2021年11月09日
【映画評】ミッドナイト・トラベラー
mixiチェックイントロダクション
2015年、映像作家のハッサン・ファジリはタリバンから死刑宣告を受ける。制作したドキュメンタリーが放送されると、タリバンはその内容に憤慨し、出演した男性を殺害。監督したハッサンにも危険が迫っていた。彼は、家族を守るため、アフガニスタンからヨーロッパまで5600kmの旅に、妻と2人の娘たちと出発することを決意する。そしてその旅を夫婦と娘の3台のスマートフォンで記録した。砂漠や平野、山を越え、荒野をさまよい辿りついた先で、難民保護を受けられずに苦労することも。ヨーロッパへの脱出は、想像以上に困難を極めていた。人としての尊厳を傷つけられるような境遇を経験しながらも、一家は旅の記録を続けていく。撮影することが、まだ生きているということを確認することであるかのように…。本作は、故郷を追われて難民となるとはどういうことか、その現実が観る者に容赦なく迫ってくるドキュメンタリーだ。
映画として企図して制作されたモノではなく断片的なiPhone動画を繋いだ様な作風。卑怯な手かもしれないけど再現ドラマの方が腑に落ちるのが痛し痒し。成因上当該家族目線でのフィルムに終始するので立体的なプレゼンスが可視化されないのが残念。いい言い方をするならリアルなロードムービーでした。筆舌に尽くしがたくとっても悲惨だけどね。不謹慎だけど島国で生活している我々は被害者(難民)/加害者(異民族排他主義者)どちらの立場にも無縁で幸せなんだなだと。傍観者的にはヘイト集団の気持ちも分かるんだよなぁ。非常に難しい。
参考:「イスラム難民がヨーロッパ女性を強姦」ポーランド雑誌表紙が話題
上映後のユナイテッドピープル社長談によるとご家族は全員ご無事にドイツで生活されているそうです。お幸せに。
満足度(5点満点)
☆☆☆
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