2007年03月31日

高校教科書検定 「沖縄集団自決」記述変更問題に関する各紙社説について

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あっしが報道機関に求めたいのは2つ。
事実を淡々と報道する。または曖昧な風評の真実を果敢に探求する姿勢。
つまり、思想家も結構だが、その前に歴史家になれと。

左派系紙に押し並べていえることは、文部省の拠り所が「民事訴訟で当時の指揮官が命令を否定と意見陳述した」との記述。
それはそれで正しいんだが論点の本質ではなく、限られた紙面で背景を的確に伝えるのであれば「遺族年金支給制限枠対策として軍関与なる偽文書を琉球政府が作成したといわれる民事訴訟が進行中」
こう書くと、読み手の印象や認識がずいぶん変わる筈です。
(元将兵一人の意見陳述⇔琉球政府の組織的偽文書関与)

あっしは「慶良間諸島での集団自決」は群集パニックだと捉えていますが、だからといって軍が無謬とか住民が悪いなど、一欠けらも思っていない。
曽野綾子さんにしても故赤松大尉にしても、事の真相解明=軍の正当化や戦争の美化、自決住民への批判などさらさら考えていません。
真実を知れば知るほど、戦争とは如何に悲惨なのか、本来の主権者たる国民の命が如何に軽いのか、土壇場で人間はどのようなパニック状態に陥るのか、今際の際での職業軍人はどういう行動を図るのか、過去の歴史より子孫たる我々が学ぶものは多い訳です。

これ↓など客観的だと思いますよ。
鳥飼行博研究室さんのサイトより一部引用
沖縄戦での住民集団死/集団自決:渡嘉敷島
宮城晴美(2000)『母の遺言』高文研より

1945年3月25日、三日前から続いた空襲に代わって、座間味島は艦砲射撃された。方々で火の手があがり、住民は壕の中に穏れ、おびえていた。夜おそく「住民は忠魂碑の前に集まれ」という伝令の声が届いた。伝令が各壕を回る前に、母はこの伝令を含めた島の有力者四人とともに、梅澤隊長に面会している、有力著の一人から一緒に来るように言われ、四人についていった。

有力者の一人が梅澤隊長に申し入れたことは、「もはや最期のときがきた。若者たちは軍に協力させ、老人と子どもたちは軍の足手まといにならぬよう忠魂碑の前で玉砕させたい」という内容であった。母は息も詰まらんぱかりのショックを受けた。

いつ上陸してくるか知れない米軍を前に、梅澤隊長は住民どころの騒ぎではなかった。隊長に「玉砕」の申し入れを断られた五人は、そのまま壕に引き返したが、女子青年団長であった母は、どうせ助からないのだから、死ぬ前に仲間たちと軍の弾薬は運びの手伝いをしようと、有力者たちとは別行動をとることになった。その直後、一緒に行った伝令が各壕を回って「忠魂碑前に集まるよう」呼びかけたのである。

伝令の声を聞いたほとんどの住民が、具体的に「自決」とか「玉砕」という言葉を聞いていない。 「忠魂碑」の名が出たことが、住民たちを「玉砕思想」へと導いたようだ。海を一面に見下ろせる場所に建てられた忠魂碑は紀元2600年(1940年=神武天皇即位以来2600年にあたる)を記念して、座間味村の在郷軍人会、青年団によって1942年に建立されたものである。

太平洋戦争の開戦日(1941年12月8日)を記念して毎月八日に行れれた「大詔奉戴日(たいしようほうたいび)」の座間味島での儀式の場所であった。これは住民の戦意高揚をはかるのが目的で、儀式の内容は、宮城遥拝「君が代」「海ゆかば」斉唱、村の有力者や在郷軍人会による、戦勝にむけての訓話などであった。

この忠魂碑に集まれというのだから、住民としては「自決」ど結びつけざるをえなかった。結果的には、住民は激しい艦砲射撃のため、忠魂碑に集まることができず、それぞれの壕で一夜を明かしたものの、翌日、上陸した米軍を見て住民がパニックを起こして家族同士の殺し合いが始まったのである。

住民の集団自決は「生きで捕虜になるよりは、死んだほうがいい」という戦陣訓と、「敵につかまると女は強姦され、男は八つ裂きにして殺される」という皇民化教育や在郷軍人会の教えによるものであった。
母の遺したもの―沖縄・座間味島「集団自決」の新しい証言母の遺したもの―沖縄・座間味島「集団自決」の新しい証言
宮城 晴美


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それを単純に「軍の強制。軍が悪い。国民は被害者。終了。」で、何を学ばせるのでしょう?
こういう朝日脳的思考停止状態が続くのであれば、いくらシビリアンコントロール施そうが、逆説的に再び戦争を繰り返してしまうかもしれません。
本当に怖いのは軍ではなく国民(の集団ヒステリーや慢心)だという真実を糊塗して擦り込まれているのですから。

対する左派は、当該民訴での照屋さんらの証言は偽証であり大江健三郎らに対する非礼極まりない誣告だ!という前提で取材を進めては如何でしょう?

もうひとつ。
仮に慶良間諸島の住民へ兵士が手榴弾を渡した(これもお守り代わりに不発弾のみを渡したという論争がありますが)として、即ち「軍の強制」ってのもよく理解出来ない。
例えばイラクで米兵が住民をレイプした場合、即ち「軍の強制」なのか?
朝日新聞の記者が電車内で痴漢行為をやった場合、即ち「朝日新聞の強制」なんですか?
軍による無言の圧力だという意味(=軍による強制)ならば、そういう風に正確に伝えないと。
スマラン事件と同質というか、マスコミや左派作家による変幻自在な情報操作は辟易です。

なんでこの件で揉めているのかご存じない方へ読んで頂きたいエントリー
沖縄戦 渡嘉敷島住民集団自決事件 元琉球政府職員が軍命令は嘘だったと吐露:Birth of Blues

なんかこれだけでエントリーがひとつ終了しましたが、そもそものテーマが各紙の社説でしたので、簡単に紹介します。

政府「軍命」隠滅か 沖縄タイムス
国自身が当事者ではなく、
判決も出ていない訴訟での証言という不確定要素に加え、
原告、被告双方からの意見ではなく、原告だけの主張を取り入れ、
教科書に反映させる姿勢には疑問を抱かざるを得ない。

判決が出れば除外していいという意味ですね。それはそれで違うぞw

社説:教科書検定 沖縄戦悲劇の本質を見誤るな 毎日新聞
概ね同意ですが、
死を選ぶしかないほど人々の心身を追い込んだとみることもでき、
「強制は明らかでない」と言い切れるものだろうか。

そういう雰囲気があった事実は教科書で伝えるべきだと思いますし、軍の自決強制(直接関与)有無は峻別すべきだと思います。

【主張】沖縄戦 新検定方針を評価したい 産経新聞
子供たちが使う教科書に、不確かな記述や数字を載せるのは有害でしかない。
教科書執筆者、出版社には、歴史を楽しく学び、好きになれる教科書づくりはむろんだが、
なによりも実証に基づく正確な記述を求めたい。

3月31日付・読売社説(1)[教科書検定]「歴史上の論争点は公正に記せ」 読売新聞
政治や外交などに翻弄(ほんろう)されることなく、
客観的で公正な記述の教科書を、学校現場に届けたいものだ。

御意。
不確定な事由が確定されたら載せればいいだけのこと。

お待たせしました。胸ときめく朝日の社説です。
別格ですからこの記事だけ全文引用+画面キャプしますね。
集団自決―軍は無関係というのか 朝日新聞
集団自決―軍は無関係というのか
 高校生が使う日本史教科書の検定で、沖縄戦の「集団自決」が軒並み修正を求められた。

 「日本軍に強いられた」という趣旨の記述に対し、文部科学省が「軍が命令したかどうかは、明らかとは言えない」と待ったをかけたのだ。

 教科書の内容は次のように変わった。

 日本軍に「集団自決」を強いられた→追いつめられて「集団自決」した

 日本軍に集団自決を強制された人もいた→集団自決に追い込まれた人々もいた

 肉親が殺し合う集団自決が主に起きたのは、米軍が最初に上陸した慶良間諸島だ。犠牲者は数百人にのぼる。

 軍の関与が削られた結果、住民にも捕虜になることを許さず、自決を強いた軍国主義の異常さが消えてしまう。それは歴史をゆがめることにならないか。

 この検定には大きな疑問がある。

 ひとつは、なぜ、今になって日本軍の関与を削らせたのか、ということだ。前回の05年度検定までは、同じような表現があったのに問題にしてこなかった。

 文科省は検定基準を変えた理由として「状況の変化」を挙げる。だが、具体的な変化で目立つのは、自決を命じたとされてきた元守備隊長らが05年、命令していないとして起こした訴訟ぐらいだ。

 その程度の変化をよりどころに、教科書を書きかえさせたとすれば、あまりにも乱暴ではないか。

 そもそも教科書の執筆者らは「集団自決はすべて軍に強いられた」と言っているわけではない。そうした事例もある、と書いているにすぎない。

 「沖縄県史」や「渡嘉敷村史」をひもとけば、自決用の手投げ弾を渡されるなど、自決を強いられたとしか読めない数々の住民の体験が紹介されている。その生々しい体験を文科省は否定するのか。それが二つ目の疑問だ。

 当時、渡嘉敷村役場で兵事主任を務めていた富山真順さん(故人)は88年、朝日新聞に対し、自決命令の実態を次のように語っている。

 富山さんは軍の命令で、非戦闘員の少年と役場職員の20人余りを集めた。下士官が1人に2個ずつ手投げ弾を配り、「敵に遭遇したら、1個で攻撃せよ。捕虜となる恐れがあるときは、残る1個で自決せよ」と命じた。集団自決が起きたのは、その1週間後だった。

 沖縄キリスト教短大の学長を務めた金城重明さん(78)は生き証人だ。手投げ弾が配られる現場に居合わせた。金城さんまで手投げ弾は回ってこず、母と妹、弟に手をかけて命を奪った。「軍隊が非戦闘員に武器を手渡すのは、自決命令を現実化したものだ」と語る。

 旧日本軍の慰安婦について、安倍政権には、軍とのかかわりを極力少なく見せようという動きがある。今回の文科省の検定方針も軌を一にしていないか。

 国民にとってつらい歴史でも、目をそむけない。将来を担う子どもたちにきちんと教えるのが教育である。  

>軍の関与が削られた結果、住民にも捕虜になることを許さず、
>自決を強いた軍国主義の異常さが消えてしまう。
>それは歴史をゆがめることにならないか。
なりませぬ。軍国主義の異常さの一端です。

>ひとつは、なぜ、今になって日本軍の関与を削らせたのか、ということだ。
>前回の05年度検定までは、同じような表現があったのに問題にしてこなかった。
アベシンゾーへの誘導ですね。愛いヤツ^^

>文科省は検定基準を変えた理由として「状況の変化」を挙げる。
>だが、具体的な変化で目立つのは、自決を命じたとされてきた元守備隊長らが05年、
>命令していないとして起こした訴訟ぐらいだ。
ぐらいだw

>その程度の変化をよりどころに、教科書を書きかえさせたとすれば
その程度きたこれww
大論争中の住民の集団自決問題を「その程度」とは、これは乱暴なwwwww

>あまりにも乱暴ではないか。
乱暴なのは朝日(ry

>「沖縄県史」や「渡嘉敷村史」をひもとけば
紐解いてはいかん。それらの本は贋書の孫引きだから揉めてるのにw

>旧日本軍の慰安婦について、安倍政権には、軍とのかかわりを極力少なく見せようという動きがある。
オチがよろしいようで。

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star歴史には、隠された真実がある
  自決された方々へのお悔やみと著者の本件解明にかかる著者の
尽力に敬意を表します。
  著者は丹念な取材調査により「惨劇の核心」を明らかにしました。
言わば定説であった沖縄の住民自決は、旧日本軍の命令ではなか
のだと。戦後教育を受けた多くの国民は、第二次世界大戦末期に、
沖縄住民が旧日本軍の強制的命令で集団自決を強いられたと教え
込まされました。自決されたのは事実であるせよ、背後には年金受
領資格を得るために住民側が軍に対して命令を出してくれるよう要
望したという隠された事実があったのだと。正に驚愕の内容でした。
憲法制定過程が秘匿されているなど戦後の教育歴史には隠された
真実が他にもまだあるかもしれないと思いました。

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コメント
戦後、当時を生きた老人たちは黙して騙らずですが、連合軍やゲリラの日本将兵や民間人に対する扱いは戦時訓がなかったとしてもかなり酷いものでしたし、当然そういうのは口伝に聞いていたはずです。
戦後の平時となった占領下の日本、しかも進駐してきたのは比較的反日感情がマシなヨーロッパ戦線の兵士ですらおびただしい数のレイプ事件を起こしてます。
当然、反日感情が高い太平洋戦線では捕虜はおろか、傷病兵や民間人に至るまで大抵がその場で射殺、運が悪いとなぶり殺しやレイプ殺害など散々な目に合わされてます。
そういう話を聞いていれば、家族を辱めの上になぶり殺しにされるくらいなら、いっそ自決と考えてもなんら不思議ではない。そういう時代だったという背景も教えるべきでは無いかと…。
Posted by いわし at 2007年04月02日 14:33
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