2019年06月27日

【映画評】ガラスの城の約束

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外観的ネグレクト家庭を描いたヒューマンドラマ。
ウディ・ハレルソンとナオミ・ワッツの怪演が面白かったです。

phantom-film.com

イントロダクション
長年の監禁からの脱出劇を描いた『ルーム』でアカデミー賞R最優秀女優賞を受賞したブリー・ラーソン。彼女の真価が再び発揮されたのが、『The Glass Castle』である。脚本・監督を手掛けたデスティン・ダニエル・クレットンとは2013年の『ショート・ターム』で組んだ仲。様々な事情を抱える10代専用の短期保護施設の所長を演じ、クレットンともども、ブレイクスルーのきっかけとなった。奇しくも、『ショート・ターム』、『ルーム』、そして本作と、特異な子ども時代を送ることになった少女の葛藤と自立をテーマとしたドラマで、複雑な表情を見せる彼女。『The Glass Castle』では高級ブランドのスーツと隙のないメイクで武装し、生き馬の目を抜くニューヨークで人気コラムニストとして生きる女性が抱える親への複雑な感情を生々しく表現する。

原作は2005年3月、スクリプナーから刊行された「The Glass Castle」。ペーパーバック版として売り出されると、全米の売り上げランキングに一年以上、ランクインされるベストセラーとなった。人々がこの本に魅了されたのは、売れっ子コラムニストとして活躍していたジャネット・ウォールズが、それまで築き上げた華麗なるセレブのイメージをかなぐり捨てて、まさに戦いとしか言いようのない過酷な子供時代の思い出を赤裸々に綴っていたことだった。だが、彼女の自叙伝の中で最も驚く部分は、痛ましい暮らしをしているにもかかわらず、家族の深い愛が描かれているところだ。その愛ゆえに、ジャネットは青春時代を大冒険と救済の旅に変えることが出来たのだ。

本書は2006年にアメリカ図書館協会のヤングアダルト図書館サービス協会 (YALSA) が主催するアレックス賞(12歳から18歳のヤングアダルトに特に薦めたい大人向けの本10冊に贈る賞)にカズオ・イシグロの「わたしを離さないで」と共に選ばれ、日本では「ガラスの城の約束」(ハヤカワ文庫)として2019年5月に刊行される。
映画化に際しては、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』、『しあわせの隠れ場所』と孤独な境遇にいる子どもの成長物語を製作してきたギル・ネッター。撮影監督は『ショート・ターム』でもクレットンとコンビを組んだブレット・ポウラク。プロダクション・デザインはベン・アフレック監督の『ザ・タウン』、『アルゴ』のシャロン・シーモア。本作では、ウォールズ家の変遷を時代ごとの家の変化で見せていった。

作品の魅力を支えるのは社会一般のルールや法律をものともしない、ラジカルな生き方を選ぶウォールズ一家の主、レックスと妻、ローズマリーである。財産はなくても、子どもたちに夜空の星を贈り、詩的な世界の広がりを教えるロマンティックな一面を持ちつつ、突然、暴力的な方法で危機を乗り越える術を体に叩きつけようとするレックス。日によっては知的な科学者、時に良き父であり愛すべきヒーローから、ふとした瞬間に飲んだくれでどうしようもないダメ男へと顔を変える複雑怪奇なキャラクターをウディ・ハレルソンが熱演。いつまでも夢見る少女のような天真爛漫さを漂わせる母、ローズマリー役にはナオミ・ワッツ。この二人が演じたことで、単に「毒親」とカテゴライズできない正邪併せ持つ両親像が具現化された。子どもをうまく育てる術を知らない彼らの暗い過去が垣間見えるからこそ、レックスとローズマリーを簡単に憎んだり、捨てたりできない子どもたちの葛藤が浮かび上がる、良質な家族映画が出来上がったのだ。

ストーリー
ダメな思い出ほど、今は愛おしい―。
1989年、ニューヨーク。ジャネット・ウォールズは「ニューヨーク・マガジン」で活躍する人気コラムニスト。富裕層が集まるマンハッタン、パークアベニューの瀟洒なアパートメントにファイナンシャル・アドバイザーである恋人、デヴィッドと暮らしている。

ある夜、彼の顧客と高級レストランで会話を交わす中、ジャネットの両親について質問が及ぶ。「母はアーティストで、父は起業家です。質の悪い漂青炭を効率よく燃やす技術を開発しています」―これは使い慣れた彼女の嘘。レストランからの帰り道、車道に飛び出してきたホームレスの男性を見かける。それは、ストリートで自由気ままに暮らす彼女の父・レックスだったが、ジャネットは知らないふりを装う。何もかもが規定外だった父と母との記憶をたどり出しながら―。

ジャネットの父親はいつか家族のために「ガラスの城」を建てるという夢を持つエンジニア、母親は売れない画家で、彼らは定職につかず理想や夢ばかりを追い求め、自由気ままに暮らしていた。物理学や天文学などを教えてくれる父・レックスは、ジャネットたち兄弟にとってカリスマ的な存在で、幼いながらも聡明なジャネットのことを彼は「チビヤギ」と呼び、愛情を注いでいた。しかし、仕事が上手くいかないレックスは次第に酒の量が増え、家で暴れるようになっていく。やがて、高校生になったジャネットは大学進学をきっかけに、ニューヨークへと旅立ち、両親との関係を断とうとするが・・・。

インタビュー
原作者ジャネット・ウォールズ
1960年4月21日生まれ。ニューヨーク在住のコラムニスト。
名門女子大学バーナード・カレッジ卒業後、「エスクワイア」「USAトゥディ」「ニューヨーク」等の各誌を経て、現在はオンライナニュースサイトMSNBC.comで有名人のゴシップ記事を連載している。夫は作家のジョン・テイラー。「The Glass Castle」は270万部以上を売り上げ、今世界中で読まれている。

自叙伝「The Glass Castle」を執筆した経緯
時が過ぎるうちに、両親から得た純粋な愛情の素晴らしさは、どんな家族にも存在し、全ての家族に物語があるということをより強く思うようになったの。私を楽観的すぎると非難する人もいるけれど、そうやって私たち兄弟は大変な時期を乗り切って、喜びを探してきたのよ。そうじゃなきゃ死んでいたかもしれないわ。だから私は自分たちの話を発表することにしたの。どうやって私たちが試練をくぐり抜けることができたのかということを共有できれば、自分でもやれるって感じられるでしょ?

映画化にあたって
今までにも映画化の話はあったけれど、全然進まなかったの。私が書いた本は映画には向かいないとアドバイスを受けたこともあった。でも、ある日、奇跡が起こったの。プロデューサーのギル・ネッターが全てのことを成し遂げてくれたのよ。私は、ギルとデスティン・ダニエル・クレットン監督を全面的に信頼したわ。この物語は全体的に暗い感じにすべきじゃないと常々思っていたんだけど、一方で、取り乱した時代もかき消して、全体的に軽い感じにしたくはなかったの。デスティンはその両方を織り交ぜてくれたわ。

キャストについて
皆、自分のキャラクターをちゃんと理解しようと、とても熱心だったわ。撮影前に彼女たちが聞いてきた質問は、すごく核心をついていて驚かされたの。台本から逸れた時でさえ、いかにも両親が言いそうなことのように聞こえたのよ。考察の深さと心的な理解、愛情を持って私の家族になり切ってくれたこと、そして欠点だらけの家族なのに愛してくれたことに、とても感動したわ。

撮影現場での思い出
セットでウディ・ハレルソンが製図台で作業を始めるシーンがあって、彼を見て息が止まったわ。その仕草といい、姿勢といい、顔の表情といい、“なんてこと?彼は父を蘇らせたわ”ってね。(ジャネット役の)ブリーと家を出ていくことについて、激しいやり取りをするシーンでは、自分の思い出と重なって、心が引き裂かれる思いがしたわ。ウディがとても深くこの恐ろしく複雑な男の痛みや傷、そして愛情を理解していると感じられて、本当に幸運だったと思う。

観客にメッセージを
自分の家族のことを考えながら映画館を出てきてくれたら、すごく嬉しいわ。




ヴィゴ・モーテンセン主演「はじまりへの旅」ワイルド版みたいな印象。最後のネタバレ謎展開でブリー・ラーソンブチ切れというおもしろ展開でしたが、ある意味ウディ・ハレルソンも被害者だったのかもね。性的虐待を含め二重の意味で。

そのナオミさん。最近は小ぎたないババア役がすっかり板に付いたようですが、本作では冒頭の若くてお綺麗な容姿から中華料理屋で口から麺を垂らす食い方卑しい乞食姿まで八面六臂の大活躍。まさに令和版「ヤマトナデシコ七変化」でございました。同世代俳優で共に一世を風靡したニコラス・ケイジやキアヌ・リーブスが三流映画専門役者に堕ちた昨今、尖った作品を選んで本作や妊婦のロシア人売春婦役、友達と息子同士を交換スワッピングする変態主婦等、怪演派女優へ幅を広げているお姿は実にアッパレです。これからも頑張ってね。

満足度(5点満点)
☆☆☆


Posted by kingcurtis 固定リンクComments(1)映画 
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コメント
虐待された子供時代を売りにする人って、胡散臭くてどうもダメです。
そもそも、どこまで本当なのやらわかったもんじゃないし。

ドラマはフィクションとして楽しめればそれでいいわけなのに、自叙伝だとか、
現実に基づく話だとかいう但し書きがつくとそれだけでゲンナリするのよね。
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2019年06月28日 00:49
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