2017年09月05日

【映画評】ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦

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ヒトラーの絞首人ハイドリヒ
ヒトラーの絞首人ハイドリヒ

ナチス占領下のチェコスロバキアで発動された「エンスラポイド作戦」実行並びに、その後のナチ側報復=容赦ないプラハ市民虐殺に苦悩するチェコ亡命政府兵士の苦悩を描いたヒューマンドラマ。

とはいえ「ナチ女収容所 悪魔の生体実験」と見紛うここ数年来最悪の邦題。タイトルから漂うB級臭に完全スルーしていましたが、そうではなく「これは非常にまともな作品」という話を聞き及び、騙されたと思って鑑賞したら本当にメチャメチャ面白かった。キービジュアルもインターナショナル版と全然違う。どういうこと?バカなの?

映画『ハイドリヒを撃て!

イントロダクション
ヒトラー、ヒムラーに次ぐ、ナチス第三の男ラインハルト・ハイドリヒ。「ユダヤ人絶滅政策」を推進し、その残虐性から「金髪の野獣」と呼ばれた男を討つべく、憂国の志士たちが立ち上がった──。

第二次世界大戦中、最も凄惨な史実の一つと言われるハイドリヒ暗殺事件。自らの命を犠牲にして、ナチスに立ち向かった若き男たちの戦いを描く極上の戦争サスペンス。

1941年冬、ナチス統治下のチェコ。イギリス政府とチェコ亡命政府の指令を受け、二人の軍人、ヨゼフ・ガブチークとヤン・クビシュがパラシュートでプラハに潜入した。彼らの目的は、ナチス親衛隊大将ラインハルト・ハイドリヒの暗殺、コードネーム「エンスラポイド(類人猿)作戦」だった。国内に潜むレジスタンスの協力を得て、愛する祖国の未来と平和のために、無謀ともとれる作戦に臨むヤンとヨゼフ。1942年5月27日、ついにハイドリヒを狙撃するが、彼らを待ち受けていたのは、想像を遥かに凌駕する壮絶なナチスの報復だった——。

『死刑執行人もまた死す』(43)、『暁の7人』(75)でも描かれた、“金髪の野獣”ことラインハルト・ハイドリヒ暗殺事件、通称「エンスラポイド作戦」が21世紀初の映画化!2017年チェコ・アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞など14部門にノミネートされた話題作。
キリアン・マーフィ&ジェイミー・ドーナン、旬の2人が初共演!

構想15年!綿密なリサーチと、オールプラハロケ。監督の情熱によって生まれた、圧倒的な真実性

暗殺計画の中心的存在であるヨゼフ・ガブチークを、クリストファー・ノーラン監督『インセプション』(10)『ダンケルク』(17)のキリアン・マーフィが演じ、若き軍人の静かな情熱を見事に表現しているほか、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(15)のグレイ役で世界中の女性の心を掴んだジェイミー・ドーナンが同志ヤン・クビシュに扮し、緊迫した戦時下で出会った女性との愛に揺れ動く心を繊細に演じた。

監督・脚本は、『フローズン・タイム』(06)のショーン・エリス。2001年にエンスラポイド作戦のドキュメンタリーを見たのがきっかけでこの事件を知り、以後、膨大な歴史的資料を調べあげ、本作のための準備に15年もの年月を費やし製作した。

ストーリー
第二次大戦中期、ナチスがヨーロッパのほぼ全土を制圧していた頃。イギリス政府とチェコスロバキアの亡命政府とが協力して極秘計画を練る。パラシュートを使ってチェコ領内に送り込んだのは、二人の軍人ヨゼフ・ガブチーク(キリアン・マーフィ)とヤン・クビシュ(ジェイミー・ドーナン)。

当時、チェコの統治者でホロコースト計画を推し進めていたのが、ヒトラー、ヒムラーに次ぐナチスNo3と言われたラインハルト・ハイドリヒ。二人はナチスとハイドリヒの暴走を止めるために送り込まれたスパイだった。ヨゼフとヤンはチェコ国内に潜伏するレジスタンスの協力を得てハイドリヒの行動を徹底的にマークして狙撃する機会をうかがう。任務の過程で芽生えた愛する女性との幸せな生活を夢にみながらも、祖国チェコのために、そして平和な未来のために自らを犠牲にして巨大な敵と戦うことを誓うのだった。




原題は「ANTHROPOID(猿人類)」
史実のハイドリッヒ暗殺計画コードネーム「エンスラポイド作戦(猿人類作戦)」をそのまま作品名に用いているのに、なんで「ナチの野獣暗殺作戦」?しかも劇中でハイドリッヒの人物描写なんかほぼゼロで「ナチの野獣」片鱗すらありません。下記画像がインターナショナル版。日本のキービジュアルから受ける印象と全然違います。

Win-Anthropoid-on-DVD

「統治者ひとりを暗殺したところで戦局に何ら影響ない(しかも暗殺予定日翌日、他国へ転勤)。逆に報復で罪もない市民が大勢殺害される」という在プラハ・レジスタンス側の総意を在英亡命政府が聞き入れず暗殺強行。その先は観客が思い描く通り最悪の事態へ。という展開。細かいディテールは史実ベースとのことで「ナチの野獣」というより、その真面目な作風は「【映画評】ダンケルク」と並列し語るべき作品。主役もダンケルクと被っています。プラハ市民が英語で喋っているのはご愛嬌でしたが。

お涙頂戴プロットとはいえ、匿ってくれた奥さんの最期はなんとも悲しい。あと口紅彼女さんも。

ということで真面目な話、金正恩を暗殺すれば禍はすべて霧消しますが、朝鮮労働党のナンバー3とかナンバー2のみ暗殺したところで火に油を注ぐのは当然。作中でも言及されていましたが複数の村が見せしめで「全滅」させられたそうで、いつの時代も安全な後方よりご下知賜る阿呆なトップは百害あって一利なし。手段と目的をよく考えよう。

満足度(5点満点)
☆☆☆

ついでなので今年鑑賞したナチス系作品を棚卸。お勧めは「夜明けの祈り」「ダンケルク」「こころに剣士を」「ヒトラーの忘れもの」です。以下順不同。

【映画評】少女ファニーと運命の旅 ユダヤの子供たちがフランスよりスイスに逃亡 ☆☆☆
【映画評】夜明けの祈り ドイツ撤退後に現れた赤軍に集団強姦されるポーランド修道女 ☆☆☆
【映画評】ダンケルク フランスよりイギリスに撤退する連合軍兵士40万人 ☆☆☆
【映画評】ヒトラーへの285枚の葉書 徴兵されたひとり息子の戦死に憤慨する両親の抗議活動 ☆
【映画評】アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男 戦後のナチス残党に翻弄される西ドイツ検察官 ☆☆
【映画評】こころに剣士を エストニアのフェンシング部活 ☆☆☆
【映画評】ヒトラーの忘れもの 戦後のデンマークで虐待されるナチス少年兵捕虜 ☆☆☆
【映画評】マリアンヌ ナチスパイ悲恋 ☆☆☆

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Posted by kingcurtis 固定リンクComments(3)戦争 | 映画
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コメント
かなり昔武蔵野興行系列とこでバイトしてて新年会とかでお偉いさん相手にホール業務してましたけど、あそこベンチャー系投資会社と提携してからか(もともとオーナー企業だったはず?)、上映する映画の指向変わったっぽいですね
Posted by 名無しさんはデマに苦しんでいます at 2017年09月05日 14:56
「暁の7人」は見たよ。ティモシー・ボトムズ主演。いい映画だったと思う。ハイドリヒ役のアントン・デュフリンクに惚れた。実家に原作のノンフィクション本がまだあるかな?
新しい映画も観たいね。あと興味あるのは「夜明けの祈り」かな。
Posted by hanachan at 2017年09月06日 01:32
アメリカが、強力なドイツや、大日本帝国と対峙するために、共産主義と手を組んだ・・・て事だよ。ナチス(ドイツ社会主義)、大日本帝国(日本式社会主義) VS アメリカ、共産主義の戦争。暗殺されたハイドリヒは、ドイツ社会主義で、共産主義者(ユダヤ人共産テロリスト)を排除して、労働者の福利厚生を図った人・・・と言う側面もある。
Posted by 名無しさんはデマに苦しんでいます at 2017年09月07日 04:16
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