2017年12月18日

【映画評】彼女が目覚めるその日まで

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脳に棲む魔物
脳に棲む魔物

難病(抗NMDA受容体脳炎)に罹患したニューヨーク・ポスト紙女性記者の体験手記をシャーリーズ・セロンがプロデュースしたアメリカ映画。

邦題は原作本邦題通り「脳に棲む魔物」または、オリジナルタイトル「ブレイン・オン・ファイヤー」でいいんでないの?

映画「彼女が目覚めるその日まで」公式サイト 2017年12 16公開

イントロダクション
 最愛の両親や大切な恋人、あるいは自分自身が、ある日突然、人格を奪われ正気と狂気の間をさまよう病にかかったとしたら──あり得ないと思うかもしれないが、その病は日本でも年間1000人ほどが発症していると推定されている。決して、遠い国の縁のない話ではないのだ。
 
 主な症状は、感情がコントロールできなくなり、幸福と絶望を行き来し、周りの人々に人間性が崩壊したかのような毒舌を吐く。やがて昏睡に陥りそのまま死に至ることもあるという。大ヒット映画『エクソシスト』の悪魔にとりつかれた少女リーガンを思い出してほしい。彼女のモデルになった実在の少年は、実はこの病の典型的な症例だったと指摘されている。

 2007年、つまりは21世紀になってようやく急性脳炎の一つと位置付けられ、正式に「抗NMDA受容体脳炎」という名前が与えられるまで、精神の病や悪魔憑きと判定され、正しい治療を受けることすら難しかったのだ。

 2009年にこの病にかかった、ニューヨーク・ポスト紙の記者であるスザンナ・キャハランが、壮絶な闘病の日々を、医療記録や家族の日誌などから再現したノンフィクションを発表。彼女も医師から原因不明と見放されたが、決して諦めなかった両親と恋人の尽力で、遂には人生を取り戻す。スザンナと家族の闘いに感銘を受けたオスカー女優のシャーリーズ・セロンがプロデュースに乗り出し、『キック・アス』で大ブレイクを果たしたクロエ・グレース・モレッツを主演に迎え、全米で大ベストセラーを記録した衝撃の実話の映画化を実現させた。

 憧れのニューヨーク・ポスト紙で働く21歳のスザンナ・キャハランは、1面を飾る記者になる夢へと突き進んでいた。付き合い始めたばかりのミュージシャンの恋人スティーヴンを両親に紹介し、仕事も恋も順調だ。ところが、“それ”は足音もなく突然やって来た。物忘れがひどくなり、トップ記事になるはずの大切な取材で、とんでもない失態を犯してしまう。幻覚や幻聴に悩まされて眠れず、全身が痙攣する激しい発作を起こして入院するが、検査の結果は「異常なし」。日に日に混乱し、全身が硬直して会話もできなくなってしまったスザンナを見て、精神科への転院をすすめる医師たち。だが、両親とスティーヴンは、スザンナの瞳の奥の叫びを受け止めていた──。

 スザンナを演じるのは、ファッションやライフスタイルでも、全世界の女性たちから熱い注目を浴びるクロエ・グレース・モレッツ。かつてない迫真の演技で、女優としての劇的なステップアップを成し遂げた。娘への盲目的な愛情が観る者の心を揺さぶる父親には、『ホビット』シリーズのリチャード・アーミティッジ。

知的でクールだが娘のためなら何者にも屈しない信念を秘めた強い母親に、『マトリックス』シリーズのキャリー=アン・モス。一見頼りなく見えるが、深く優しい愛でひたすらスザンナに寄り添い、実際にスザンナが回復してから結婚した恋人スティーヴンには、『キングコング:髑髏島の巨神』のトーマス・マン。

 監督は、シャーリーズ・セロンが過去作からその才能を見抜き、自ら原作を送った新鋭ジェラルド・バレット。「この映画が誰かの命を救いますように」と願い、事実に忠実であることを何より大切にしたと語る監督の意志をリアルな映像で支えた撮影は、『はじまりのうた』『シング・ストリート 未来へのうた』のヤーロン・オーバック。

 目覚めぬ娘を信じ続けた両親、絶対にあきらめないと誓った恋人、彼らに突き動かされた医師たち──愛から生まれた希望と勇気の強さと美しさを描く感動の実話。

ストーリー
 21歳のスザンナ・キャハラン(クロエ・グレース・モレッツ)の毎日は、希望と喜びに満ちていた。憧れのニューヨーク・ポスト紙で、まだ駆け出しだが記者として働き、いつか第1面を飾る記事を書くと燃えている。プライベートでも、プロのミュージシャンを目指すスティーヴン(トーマス・マン)と付き合い始め、会うたびに互いの想いが深まっていた。

 そんな中、父(リチャード・アーミティッジ)と母(キャリー=アン・モス)が、バースデイ・パーティを開いてくれる。二人は離婚していたが、娘のスザンナを通して良好な関係を築いていた。それぞれのパートナーとスティーヴンに囲まれて、ケーキのキャンドルを吹き消そうとした時、スザンナは初めて体調の異変を感じる。皆の声が遠のき、めまいを覚えたのだ。

 デスクのリチャード(タイラー・ペリー)から、スキャンダルを抱えた上院議員のインタビューという大きな記事を任されるスザンナ。彼女の才能を認める先輩記者のマーゴ(ジェニー・スレイト)からの後押しもあっての大抜擢だ。

 ところが、スザンナの体調は、日に日に悪化していく。視界が揺れ、会話も聞き取れず、夜も眠れなくなり、締め切りを破るだけでなく綴りや文法までミスしてしまう。やがて手足が麻痺するようになり、病院で診察を受けるが、検査結果はすべて異常なしだった。

遂にスザンナは、取り返しのつかない失敗を犯す。上院議員のインタビューの席で、スキャンダルに引っ掛けた下品なジョークで彼を侮辱したのだ。リチャードから激しく叱責されるが、なぜそんな言葉が口から出たのか、スザンナ自身にも分からなかった。

 今度は突然、激しい痙攣の発作を起こすようになるスザンナ。両親に付き添われて精密検査を受けるが、やはり異常はない。そうこうするうちに、劇的な幸福感に包まれてはしゃいだかと思うと、その直後には深い絶望感と被害妄想が沸き起こって周囲の人々を罵倒するようになり、会社の上司はもちろん、両親さえも手に負えなくなってしまう。

 何度検査を受けても、医師たちは「異常なし」と繰り返し、精神の病だと決めつける。必ず原因を究明すると決意した両親と、「絶対に治るから、一緒に頑張ろう」と誓ったスティーヴンが支え続けるが、次第にスザンナは手足が動かなくなり、全身が硬直し、口さえきけなくなってしまう。

 あと3日間の観察で変化がなければ、精神科へ転院させると宣告する医師たち。期限が迫るなか、一人の医師がスティーヴンの“ある言葉”に突き動かされるのだが──。




シャーリーズ・セロンはなんで出演しなかったんだろう?
皆さんと同じく子役の頃から知っているクロエちゃんはまるで我が愛娘のようでして、演技的にはこの辺が彼女の限界なのかなぁと思いつつ温かい目で見ております。最近なんか「石原さとみ」入っているよね?くちびるとか。

という感じで、実話ベースであるが故に商業作品要素乏しく、明快な起承転結やカタルシス効果もなく、ある意味淡々としているので作品評価は非常に微妙ではありますが、セミドキュメンタリーとして捉えたら腑に落ちます。シャーリーズ・セロンがわざわざ骨を折るのもそういう意味なのでしょう。

例によって事前に作品情報殆ど仕入れず鑑賞しまして、中盤これは「悪魔憑きでは?」と思いましたが、鑑賞後に公式サイトのイントロダクション拝見しましたがやっぱりそうか。終演時にテロップで「※※※人目の患者」とありましたが、見落としている患者がその数万倍であろうことは容易に想像できますし、そもそも疾患概念が成立したのが2007年だって。1000年以上の罹患史がある筈なのに、医療としては僅か10年しか経っていない。2006年以前の治療は祈祷師頼みだったのか。

作品の流れ的に原因は「トコジラミ」なのかな?と思いましたが未だ原因不明だそうで、「卵巣腫瘍」などを抱えている患者が多いそうです。
奇しくも本作と同日公開となった瀬々監督の土屋太鳳主演「8年越しの花嫁」も丸被りの「抗NMDA受容体脳炎」だそうでして、日本では年間1,000人近く若い女性中心に発症するそうです。



それらとは別の罹患した日本人女性の家族が病啓蒙のため公開した動画はこちら。かなり衝撃的なので閲覧注意。お狐様とか悪魔とか言われたらそんな感じ。
抗NMDA受容体脳炎:悪魔払いされていた病 - 毎日新聞

映画のモデルとなった実在の女性新聞記者動画はこちら。
ひと:スザンナ・キャハランさん=「悪魔払い」されてきた難病の映画の原作者 - 毎日新聞

満足度(5点満点)
☆☆☆

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Posted by kingcurtis 固定リンクComments(6)映画 | ヘルス
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コメント
毎日新聞の動画で女性記者ご本人のインタビューも見ました。
聡明で美人でビックリ。貴重なお仕事をされましたね〜。
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2017年12月18日 14:55
リンク追加しときます
Posted by bob at 2017年12月18日 15:09
母の従弟(男)ですがなりましたよ・・・「狐憑き」て、やっぱり祈祷で直した。比較的早く回復したから、男と女では違うのかも?「迷信だ」とバカにする人も居るけれど、現物見ると「あるんだ」としか思えない。今まで「ヒステリー」や「ノイローゼ」の一種だと思ってた
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2017年12月18日 17:33
実物、どえらい美人じゃないの。映画の役者と乖離してないのは珍しいねw

リチャード・アーミテッジが父親役って、なんか変な感じ。Berlin Stationで
若々しいCIAのスパイ役を演じてるので。
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2017年12月18日 23:22
精神病というと「狐憑き」とか「悪魔祓い」とかじゃなくても、電気ショック療法とかロボトミー手術とか、実に恐ろしい治療法が実践されてきたという印象がある。
「抗NMDA受容体脳炎」というやつばかりじゃない、他の原因による脳炎のせいで精神病と診断されているケースがあるという可能性は無いのだろうか?
医学の進歩は素晴らしい福音をもたらすものだなあ、と思うとともにもっと進歩してもっと多くの人が救われるように願わずにはいられないですね。
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2017年12月19日 00:56
> 医学の進歩は素晴らしい福音をもたらすものだなあ、と思うとともにもっと進歩してもっと多くの人が救われるように願わずにはいられないですね。

 その医療の「外科」に関しては、「直す」と言うより、「悪い所を切って捨てる」から一部のエセ科学信奉者には「切り裂きジャック」とかヒス起こされるんだけれど・・・
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2017年12月19日 10:08
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