2021年03月19日
【映画評】わたしの叔父さん

イントロダクション&ストーリー
父娘のように暮らしてきた叔父と姪。穏やかな日常に訪れた、小さな波紋。夢を追い求めるか、今までと同じ世界にとどまるか。転機のときを迎えた彼女の選択は──。
のどかで美しいデンマークの農村。27歳のクリスは、叔父さんとともに伝統的なスタイルの酪農農家を営んでいる。朝早くに起きて、足の不自由な叔父さんの着替えを手伝い、朝ごはんを食べ、牛の世話をして、作物を刈り取る。晩ごはんの後はコーヒーを淹れてくつろぎ、週に一度スーパーマーケットに出かける。ふたりの穏やかな日常は、ある夏の日を境に、少しずつ変化する。クリスはかつて抱いていた獣医になる夢を思い出し、教会で知り合った青年からのデートの誘いに胸を躍らせる。戸惑いながらも広い世界に目を向け始めたクリスを、叔父さんは静かに後押しするのだが……。
北欧の新鋭フラレ・ピーダセンが描くささやかで、かぎりなく愛おしい人生の物語
監督・脚本は、小津安二郎を映画の師と仰ぐ1980年生まれのフラレ・ピーダセン。ミニマルだが奥深い構成、何気ない日常の一瞬のきらめきを掬い取る手腕、観客を不意打ちする絶妙な間合いと思わず笑みがこぼれるユーモアのセンスは、同じく小津作品をこよなく愛するジム・ジャームッシュやアキ・カウリスマキを彷彿とさせる。一方で、人生の転機を迎えた若い女性の期待と葛藤を現代的な視点で描いている点も要注目だ。さらに撮影も自身で手掛け、生まれ育った南部ユトランドの農村地域を舞台に、農業先進国デンマークで消えつつある伝統的な酪農家の営みを静謐な絵画のような美しい映像に収めた。
主演のふたりは実の姪っ子と叔父さん!田舎で撮られたちいさな映画が、デンマークの代表に
主人公二人を演じるのは、実の姪と叔父であるイェデ・スナゴーとペーダ・ハンセン・テューセン。これからが期待される若手女優スナゴーは、きめ細やかな演技で自由への怖れと憧れを体現し、実際に劇中の農場を所有する酪農家であり演技未経験のテューセンは、佇まいだけで叔父の人となりを魅せる。本作は東京国際映画祭のグランプリ受賞を皮切りに、世界各国で数多くの国際映画賞を受賞し続け、本年度の北欧映画No.1を決定するノルディック映画賞のデンマーク代表に選出されている。
獣医を目指すも夢絶たれた主人公演じる女優さんが元獣医、身寄りがない姪を引き取った叔父がプライベートでも本物の叔父で舞台の農家がリアルで自分の農園というメタフィクションさ。
劇場で予告編見ただけの予備知識だったのでなんか「トムさんアットザファーム」みたいなアンモラルやサスペンスみたいな展開なのかな?と思って観ていましたが、畜産農家の臭い立つ生活を淡々と描写する作品でした。解説文のジム・ジャームッシュと言われれば確かにそんな感じもするし、小津安二郎と言われればそんな感じもします。後からジワジワ来る系。
大都会コペンハーゲンで回転寿司を食べ「生まれて初めて生の魚を食べた」と感動するシーンが、回転寿司屋の店内設備を含め色々興味深かったです。食卓のテレビで流れるは金正恩報道、車はトヨタアクア、スマホはファーウェイ、憧れの外食は回転寿司という構図なんだね。アジア人から観たデンマークの田舎は。しかし実質的にひとり親の父から捨てられる娘というのもしんどい世界だなぁ。
満足度(5点満点)
☆☆☆