2019年03月01日
【映画評】ジュリアン
mixiチェック気鋭の若手グザヴィエ・ルグラン監督の初長編作品。
数年前のSSFF出展作品「すべてを失う前に」が前日譚だったんだ。
イントロダクション
フランス映画界の新しい才能、グザヴィエ・ルグラン監督、衝撃の長編デビュー!
長編初監督ながら卓越した演出力で俳優からリアルで自然な演技を引き出し、世界各国で注目と賞賛を浴びている、“もう一人の”グザヴィエ監督。2013年にフランス映画祭で上映された同監督の短編『すべてを失う前に』(12)はアカデミー賞R短編部門にノミネートされるなど実力はかねてから評価されていた。今作は同じテーマを同じキャストを使って長編化した渾身の一作。離婚した夫婦とその子供の家族の関係を描きながら、張り詰めた緊張感が終始途切れず最後まで続き、観る者を圧倒する。車の音、エレベーターの音、暗闇など、身近な物音を効果的に使い、観客の想像力を最大限に引き出す手腕は見事!サスペンスを超える傑作ドラマが誕生した!
ストーリー
離婚した父と母の間で揺れ動く息子ジュリアンの苦悩を描く。
両親が離婚したため、母ミリアム、姉と暮らすことになった11歳の少年ジュリアン。離婚調整の取り決めで親権は共同となり、彼は隔週の週末ごとに別れた父アントワーヌと過ごさねばならなくなった。母ミリアムはかたくなに父アントワーヌに会おうとせず、電話番号さえも教えない。アントワーヌは共同親権を盾にジュリアンを通じて母の連絡先を突き止めようとする。ジュリアンは母を守るために必死で父に嘘をつき続けるが、それゆえに父アントワーヌの不満は徐々に溜まっていくのであった。家族の関係に緊張が走る中、想像を超える衝撃の展開が待っていた。
下記予告編は本作前日譚と看做される「すべてを失う前に」
本作と併せて観ると一層面白い。
すべてを失う前に 青山シアター
平成版「シャイニング」です。上述「すべてを失う前に」より父、母、姉のキャスティングは継承し息子役のみ入れ替え。この子が凄い。演技とは全く思えないような名演子役。お父さん役は「イングロリアス・バスターズ」の冒頭でメラニー・ロランを逃がす例のおっさんですよ。ラストの例の彼はデンマーク映画「【映画評】THE GUILTY ギルティ」を彷彿。展開としては美味しいとこ取りではありますが、もう一捻り欲しい。「すべてを失う前に」のエンディングより格段に良化しているけどあと少し、最後がなんか足らない。
当地のフランス人から時折聞く日本とは比べ物にならない「DV地獄」フランスの実態と、婚姻制度破綻の弊害、シンママ求職難、共同親権の諍い、硬直化した当地の福祉行政をもっともっと織り込んだ方がよかったかもね。とはいえ90分足らずの短尺でここまで躍動的に畳み込んだ手法は素晴らしい。突如豹変する父親と終始怯える息子の演技(まるで菅直人を見る国民目線のような)は年間ベスト級。グザヴィエ2号の次回作に期待します。
パリの警察署に貼られていたDVのポスターの内容が忘れられない
— Atsuko TAMADA (@atsukotamada) 2016年5月16日
御主人に殴られた翌日、御主人は花を買ってきました。
あなたは御主人を許しました。
再び殴られた翌日、再び御主人は花を買ってきました。
最後に殴られた日、友人全員があなたに花を贈りました。
その日はあなたの葬儀でした。
満足度(5点満点)
☆☆☆☆