2019年02月05日

【映画評】七つの会議

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池井戸潤原作、TBS制作。よっていつものお約束パターン。
新井浩文さんは出演されていませんので、私は正義なリベラルさんもポリコレ棒を振り回すことなく心穏やかに鑑賞できます。

映画『七つの会議』公式サイト

イントロダクション
全ての日本人に問う『働く事』の正義とは?
『陸王』、『下町ロケット』、『オレたちバブル入行組』などの半沢直樹シリーズほか代表作は数知れず。企業の矛盾、そして働く人々の葛藤や絆など身近な視点を題材に、痛快でありながら、エンターテインメントとミステリーが絶妙に融合した小説を生み続ける作家・池井戸潤。その作品群の中でも“傑作”との呼び声が高いクライムノベル『七つの会議』(集英社文庫刊)がついに、スクリーンへ登場する。「結果がすべて」そんな考え方が今なお続く会社が物語の舞台。きっかけは社内で起きたパワハラ騒動だったが、そこに隠されたある謎が、会社員たちの人生、そして会社の存在をも揺るがすことに……。

「働く事」の正義とは? そして、守るべき信念とは何か?現代に生きる全ての日本人に捧ぐ、企業犯罪エンターテインメント ―映画『七つの会議』
主演は狂言界の至宝にして、俳優としても唯一無二の存在感を放つ、野村萬斎。捉えどころのない自由奔放な顔と、信念を貫く強い心を併せ持つ人物像、主人公・八角民夫(やすみたみお 通称「ハッカク」)に挑む。更には、今までの池井戸作品を支えた重厚かつ、超豪華な俳優陣が勢揃い。メガホンをとるのは、『私は貝になりたい』(08)、『祈りの幕が下りる時』(18)を手掛け、その確かな演出力とエモーショナルな映像表現が高く評価された福澤克雄。池井戸作品のドラマ化を数多く成功に導いたその手腕で、複雑な心情の変化を緻密に、ストーリー展開をダイナミックに描き出す。主題歌は、ロックの時代を作り、そして変革し、様々な人々の人生に影響を与え、自ら進化し続ける“ロック界最重要アーティスト”ボブ・ディランのバラード「メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ」。日本映画への楽曲提供はノーベル文学賞受賞後、初。愛そのものを唄い上げた名曲が闘いを終えた人々への鎮魂歌として響き渡る。2019年、日本映画界の歴史に新たな“伝説”が刻まれる。

ストーリー
都内にある中堅メーカー・東京建電。営業一課の万年係長・八角民夫(野村萬斎)はどこの会社にもいる、所謂“ぐうたら社員”。トップセールスマンである課長の坂戸宣彦(片岡愛之助)からはその怠惰ぶりを叱責されるが、ノルマも最低限しか果たさず、定例の営業会議では傍観しているのみ。絶対的な存在の営業部長・北川誠(香川照之)が進める結果主義の方針の元で部員が寝る間を惜しんで働く中、一人飄々と日々を送っていた。ある日突然、社内で起こった坂戸のパワハラ騒動。そして、下された異動処分。訴えた当事者は年上の部下、八角だった。北川の信頼も厚いエース・坂戸に対するパワハラ委員会の不可解な裁定に揺れる社員たち。そんな中、万年二番手に甘んじてきた原島万二(及川光博)が新課長として着任する。会社の“顔”である一課で、成績を上げられず場違いにすら感じる原島。誰しもが経験するサラリーマンとしての戦いと葛藤。だが、そこには想像を絶する秘密と闇が隠されていた……。

プロダクションノート
♯MEETING1 会議1 リハーサル
池井戸潤の同名小説を映画化した『七つの会議』。その現場が始まったのは、2018年4月30日のこと。大小さまざまな“会議”が描かれる本作の初日もまた、“会議”から幕を開けることとなった。
TBS社屋の一室を舞台に最初に行われたのは、野村萬斎演じる八角民夫、朝倉あき演じる浜本優衣、藤森慎吾演じる新田雄介の3人のシーンのリハーサル。もちろんキャスト陣だけでなく、メガホンを執る福澤克雄監督の姿もある。通常、映画の撮影ではリハーサルは段取り・ドライとして、そのシーンの撮影直前に本番同様の形でカメラワークや照明も考えながら行われるが、朝倉も藤森も当日撮影自体はなし。いわばリハーサルのためのリハーサルで、読み合わせと立ち稽古の意味合いが強い。こうしたリハーサルは映画では珍しいにしても、確かな芝居に裏打ちされた名作を生み出してきたTBSのドラマ製作では慣例で、福澤組でも慣習となっているもの。
まずテーブルに着いた形で、台本の読み合わせから開始。接待の領収書を、新田が八角に突き返そうとするシーンだ。「ここでの八角はイヤな奴でいいんですか?」「(新田に押せと迫る)判子ってどこにあるものなんですか?」と福澤に質問して、トーンとシチュエーションを確認していく萬斎。今回の八角はこれまでの池井戸×福澤作品にはなかった主人公像で、萬斎もまた同タッグには初参加。藤森もまた初参加となるが、厭味たっぷりで高圧的な人物像はこれぞ池井戸×福澤作品。そんな藤森には、セリフを「ポンポンポンッと言ってください!」と指示が飛ぶ。まさに池井戸調で福澤節だ。
リハーサルもまた打ち合わせで会議ということになるが、萬斎と朝倉の会議も行われていた。朝、顔を合わせて台本について改めて語らっていたふたり。そこで話していたのは、サスペンスでもある本作の醍醐味、そしてドーナツとネジというモチーフについて。どちらも物語を動かしていく大きな役割を果たすが、ネジは穴を埋めるもので、ドーナツは穴が開いたもの。その意味合いについて雑談ながら、しばし語り合っており、キャスト陣の本作においての取り組み方、作品に対しての読み解き方に感心させられるばかり。
さらに会議は続く。3人のシーンに続いて、今度はクライマックスの山場となる御前会議のリハーサルも行われた。ここから北川誠役の香川照之、梨田元就役の鹿賀丈史、宮野和広役の橋爪功、村西京助役の世良公則、田部役の木下ほうかも参加。こちらも読み合わせから始まったが、まさに会議シーンのため、テーブルに着いたままの読み合わせがすでに立ち稽古そのものにもなっている。リハーサルであっても、芝居は本番さながらで本物の緊迫感。撮影前の段階ですでに、会議の熱と作品の力を予感させるスタートとなった。

♯MEETING2 会議2 クランクイン
東京・京橋にあるビルの屋上。クランクインの4月30日、TBSでのリハーサルを挟んで、ついにここからファーストカットの撮影が始まった。八角民夫役の野村萬斎、北川誠役の香川照之、宮野和広役の橋爪功、河上省造役の緋田康人が、片岡愛之助扮する坂戸宣彦の処遇について話し合うという場面。広い屋上で小さく固まって顔を突き合わせ、言葉を交わす4人。この密談での決定事項が、大きな波紋を巻き起こすこととなっていく。これもまた会議で、ファーストカットもある意味では会議のシーンということになった。
クレーンカメラで宙空から俯瞰で4人を狙ったり、ハンディカメラでそれぞれの表情に迫ったりと、さまざまな角度から芝居が切り取られていく。ここでの萬斎と香川の芝居をモニターで見ていた福澤克雄監督が、「普通の俳優の顔じゃないんだよな」とポツリ。OKを受けてベースを訪れた本人に対しても、福澤は「自身にしか分からない何か独特の感覚があるのでは?」と話を振り、萬斎は「おっしゃりたいことは分かります」と笑う。
言うまでもなく、萬斎は狂言の第一人者で能楽の重要無形文化財総合指定者。福澤の言葉を受け、萬斎は「独特のものというのは古典芸能に通じる“気”や“間合い”みたいなことなのかもしれないですね」と語る。そんな萬斎との初共演を受けて香川は、「やはり萬斎さんはたくさんのポテンシャルがある方。これからさらに感情を出していく場面でそれを目の当たりにすることを楽しみにしています」と語ってくれた。
さらに、このシーンの出演者に関して言えば、橋爪は演劇畑出身で、緋田はコント畑出身。またそれ以外の出演者も出自はさまざまだ。片岡愛之助は歌舞伎俳優で、及川光博、岡田浩暉、世良公則はミュージシャン、立川談春、春風亭昇太は落語、藤森慎吾はお笑い、鹿賀丈史はミュージカルと、皆、映画やドラマで高い評価を受ける存在にして、もともとのジャンルは多岐にわたる。「家業としては同じ伝統芸能のくくりながら、普段は会えない人たちとこうして縁あって会えることが嬉しく喜ばしいことで、本業においても触発されるんです」と話していたのは、談春。
ドラマにおいてもさまざまなジャンルの演じ手を起用して、その適材適所の起用と芝居のセッションで魅せてきた福澤作品。セッションという単語は、共演とあわせて、会議という意味も持つ。それぞれに刺激を与え合い、受け合いながらのバラエティに富むキャスト陣の文字どおりの“セッション”。そこもまた本作の見どころだ。

♯MEETING3 会議3 池井戸×福澤作品の常連キャスト
池井戸潤の原作で、「半沢直樹」(13)、「ルーズヴェルト・ゲーム」(14)、「下町ロケット」(15)、「陸王」(17)、「下町ロケット(続編)」(18)を送り出してきた監督の福澤克雄。『七つの会議』にはその池井戸×福澤作品始め、福澤やTBS・伊與田英徳が手掛けてきた名作の、豪華にして演技派の俳優陣が多数集結している。
まず、「半沢直樹」でも熱演を見せた香川照之は、「MR.BRAIN」(09)、「南極大陸」(11)、「LEADERS リーダーズ」(14・17)、「流星ワゴン」(15)、「小さな巨人」(17)など、まさに福澤作品の常連。また及川光博は「半沢直樹」の他、『祈りの幕が下りる時』(18)でも要所を締めている。同じく「半沢直樹」で反響を呼んだ片岡愛之助は、福澤の劇場初監督作『私は貝になりたい』(08)からの縁。
さらに「陸王」にも出演した音尾琢真は、伊與田×福澤作品はこれが3作品目で、また「花咲舞が黙ってない(第2シリーズ)」(15/NTV)を合わせて池井戸作品も3作目。立川談春は今回、「ルーズヴェルト・ゲーム」、「下町ロケット」に続いての池井戸×福澤作品。「半沢直樹」でも存在感を示した北大路欣也は、「華麗なる一族」(07)で福澤作品に臨んでいる。加えて、朝倉あきと世良公則は「下町ロケット」、岡田浩暉、吉田羊、鹿賀丈史、橋爪功もそれぞれ伊與田や福澤の作品で好演しており、橋爪はラジオドラマ「下町ロケット」(12/TBSラジオ)でも池井戸作品に触れている。
木下ほうかも「下町ロケット」の他、「果つる底なき」(00/CX)、「アキラとあきら」(17/WOWOW)、『空飛ぶタイヤ』(18/本木克英監督)で池井戸作品に出演。また、「下町ロケット」の土屋太鳳、小泉孝太郎、春風亭昇太、『祈りの幕が下りる時』の溝端淳平が、出番は多くないながら物語において重要な役割を担う人物として登場。土屋や溝端、昇太は福澤や福澤組スタッフとの再会を喜んでいたが、小泉はちょうど「ブラックペアン」と撮影時期が重なり、福澤から「(同ドラマの役名の)高階先生!」と呼ばれ、「(同ドラマの舞台の)東城大からやって来ました(笑)」と冗談で返す場面も見られた。他、緋田康人、東京建電営業二課員・佐伯浩光役の須田邦裕(「半沢直樹」「ルーズヴェルト・ゲーム」「陸王」『祈りの幕が下りる時』)、また東京建電高崎工場長・前川役の赤井英和(「半沢直樹」)ら、名プレイヤーも見逃せない。一方で勝村政信は本作が福澤作品初参加ながら、すでにして常連のような存在感。まさに池井戸×福澤作品の現時点での集大成と言える顔触れだ。

♯MEETING4 会議4 定例会議とオープンセット
香川照之扮する北川誠の「では、定例会議を始める」の号令に、その場に居る100名以上の東京建電営業部員が「是非とも」と返す。 2018年5月1日、クランクイン翌日から『七つの会議』は物語の舞台となる東京建電のセット撮影がスタート。セット初日も映画冒頭の定例会議のシーンからスタートした。大会議室後方から見て、左に3人掛けテーブルが12列、通路を挟んで6人掛けテーブルが12列。3人掛けの最前列に及川光博扮する営業二課長・原島万二がひとりで座っていて、6人掛けの最前列に片岡愛之助扮する営業一課長・坂戸宣彦、そしてその後ろに野村萬斎扮する営業一課係長・八角民夫が居眠りをしながら腰掛けている中、北川の怒号が飛ぶ。
100名のエキストラを動員しての会議風景も圧巻ながら、埼玉・深谷の閉店した大型スーパーマーケットの建物内に作られたセット自体もまた圧巻。この大会議室だけでなく、通常の会議室、休憩スペース、営業一課・二課も一連で建て込まれている。豪奢でどこかアンティークな雰囲気もある、その造り。役員フロアや部長室は神奈川・綾瀬市役所、カスタマー室は東京・日比谷のオフィスビルを借りて撮影するなど一部ロケもあるが、東京建電がほぼ丸々建て込まれ、会議シーン、オフィスシーンが撮影されている。
香川、及川、片岡、そして会議を後方から見守るゼノックス常務・梨田元就役の鹿賀丈史は本日が初日でこれがファーストシーン。香川は前方の扉から、鹿賀は後方の扉から大会議室に入ってくるという流れだが、すでに役の気配を身にまとったふたりが姿を現すと、それだけで場の雰囲気がガラリと変わる。さらにセリフの応酬が始まって、緊張感が高まっていく。芝居が生み出すものがその場の空気を支配して、その空気が本作自体のトーンを作り出している。実際に香川の悪鬼のような演技、追い込まれて吐き気を催す及川の演技を見つめる監督の福澤克雄が笑みを浮かべる。シーンとしての満足感も得つつ、監督自身も俳優陣の芝居を楽しんでいるのだ。
一方で、合間にはその俳優陣が楽しげに語らう姿もあった。「皆さん、本気で香川さんのセリフにビクッとされていましたよ」と話す浜本優衣役の朝倉に、香川は「いびき掻いてる奴はいるわ、ゲロ吐いてる奴はいるわ、どんな会社なんだろう?」と笑い、「確かに」と萬斎が笑い返す。作品自体も緊張と緩和がスリリングな味わいを醸しているが、撮影現場もオンとオフで緊張と緩和がいい雰囲気を作り上げている。夕食前には、こんな会議風景も見られた。この日、萬斎が大量のパンを現場に差し入れていたが、それを前に、今食べるべきかどうか思案をめぐらす萬斎と香川。男たちの決断やいかに!? 会議は短時間で終幕。萬斎も香川もパンをほおばっていた。

本編のイン初日にリハーサルも実施され、そのうえで撮影が行われた御前会議のシーン。この御前会議は2018年5月7日と11日の2日間にわたり、シティホテル・ヒルトン東京お台場の最大級の宴会場・ペガサスをゼノックスの大会議室に見立てて撮影されている。
向かい合わせで並んだテーブルと椅子。1列に16脚で計32脚。そしてその奥に壇が置かれ、御前=北大路欣也演じるゼノックス社長・徳山郁夫の席となっている。息を呑む風格のあつらえだ。監督の福澤克雄はこの日が初日の北大路に位置関係と動きの説明をしながら「(セットに関して)やりすぎました」と笑い、北大路も場を見回して「野球ができそうですね(笑)」。劇中ではその存在だけで周囲を圧倒する徳山だが、カメラが回っていないところでは北大路がにこやかに世良公則や鹿賀丈史、橋爪功と談笑する場面も見られた。
もともと初日にこのシーンのリハーサルが行われたのは、一連のシーンが回想のインサートを含めて台本37ページにも及ぶボリュームあるシーンであるため。一連のシーン数は20に及び、リハーサルの際に掛かった芝居の尺としての長さは20分。加えて、会議の中でそれぞれの思惑と感情、秘密と闇があらわにされて、真実が明らかになるという芝居場にして山場だ。演技に関しても撮影に関しても、求められるもののハードルは高い。
撮影でも、まずリハーサルから行われ、それぞれ意見を出し合いながら芝居が組み立てられていった。このセリフは立って言うべきなのか、座って言うべきなのか。また、この段階でどこまで声を張るべきなのか。言うなれば、会議シーンのための会議。さらにこの段階では真の黒幕が誰なのか分からないため、観客にミスリードさせるべく意味深なセリフを怪しい人物に振り分けて、よりサスペンス感が高まる変更も行われた。徳山に説明を求められ、口を開く八角。その場面では、萬斎から「“是非とも”と言って説明を始めても面白いかもしれないですね。八角が初めてそこで“是非とも”を言うという」とアイデアが飛び出し、芝居がさらに膨らんでいく。
福澤は基本的に現場で指示を出したあとは、モニターベースで撮影を見守るというスタンスだが、この日、八角たちが御前会議の場に現れるというくだりに入ってからは現場につきっきりに。会議ということで大きなアクションこそないが、重厚感と一方でのテンポ感、スリリングな展開とすべてが明らかになる顛末で何ともエモーショナルなシーンとなっている。キャスト陣の気迫、スタッフ陣の熱意、そして福澤の感性がひとつとなった会議は幕を閉じた。

♯MEETING6 会議6 福澤克雄監督の演出術と撮影方法
監督・福澤克雄の印象としてキャスト陣が口を揃えて語るのは、まずはその見た目の大きさ。野村萬斎も「非常に大きい方」と語るように身長190cmで、学生時代はラクビーでならした体躯も堂々たるもの。そしてもうひとつが、演出術でもある独自の撮影方法だ。
キャスト陣いわく、さまざまな角度から同じ芝居を何度も撮っていく。ドラマでも映画でもカメラ割り=カット割りがあるため、同じ芝居を繰り返して別のアングルから撮ることは珍しくない。しかしその場合でも繰り返すのはひとつのシーンの一部、狙ったカットの部分の芝居のみだ。それが福澤組の場合、狙いのカットは一部だけだったとしても、大概はそのシーンの頭から終わりまでを何度も繰り返す。それが緊迫感や躍動感を生み、またさらに精度を高め、芝居を高ぶらせていくことにもつながっている。
一連の芝居を繰り返しながらも、狙いのカットはその都度あるため、それ以外のところでセリフが止まったり細かな動きが違ったりしていても、あえてカットは掛けずにカメラを回し続ける。むしろそのセリフや動きのミス、それがありながらも演技と物語が続いていく様は、現場で見ている分にはライブで芝居を眺めている感覚にもさせられる。さながら舞台のような臨場感だ。この丁々発止の臨場感から生まれるものが、福澤作品の魅力ともなっている。
体育会系の現場だという声もあって、体力と気力勝負ということでそれも間違ってはいないが、そうであるにしても福澤は決して鬼軍曹ではなく、スマートでクレバー、気さくで面倒見のいい監督だ。芝居の演出を付ける際も、ああしろ、こうしろという指示の出し方はしない。俳優に文字どおり寄り添いながら、「そこはもっと大きな声を出します」「ちょっと姿勢を変えてみましょうか」と提示・提案していく。そんな中で、これまでと違って芝居に注文を付けてもらえるようになったと語っていたのが、立川談春。「言えば応えられる素地ができてきたと思ってもらえたのかな」と笑う。
一方で、端的にして具体的な指示が飛ぶ場合もある。例えば萬斎に対して、寄りの表情を撮る際に「怖い顔をしてください」。あまりに端的で具体的すぎる指示がゆえに、萬斎は思わず「怖い顔ですか?」と微苦笑していたが、そのシーンであえて戯画的に怖い顔を見せることによって、物語と画面にケレン味が加わるという狙いがあってのこと。こうして福澤節は生み出されていく。
自身が描き出しているものは、エンターテインメントなのだと語る福澤。それは池井戸も自身の作品を語る際に使っている言葉だ。両名が手を組んだ『七つの会議』もまた、さまざまなテーマや要素をはらみながら、超一級のエンターテインメントに仕上がっている。

2018年5月24日、さいたま市中央区役所保健センターの大会議室を東京建電の一室に見立てて撮影された、あるシーン。ここで何とも貴重な3ショットが実現することとなった。ひとりはもちろん萬斎。もうひとりは監督の福澤克雄。そして最後のひとりは、原作者である池井戸潤。この日、池井戸が現場を訪問して撮影の様子を見学。興味深げに萬斎の芝居を見守り、3人で談笑する姿もあった。
このときカメラに収められていたのは、八角が会社組織というものについて自分の見解を述べる見せ場。ひとり語りのそのセリフは台本約2ページ分に及ぶ。萬斎はリハーサルの段階からすでにセリフを自分のものとしていたが、本番ではその間と表情で、完全に八角という男の有り様、この作品の空気感を自分のものとしていた。
ここまでの間に、メインキャスト陣は次々オールアップを迎えている。まず、5月14日、江木恒彦役の立川談春が埼玉・行田市の料亭ロケですべての撮影を終了。続いて5月20日の栃木県庁ロケで、徳山郁夫役の北大路欣也、坂戸宣彦役の片岡愛之助もアップとなった。北大路は玄関でマスコミに囲まれる場面、片岡は役員に呼び出しを受けて会議室に出向くという映画序盤のシーンがラストカットに。「半沢直樹」のイメージから一転、片岡は自信に満ちている一方で苦悩も深いエリート営業マンを力強く好演している。5月22日、東京建電試験室シーンのロケでアップした原島万二役の及川光博は、今回は平凡なサラリーマンという役どころながら何ともその人物像を魅力的に見せ、ロケでギャラリーから声を掛けられた際には、「ミッチーだよ!」と明るくいつものスマイルで応じる姿も印象的だった。
そして5月31日、埼玉県・さいたま市の町工場を東京建電の下請け先・ねじ六に見立ててのロケで、ねじ六社長・三沢逸郎役の音尾琢真、また萬斎もアップを迎えた。東京建電から八角が訪ねてきて、再びねじ六に取引を持ちかけるという場面。ここにもまたスリリングな会議=駆け引きと演出があって、へりくだる芝居をしていた萬斎に福澤から強気な姿勢も見せて欲しい、強気な姿勢の芝居をしていた音尾にとまどっているところも見せて欲しいという指示が入る。萬斎はねじを手にするカットですべての撮影を終了。福澤からの花束を受け取り、本作の撮影の感慨を語ると、まだカットが残っている音尾に八角さながらにひょうひょうと「あとはよろしく(笑)」と言葉を掛け、達成感と解放感をにじませながら現場をあとにした。
最後にアップを迎えたのは、香川照之。6月6日、東京建電セットの廊下のシーンで出番を終え、この日で本編すべての撮影も終了した。濃密な撮影で濃厚な映画。現場でも、大小・オンオフ、いくつもの会議が積み重ねられ、『七つの会議』は紡ぎ上げられた。




以下、原作未読の前提にて。
キングギドラもミニラもモスラも出るよ的なTBS池井戸潤系日曜劇場の顔芸ファン感謝祭みたいな印象。ヒロインは橋本愛かと思い込んで観ていましたが、「【映画評】四月の永い夢」の朝倉あきさんなんだ。色々ご活躍されているみたいで何より。
誰がヒールなのか分からぬ目まぐるしい演出は素直に面白いと感じましたが、基本的な話が全然面白くない。腑に落ちない。スケール感も万事テレビサイズ。尺不足なんでしょう。(どういう裏があるにせよ、なんで営業会議でイビキ掻いているヤツを窘めないんだよ)

たらればで申し上げると、同じ脚本、同じキャストで故伊丹十三さんがメガホン取ったらどんな作品に仕上がるんだろう?伊丹作品は120分の時間でもテレビドラマ12話に相当するような奥行きある作風だったよなぁ。思い出補正かもしれんけど。

世良公則は下町ロケットでも気持ち悪かったけど、本作では更に気持ち悪さが加速。あと野村萬斎の役作りがやり過ぎ。親会社の社長の前であんな啖呵切れるわけがない。歌舞伎じゃあるまいし。

というファンムービーなので、TBSドラマ「半沢直樹」「下町ロケット」「陸王」ファンの方はぜひご鑑賞を。それらの姉妹作として見るなら普通に面白いよ!思わずドーナツ食べたくなるし。

NHK版の八角役は吉田鋼太郎なんだね。機会があれば是非観たいです。

満足度(5点満点)
☆☆☆



Posted by kingcurtis 固定リンクComments(1)映画 
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コメント
半沢直樹以降、原作の電子書籍版が安くなっていたので何冊掛かっているけれど・・・みんな半沢直樹と同じの「どんでん返し」スポ根系ポジティブ小説なんだよなー・・・面白いけれど
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2019年02月06日 10:08
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