2022年07月19日

【映画評】神は見返りを求める

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公開から一ヶ月近くが経過した本作。評判がいいので気になっていましたが福岡市内で上映していた2館のうち1館がまだ上映中である事を知り、これ幸いと三連休中に観に行きました。

映画『神は見返りを求める』オフィシャルサイト-2022年6-24公開

イントロダクション&ストーリー
主人公・イベント会社に勤める田母神(ムロツヨシ)は、合コンでYouTuber・ゆりちゃん(岸井ゆきの)に出会う。田母神は、再生回数に悩む彼女を不憫に思い、まるで「神」の様に見返りを求めず、ゆりちゃんのYouTubeチャンネルを手伝うようになる。登録者数がなかなか上がらないながらも、前向きに頑張り、お互い良きパートナーになっていく。そんなある日、ゆりちゃんは、田母神の同僚・梅川(若葉竜也)の紹介で、人気YouTuberチョレイ・カビゴン(吉村界人・淡梨)と知り合い、彼らとの“体当たり系”コラボ動画により、突然バズってしまう。イケメンデザイナ一・村上アレン(暴啾析此砲箸眞里蟾腓ぁ⊇屬間に人気YouTuberの仲間入りをしたゆりちゃん。一方、田母神は一生懸命手伝ってくれるが、動画の作りがダサい。良い人だけど、センスがない…。
恋が始まる予感が一転、物語は“豹変”する――!

プロダクション・ノート
見返りを求める男と恩を仇で返す女
 2018年、これまで『さんかく』『ヒメアノ〜ル』でタッグを組んだ吉田監督と石田プロデューサーとの新たなオリジナル企画として始まった、本作『神は見返りを求める』。「見返りを求める男と恩を仇で返す女」による愛憎劇を描くという吉田監督のアイデアから始まり、女優と映画監督、ミュージシャンと音楽プロデューサーといった、さまざまな世界で起こり得る関係性が候補に挙るなか、ヒロインとして底辺YouTuberが決まる。対する男性の設定は、監督が頭に思い描いたキモカワなぬいぐるみ・ジェイコブの存在ありきということで、それを所有していそうなうえ、動画制作もできるスキルも持っているということで、イベント会社勤務になった。

大喜利大会のような感覚も加わった脚本づくり
『BLUE/ブルー』のクランクインを目前に控えた2019年夏から秋にかけ、イベント会社などの取材を経た吉田監督は脚本に着手。自身が主宰するワークショップで思いついた、“自撮り棒をフェンシングのように相手に向ける”という、これまで見たことのない光景が核となり、“いい感じになった2人の関係性が崩れていく”おなじみの吉田節が展開。両者がYouTube撮影を通じて、ディスり合うことで、地獄のようなバトルが繰り広げられることになった。これまで手掛けてきた脚本では「登場人物の感情を追いかけながら書いていた」と語る吉田監督だが、今回はそれに「イラッとする動画は?」といった、まるで大喜利大会のような新鮮な感覚もプラス。そんななか、いちばん吉田監督の頭を痛めたのは、対立する2人の物語の終着点だった。それは同時に監督が望む展開でもあり、最終的には決して綺麗にまとめたくない思いを優先することになった。

吉田組経験者がぶつかり合うキャスティング
 吉田監督の当初のイメージは、意外にも『Shall we ダンス?』の役所広司ばりにジェントルマンだった田母神役は、「できるだけ、とんちんかんな映画にしたい!」という監督の思いを体現してくれるムロツヨシに決定。遊び心ある芝居ができる役者ということもあり、『ヒメアノ〜ル』に続き、2度目となる吉田組参加となった。一方、実際に底辺YouTuberが演じる案もあったゆりちゃん役は生徒役の一人として、『銀の匙 Silver Spoon』に出演していた、岸井ゆきのに決定。当時から、一見動物的に見えつつ、じつは緻密な芝居でリアリティを生む芝居を高く評価していた吉田監督にとって、“また撮りたい女優”の一人だった。そんな彼女がさまざまな経験を経て、ふたたび吉田組に参加することになった。また、田母神の同僚であり、ゆりちゃんのあいだを行き来する梅川役には、「いい意味で映画らしさを感じさせるうえ、どんな役柄でもハマる巧い俳優」ということから、若葉竜也が吉田組初参加となった。

監督曰く「これまでにないほど、緊張しない現場(笑)」
 クランクインは2020年11月10日。東京近郊を中心に、和気藹々と撮影が行われ、吉田監督曰く「これまでにないほど、緊張しない現場(笑)」だった。スケジュールの都合から順撮りができないこともあり、ゆりちゃんの変貌を垣間見ることができるファミレスでの田母神とのシーンも、わずか1日で撮影されている。そんななか、吉田監督がいちばんこだわったのは、劇中に数回登場する田母神のセリフ「クソ天気いいな」に象徴される、天候の日取りと太陽の角度だった。それにより、本作の核となる“自撮り棒でのフェンシング対決”では、バカバカしいはずなのに、逆光の効果もあって、画が妙に美しいあまりに泣けてくるというギャップを生み出している。また、YouTubeの描写に関しては、BANされる規制の問題など、劇場公開までに、どのように変わるか分からないことを見据えた。そのため、あえて今っぽいことをやりすぎず、テクニック的には三段階のパターンで表現することに。また、ゆりちゃんのボディペインティングに関しては、「気になる女性が自分の知らないところで、あんなことをしていたら……?」という吉田監督が持つ男の嫉妬心を具現化することになった。そして、11月30日に無事クランクアップを迎えた。

遊び心たっぷりのオープニングに、キュンとする青春ソング
 観客に「ナニコレ?」と思わせるための演出もあり、本編のファーストカットは覆面YouTuber・マリオによる配信から始まるが、その前には配給会社であるPARCOのクレジット・ロゴが“YouTube広告”として表示されるなど、『犬猿』の予告編にも通じる、遊び心たっぷりのサプライズ・オープニングを用意。また、編集段階でカットするシーンが、ほとんどない吉田作品だが、本作に限ってはゆりちゃんのボディペインティング後、カラオケボックスでYouTuberキムニーにドッキリを仕掛けるシーンが全カット。田母神の微妙な心情を優先した理由からだが、現場でも大爆笑だったシーンだけに、ソフト化での映像特典収録も期待されるところだ。その後、編集された本編を、3人組音楽プロジェクト空白ごっこに観てもらい、主題歌を依頼。吉田監督が「キュンとする青春ソング」を要望したところ、メンバーは「サンクチュアリ」と「かみさま」という対照的な2曲を制作した。どちらも気に入った吉田監督は、田母神とゆりちゃんの距離が縮まっていく点描で流れる挿入歌で「かみさま」を、さまざまな余韻が残るエンドロールの主題歌として「サンクチュアリ」を使用することになった。

YouTuberに対するリスペクト
「自分が愛せるほど、可愛らしい作品になった。誰が喜んでくれるか分からないけれど……(笑)」と語る吉田監督。「以前はYouTubeに対して、多少なりとも偏見があったが、それは映画が世に出てきたときの舞台人の反応にも似ているかもしれない。自分も時代の移り変わりとともに、どこか取り残された感覚を持っているから」とも語る吉田監督は、YouTuberに対するリスペクトを込めて、ゆりちゃんのファンがサイン会で発する「残るものって、そんなに偉いんですか?」というセリフを書いたという。 「残すのではなく、あくまでも人を楽しませるのがエンタテイメントの真意。『神は見返りを求める』を通じて、そういった新しい感性を共有しなきゃいけないし、自分も映像作家として、歴史に名を残す映画にしがみつくのではなく、もうちょっと考えを柔軟にしなきゃいけないことに気づかされました」

(文・構成/くれい響)




𠮷田恵輔監督作は「純喫茶磯辺」「ヒメアノ〜ル」「愛しのアイリーン」「空白」しか観ていませんが、その辺のクセが存分に活かされたラジカル作品でした。邦画にありがちな実在のIT企業名を架空名へ置き換える三流稚拙な演出はなく、You Tubeそのまま画面に表示される事に好感。起承転結の「結」の部分も作品の疾走感を損なわない印象的な落とし方で非常によかった。前作「空白」のエンディングがリベラル臭く眠たい出来だったけど杞憂でした。「ヒメアノ〜ル」や「愛しのアイリーン」のキレキレさが戻り大満足。ブサカワヒロインもよかったよ。

満足度(5点満点)
☆☆☆☆




Posted by kingcurtis 固定リンクComments(0)映画 
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