精進積むといいよ。

『母の聖戦』オフィシャルサイト

イントロダクション
ルデンヌ兄弟×クリスティアン・ムンジウ×ミシェル・フランコ共同プロデュース
メキシコの実話をベースに、巨大化された「誘拐ビジネス」の闇に迫った衝撃作
身代金目的の誘拐という犯罪は、極めて成功率が低いうえに刑罰が重いことから、俗に“割に合わない犯罪”と言われるが、中米のメキシコではそのような常識は一切通用しない。犯罪組織による誘拐ビジネスが横行するこの国では、2020年に826件の誘拐事件が報告されている。ただし、治安当局への届出を前提とするこの件数はうのみに出来ない。同国の国立統計地理情報院によると、届出率はわずか1.4%。実際には年間約6万件にもおよぶ誘拐事件が頻発していると推定され、多くの庶民が組織の報復を恐れて泣き寝入りを強いられている。日本では知られざるメキシコの誘拐ビジネスの闇に迫った『母の聖戦』は、ルーマニア生まれでベルギーを拠点に活動するテオドラ・アナ・ミハイ監督の劇映画デビュー作。犯罪組織に誘拐された娘を奪還するため、命がけの闘争に身を投じた女性の実話をベースに、ごく平凡なシングルマザーの主人公がたどる想像を絶する運命を映し出す。
この3ヵ国合作の野心的な国際プロジェクトは、名だたる映画人のサポートによって実現した。現代のヨーロッパを代表する名匠のダルデンヌ兄弟、『4ヶ月、3週と2日』でカンヌ映画祭パルムドールに輝いたルーマニア・ニューウェーヴの重要監督クリスティアン・ムンジウ、『或る終焉』『ニュー・オーダー』で知られるメキシコの俊英ミシェル・フランコがプロデューサーとして参加。ワールドプレミアとなった第74回カンヌ国際映画祭で大反響を呼んだ本作は「ある視点」部門で勇気賞を受賞し、第34回東京国際映画祭では審査委員特別賞を受賞した。

センセーショナルな社会派劇×緊迫感みなぎるクライム・スリラー
このセンセーショナルにして骨太な社会派ドラマは、並外れた緊迫感がみなぎるクライム・スリラーでもある。全編にわたって主人公シエロの視点でストーリーが展開する本作は、観る者を誘拐ビジネスの闇の奥深くへと誘い、この世のものとは思えない理不尽な暴力が渦巻く光景を目撃させていく。ドキュメンタリー出身であるミハイ監督の、リアリスティックな眼差しに貫かれた映像世界の強度に息をのまずにいられない。ハンディカメラのショットを織り交ぜ、濃密なサスペンスの創出に貢献した撮影監督は、ラドゥ・ジューデ監督の問題作『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版』などに携わってきたルーマニア人のマリウス・パンドゥルである。
主演を務めたアルセリア・ラミレスは、キャリアの初期に出演した『赤い薔薇ソースの伝説』から、Netflixドラマ・シリーズの近作「ザ・クラブ」まで長きにわたってメキシコで活躍している実力派女優。とめどもない不安と喪失感に打ちひしがれた母親が、あらゆる苦難もいとわない不屈の捜索者、さらには怒りの復讐者へと変貌していく様を迫真の演技で体現した。

戸惑い、焦り、愛情、怒り、そして戦う母へ
自らの命に代えてでも、我が子の奪還を誓った母親の、想像を絶する愛と執念の物語
入念なリサーチを重ねて本作に取り組んだミハイ監督は、決して裕福ではない庶民が犯罪組織に搾取され、警察にも取り合ってもらえない非情な現実を描き出す。ある日突然、娘を誘拐された主人公シエロが容赦なく身代金をむしり取られ、たちまち孤立無援の極限状況に陥っていく導入部からしてショッキングだ。しかし、驚くのはまだ早い。誰にも頼れないことを悟ったシエロは、危険を顧みず犯罪組織への監視、追跡を行い、軍をも巻き込んで娘の捜索を繰り広げていく。その凄まじい執念の源である“母性愛”こそは、ミハイ監督が追求したもうひとつの重要なテーマである。

ストーリー
メキシコ北部の町で暮らすシングルマザー、シエロのひとり娘である十代の少女ラウラが犯罪組織に誘拐された。冷酷な脅迫者の要求に従い、20万ペソの身代金を支払っても、ラウラは帰ってこない。警察に相談しても相手にしてもらえないシエロは、自力で娘を取り戻すことを胸に誓い、犯罪組織の調査に乗り出す。そのさなか、軍のパトロール部隊を率いるラマルケ中尉と協力関係を結び、組織に関する情報を提供したシエロは、誘拐ビジネスの闇の血生臭い実態を目の当たりにしていく。人生観が一変するほどのおぞましい経験に打ち震えながらも、行方知れずの最愛の娘を捜し続けるシエロは、いかなる真実をたぐり寄せるのか……。

ディレクターズノート
このストーリーは、あるメキシコ人の女性が私に打ち明けてくれたもので、彼女は(主人公シエロと)非常に似た経験をして、それが本作の基になっている。彼女はある日私に「毎朝、起きるたびに、この拳銃で自殺するか、人を撃ちたいと思う。そういう風に私は毎朝感じている」と言ったの。この言葉を聞いて私は頬をひっぱたかれた気持ちだった。何が理由でこんな風に過激な結論に至ってしまうのだろうということが知りたかった。特に、暴力的な特性を全く持つことのないメキシコ人の女性がね。

こうして私たちは彼女と共に旅を始めたの。彼女は自分の身に起きた事を詳しく教えてくれて、捜索中そして戦闘中の彼女を撮影し始めることにした。当初はドキュメンタリーを想定していた。
私は、このストーリーをできるだけリアルに伝えて、それをできるだけ多くの世界中の観客にシェアしたいと思った。そして彼女も私にはそれができると信じてくれて、良い方向に変わっていくためには世界中の人にこのストーリーを知ってもらうことが必要だとも思ってくれた。これが、『母の聖戦』とその強力な主人公シエロに生命を与えたクリエイティブな火花だった。

彼女に密着し始めてその生活を記録していると、観察する形式のドキュメンタリーを撮るには険しい道のりだということがわかった。その地域はとても危険だったし、映画を撮ることや、多くのセンシティブな情報を扱っていることで厳しく検閲を受けていると感じた。だから、それまでの2年半で集めた価値のあるリサーチ資料を使ってフィクションのストーリーを書くという決断を下したの。この母親は、地元の麻薬カルテルのせいで被害者から加害者へと立場が変わってしまった。彼女はいかにして娘を失ったのか、また絶望の末いかにして自力で解決しようと決意したのか。そして、最初に彼女を被害者にした悪意に満ちた暴力の渦の中に、いつのまにか自分がいることに気が付いたことを話してくれた。

この皮肉は私の胸に突き刺さって、そこに私が世界と共有したい重要なメッセージが存在しているとわかった。2017年5月10日、私が密着していた母親ミリアム・ロドリゲスが自宅の前で残酷に殺されたと聞いたとき、私がどれだけショックを受けたのかは理解してもらえると思う。あれはメキシコの母の日だった。彼女とその他多くの犠牲になった方々へのリスペクトから、この映画がポジティブな変化をもたらすことを願っている。




全般的にドキュメンタリータッチ、グロ描写少なめ。今回裏方に回ったミシェル・フランコ監督のようなストーリー要素がもう少しあれば作品としての深みは増したかも。原作モデルのその後を聞くにつけ事実は小説よりも残酷。

満足度(5点満点)
☆☆☆

お蔵入りと称される原作モデルドキュメンタリーフィルムを我々が目にする機会は引き続きないのでしょうか?
非業の死を遂げる本作主人公=ミリアム・ロドリゲスさん記事は下記参照。映画化されたエピソードはリアルの極々一部だったんだ。
娘を殺された母親は、犯人を一人ずつ追いつめた─彼女の「壮絶な最期」と「終わらない闘い」 | 自力で10人を逮捕に追いやった“母の執念” | クーリエ・ジャポン




Posted by kingcurtis 固定リンクComments(0)映画 
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