2018年09月10日
【映画評】判決、ふたつの希望

憎悪の歴史を乗り越える 内戦終結20周年のレバノンを歩く (朝日新聞デジタルSELECT)

パレスチナ難民に水を浴びせた国粋ベイルート市民との諍いが国を挙げたヘイトクライム問題に昇華する、なんだ、中東にも有田芳生やしばき隊がいたのか。という趣の映画。
イントロダクション
ふたりの男のささいな口論が国を揺るがす法廷争いに――
人間の尊厳をかけ、彼らが見つけた新たな一歩に世界が震えた感動作
クエンティン・タランティーノ監督のアシスタント・カメラマンという経歴を持つレバノン出身ジアド・ドゥエイリ監督最新作。監督の実体験をもとにした、どこの国でも起こりうる“ささいな口論”が国家を揺るがす法廷劇にまで発展していく物語は、本国で爆発的な大ヒットを記録。さらに世界中を感動の渦に巻き込み第74回ベネチア国際映画祭では主演のひとりカメル・エル=バシャがパレスチナ人初の男優賞を受賞。第90回アカデミー賞Rではレバノン史上初となる外国語映画賞ノミネートの快挙を成し遂げた。
法廷で次々と明かされていく衝撃の真実と主人公たちが背負った紛争や民族、政治、宗教といった複雑で繊細な問題。忌まわしい過去ゆえに対立する者同士は決してわかり合えないのか。歴史の悲劇を教訓として、新たな一歩を踏み出すことはできないのか。万国共通の“今そこにある問題”を提起しながらも、個人それぞれの尊厳や赦しといった普遍的なテーマを追求したドラマは、観る者の心を深く揺さぶってやまない。
ストーリー
人間の尊厳をかけ二転三転する裁判の行方は―― 圧倒的な驚きと感動に満ちた前代未聞の法廷劇
レバノンの首都ベイルート。その一角で住宅の補修作業を行っていたパレスチナ人の現場監督ヤーセルと、キリスト教徒のレバノン人男性トニーが、アパートのバルコニーからの水漏れをめぐって諍いを起こす。このときヤーセルがふと漏らした悪態はトニーの猛烈な怒りを買い、ヤーセルもまたトニーのタブーに触れる “ある一言”に尊厳を深く傷つけられ、ふたりの対立は法廷へ持ち込まれる。
やがて両者の弁護士が激烈な論戦を繰り広げるなか、この裁判に飛びついたメディアが両陣営の衝突を大々的に報じたことから裁判は巨大な政治問題を引き起こす。かくして、水漏れをめぐる“ささいな口論”から始まった小さな事件は、レバノン全土を震撼させる騒乱へと発展していくのだった……。
最後の「村」は蛇足感を否めませんでしたが、法廷劇にありがちなダルさもなく、総じてスピーディーな展開で飽きません。「シャロン」云々のところは理解できましたが、レバノン内戦については当方も知識乏しく、こういう鑑賞体験を起点に色々調べて学んで知見を増やすというのが映画の醍醐味でもあります。レバノン人=レバニーズとか生まれて初めて知った。(要はパレスチナ難民+イスラム教徒とレバノンキリスト教徒+イスラエルの三竦み状態=イスラエル・レバノン・パレスチナ難民)
レバノン内戦(レバノンないせん)とは - コトバンク
レバノン国内のキリスト教徒と,イスラム教徒・パレスチナ人の連合勢力との間で長期間続いてきた内戦。キリスト教,イスラム教のさまざまな宗派グループが複雑な社会を形成してきたレバノンでは,1943年のレバノン国民協約により,32年の人口調査に基づいて,大統領はマロン派キリスト教徒,首相はスンニー派イスラム教徒,国会議長はシーア派イスラム教徒というキリスト教徒優位の制度が定められた。その後イスラム教徒が国民の過半数をこえるにつれてこの制度への不満が高まり,58年に内戦状態に陥るなど,政治的に不安定であった。さらに 70年9月のヨルダン政府軍によるパレスチナ・ゲリラの弾圧後,大量のパレスチナ人とパレスチナ・ゲリラ組織がヨルダンからレバノンに移ってきたことが事態を一層複雑にした。
ネトウヨ=悪、リベラル=善ではないという演出意図がやや粘着というかそこまで捻らなくてもいいと思うのですが、監督さんご自身の体験を映像化したい趣旨なんでしょうね。民族紛争を横に置き平時の相隣関係に置き換えても充分面白そう。
満足度(5点満点)
☆☆☆
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コメント
>“ささいな口論”から始まった小さな事件
積水ネズミ裁判は映画化されなかったな
積水ネズミ裁判は映画化されなかったな
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2018年09月10日 14:18