2018年10月09日

【映画評】日日是好日

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先日お亡くなりになった樹木希林さん遺作。主役は黒木華。希林さんは脇役でなく黒木華を転がし続ける助演です。

映画『日日是好日』公式サイト 2018年10月13日公開。

イントロダクション
真面目で、理屈っぽくて、おっちょこちょい。そんな典子は母に勧められて、お茶を習うことになった。二十歳の春だった。それから二十四年。就職の挫折、失恋、大切な人との別れ。いつも側にはお茶があった。五感を使って、全身で、その瞬間を味わった。やがて「日日是好日」という言葉をかみしめていく美しき時の流れ。この映画は、内なる自由と生きる喜び、そして、かけがえのない“今”を描く物語である。 主人公、典子を演じるのは黒木華。第64回ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞した『小さいおうち』(14)での卓越した演技力、主演作『リップヴァンウィンクルの花嫁』(16)で魅せた喪失と輝き。再び、女優、黒木華の凄みを存分に味わえる映画が誕生した。監督・脚本は大森立嗣。第35回モスクワ映画祭審査員特別賞を受賞した『さよなら渓谷』(13)に代表されるハードボイルドな作品が多い大森監督にとって、新境地ともいえる今作。初タッグとなるこの二人によって描き出される時の流れは、美しく、そして儚い。原作は人気エッセイスト、森下典子が茶道教室に通う日々を綴ったロングセラー。瑞々しく描かれる心象風景や青春像、そして「お茶」がもたらす人生訓的な“気づき”の数々は、茶道経験者の枠を越え、様々な岐路に立つ読者にとって心の拠り所となっている。  典子のお茶の師匠となる武田先生を演じるのは、『モリのいる場所』(18)、『万引き家族』(18)と公開作が続く樹木希林。「習い事の先生」という枠を大きく超えた人生の師匠として、大きな包容力で典子たちを導いていく。初共演となる黒木華と樹木希林の役柄が生徒と先生という関係であることも、日本映画界においては注目のコラボレーションとなる。典子のいとこで、共に茶道教室に通い始める美智子を演じるのは多部未華子。映画、ドラマ、演劇と活躍の場を広げる演技巧者の多部未華子が、お茶室に飾られる一輪の花のように映画に彩りを与え、静かな物語に躍動感を与える。それぞれの考え方で生きる道に悩む、典子と美智子の青春群像のほろ苦さや甘酸っぱさは、『まほろ駅前多田便利軒』(11)や『セトウツミ』(17)などのバディ映画の演出に長けた大森監督の真骨頂である。また、自身も茶道経験者である鶴田真由が演じる雪野役の、凛とした佇まいと緊張走る存在感。そして鶴見辰吾が演じる典子の父役は、見る者全ての父となり得る程の温かさをかもし出す。近年の鶴見辰吾における代表作と言っても過言ではないだろう。 本作のもう一人の主役とも言える「茶室」のロケーションセットは『舟を編む』(13)、『バンクーバーの朝日』(14)など数多くの逸品を手掛けてきた美術技師の原田満生と、『深夜食堂』(15)のセットデザインを手掛けた堀明元紀の師弟コンビによって生まれた。『写楽』(95)、『ALWAYS 三丁目の夕陽』(05)で二度の日本アカデミー賞最優秀照明賞を受賞した水野研一が編み出す季節の光と、『光』(17)でも大森監督と組んだカメラマン、槙憲治のレンズが「静」の世界である茶室を生き生きと、瑞々しく写し出していく。今や映画音楽に欠かせない存在となった世武裕子が大森監督作品に初参加。大森映画に新たな音楽を奏でる。また、原作の森下典子が自ら、茶道関連のアドバイザーとして全面的に撮影に参加した。

ストーリー
大学時代に、一生をかけられるような何かを見つけたい。でも、学生生活は瞬く間に過ぎていき−。典子(黒木華)は二十歳。真面目な性格で理屈っぽい。おっちょこちょいとも言われる。そんな自分に嫌気がさす典子は、母(郡山冬果)からの突然の勧めと、「一緒にやろうよ!」とまっすぐな目で詰め寄る同い年の従姉妹、美智子(多部未華子)からの誘いで“お茶”を習うことになった。まったく乗り気ではない典子だったが、「タダモノじゃない」という武田先生(樹木希林)の噂にどこか惹かれたのかもしれない。

稽古初日。細い路地の先にある瓦屋根の武田茶道教室。典子と美智子を茶室に通した武田先生は挨拶も程々に稽古をはじめる。折り紙のような帛紗さばき、ちり打ちをして、棗を「こ」の字で拭き清める。茶碗に手首をくるりと茶筅を通し「の」の字で抜いて、茶巾を使って「ゆ」の字で茶碗を拭く。お茶を飲み干すときにはズズっと音をたてる。茶室に入る時は左足から、畳一帖を六歩で歩いて、七歩目で次の畳へ。意味も理由もわからない所作に戸惑うふたり。質問すると「意味なんてわからなくていいの。お茶はまず『形』から。先に『形』を作っておいて、その入れ物に後から『心』が入るものなのよ」という武田先生。「それって形式主義じゃないんですか?」と思わず反論する美智子だが、先生は「なんでも頭で考えるからそう思うのねえ」と笑って受け流す。毎週土曜、赤ちゃんみたいに何もわからない二人の稽古は続いた。

鎌倉の海岸。大学卒業を間近に控えたふたりは、お互いの卒業後を語り合う。美智子は貿易商社に就職を決めたが、典子は志望の出版社に落ちて就職をあきらめたのだ。違う道を進むことになったふたりだが、お茶のお稽古は淡々と続いてく。初めて参加した大規模なお茶会は「細雪」のようなみやびな世界を想像していたが、なんだか大混雑のバーゲン会場のようだ。それでも本物の楽茶碗を手にし、思わず「リスみたいに軽くてあったかい」と感激した。就職した美智子はお茶をやめてしまったが、出版社でアルバイトをしながらお茶に通う典子には後輩もできた。お茶を始めて二年が過ぎる頃、梅雨どきと秋では雨の音が違うことに気づいた。「瀧」という文字を見て轟音を聞き、水飛沫を浴びた。苦手だった掛け軸が「絵のように眺めればいいんだ」と面白くなってきた。冬になり、お湯の「とろとろ」という音と、「きらきら」と流れる水音の違いがわかるようになった。がんじがらめの決まりごとに守られた茶道。典子はその宇宙の向こう側に、本当の自由を感じ始めるが…。

お茶を習い始めて十年。いつも一歩前を進んでいた美智子は結婚し、ひとり取り残された典子は好きになったはずのお茶にも限界を感じていた。中途採用の就職試験にも失敗した。お点前の正確さや知識で後輩に抜かれていく。武田先生には「手がごつく見えるわよ」「そろそろ工夫というものをしなさい」と指摘される。大好きな父(鶴見辰吾)とも疎遠な日々が続いていた。そんな典子にある日、決定的な転機が訪れるのだが−。

プロダクションノート
本作『日日是好日』の撮影は2017年11月20日〜12月23日に神奈川県横浜市を中心とするロケーションで行われた。本作は原作者である森下典子の自伝エッセイの映画化であるが、実際に森下が生まれ育った地も横浜であり、今も森下は自宅近くにある“武田先生のお茶教室”に通い続けている――。

本作で大半の舞台となるのはお茶室である。影の主役と言っても過言ではないお茶室をどう作るかは、本作の制作行程における非常に大きなテーマであった。様々な検討がなされた結果、神奈川県横浜市のとある、大きな庭園を持つ民家の一部を改造することによってお茶室のロケーションセットを作ることに決まった。これまで様々な優れた映画美術を表現してきた原田満生と堀明元紀がセットデザインの検討に入った。結果的に本作のメインステージとして相応しい、美しく、まるで呼吸をしているかのようなお茶室のロケセットは完成した。しかしながらそれは、“民家の一部を改造する”といった代物ではなかった。まず、お茶室部分は元々の民家の部屋を使わず、外壁を取り壊し、増築することによって作られた。広い庭園は半分以下に縮小され、余ったスペースには路地が作られた。路地に沿っては、片側は武田先生宅の木塀、片側には書き割りの住居や電柱が作られた。武田先生宅はお茶室の他に、生徒達を迎える玄関口スペースも増築され、お茶室への前室などが内部に作られた。こうして元々の民家と庭の原型はほぼ無くなり、武田茶道教室とその周辺の世界が新たに現れた。初めて訪れた人には元々あったものと映画用に作られたものの境目はわからない。近隣に住む方々にとっては突如として近所に(通行できない)路地が出来上がり、風情のある古民家が誕生した。お茶室セットの素晴らしさはさることながら、武田先生宅に沿うようにして玄関につながる路地がリアルに作られたことは、本作の撮影にとって大変効果的であった。それは日常と非日常への境界線であり、本作は路地、特にお稽古の帰り路に登場人物が雄弁となるシーンが多いからだ。

お茶の先生役である樹木希林も、時間をかけてお茶を習得していく黒木華も茶道は未経験。多部も幼少期に多少の経験があるのみ。撮影まえに集中して茶道の指導を受けた。短い期間ではあったが指導者もおどろくほどの集中力で基礎的な茶道のお点前を習得した。反して、本作で“新しい生徒たち”として登場し稽古での痛ましい失敗を見せる三人の女優、原田麻由(田所役)、川村紗也(早苗役)、滝沢恵(由美子役)は皆、茶道経験者であり、本来は美しいお点前を披露することができる。本作で映画初出演となった乃木坂46の山下美月は“天才少女”のひとみ役。山下は高校時代に茶道部の副部長を務めていたが、裏千家茶道部であったため、撮影前に表千家のお点前を入念に稽古した。この変換は感覚的にその流派の所作を身につけた人にとっては、見た目以上に悩ましいのだ。

かつて映画やドラマにおいて、これほどまでに“茶道の稽古シーン”が登場する現代劇はなかった。映画やドラマに登場する茶道といえば、利休の世界か、政財界や貴族の嗜みか、はたまた“○○家元殺人事件簿”か―。千利休がその“茶の湯”を大成させた世は、戦国時代である。武士を中心とした男系の嗜みであった茶道は、明治時代に入り「女子の教養」として学生や庶民の間に広まった。本作で黒木華演じる典子が茶道を始めたのは1998年。(※実際に原作の森下典子が茶道を始めたのは1970年代。)それから現在に至る20年間、世の中はもの凄いスピードで変わり続けた。様々なことがよりグローバルになりながら、一方ではよりパーソナルになった。ニュースはフェイクで溢れ、正しいことや美しいものと、そうではないものの境界線は複雑で曖昧なものとなった。典子の人生にも喜劇や悲劇があった。でも、典子の側にはいつも“お茶”があった。典子はお茶の稽古に通い続けた。雨の日は雨を聴き、雪の日は雪を見て、夏には夏の暑さを、冬は身の切れるような寒さを。五感を使って、全身で、その瞬間を味わい続けた。映画の中で「私、最近思うんですよ。こうして毎年、同じことができることが幸せなんだって」と武田先生は言う。「世の中には『すぐわかるもの』と『すぐわからないもの』の二種類がある。」と典子は思う。映画『日日是好日』は、四百年以上も変わらず「すぐわからないもの」の代表のような茶道と、人生の浮き沈みに揺れ動き続ける人間との、それらの狭間に肉迫していく。大森立嗣監督がお茶の映画を撮ることに違和感を持つ人も少なくないが、大森監督が製作発表リリースに寄せたコメントが、本作を彼が撮ることの意義を表現している。「茶道とは無縁の僕が原作を読み終えていたく感動していました。一人の女性が大人になっていく過程で、きらびやかな宝石とは違う、胸の奥にずっと、でも密かにある大切なものにお茶を通して気付き、触れていくお話しです。」

落語の席で朗読するほどの原作愛読者である人間国宝・柳家小三治氏は、原作(文庫本)の解説で次のように述べている。「(本屋の[茶道・華道]コーナーに置かれた原作を見て)ここにあるべき本じゃないんだよこの本は。(中略)いや、ここにも一冊くらい置いてもいいけど、とに角ここじゃないんだよ。だから女流作家エッセイコーナーでもいいし、んんそれから、んんと、宗教の本、哲学の本、人生読本じゃあ堅いなあ。生きて行く楽しみ……日本国民全員の副読本、いやあ、なんだか外れていくなあ。だからそういう本なんだよ」。映画化を企画したプロデューサーの吉村知己は、そもそも原作を茶道の本とは知らずに読み始め、茶道未経験であったが、すっかり虜になった。森下典子の『日日是好日-「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』は茶道体験記という枠を超えて、幅広い層の読者の胸を打つ。読者の中には“マインドフルネス本”と原作を称する人も多い。いま自分がいる空間そのものを、五感を使って全身で味わうという茶道の行為と、今その瞬間の自分へと意識を集中するマインドフルネスによる心理的な過程とは、近しいところに位置しているのかもしれない。

落語の席で朗読するほどの原作愛読者である人間国宝・柳家小三治氏は、原作(文庫本)の解説で次のように述べている。「(本屋の[茶道・華道]コーナーに置かれた原作を見て)ここにあるべき本じゃないんだよこの本は。(中略)いや、ここにも一冊くらい置いてもいいけど、とに角ここじゃないんだよ。だから女流作家エッセイコーナーでもいいし、んんそれから、んんと、宗教の本、哲学の本、人生読本じゃあ堅いなあ。生きて行く楽しみ……日本国民全員の副読本、いやあ、なんだか外れていくなあ。だからそういう本なんだよ」。映画化を企画したプロデューサーの吉村知己は、そもそも原作を茶道の本とは知らずに読み始め、茶道未経験であったが、すっかり虜になった。森下典子の『日日是好日-「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』は茶道体験記という枠を超えて、幅広い層の読者の胸を打つ。読者の中には“マインドフルネス本”と原作を称する人も多い。いま自分がいる空間そのものを、五感を使って全身で味わうという茶道の行為と、今その瞬間の自分へと意識を集中するマインドフルネスによる心理的な過程とは、近しいところに位置しているのかもしれない。

キャスト
樹木希林

p2

1943年、東京都出身。1961年、文学座付属演劇研究所で女優活動をスタート。ドラマ「時間ですよ」(65)や「寺内貫太郎一家」(74)、フジカラーのCMなどに出演し、個性派女優として注目を集める。映画では『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(07)、『悪人』(10)、『わが母の記』(12)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、『歩いても 歩いても』(08)でブルーリボン賞助演女優賞を受賞。また、河鹹照監督『あん』(15)では、第39回日本アカデミー賞優秀主演女優賞をはじめ、日本人初の第9回アジア太平洋スクリーンアワード女優賞、第10回アジア・フィルム・アワード・特別功労賞など海外に至るまで数々の映画賞を総ナメにした。また、是枝裕和監督作品の常連であり、『万引き家族』(18)は第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門でパルムドールを受賞。その他の出演作に『そして父になる』(13)、『海街diary』(15)、『海よりもまだ深く』(16)、『モリのいる場所』(18)などがある。2008年に紫綬褒章、2014年に旭日小綬章を受章している。2018年9月15日、逝去。




希林さんが大森立嗣作品?という感じでしたが、大森監督らしくない柔らかい作風。
茶道に造詣が深いのか、隣席のご婦人がケタケタ笑っていました。
茶道の素質があると称される女子高生は結局どうなったんだろう?
エンディングのご挨拶シーンが期せず希林さんからのメッセージの様な気もしまして、地味ながら落ち着いたいい作品なので気になる人は是非、劇場でご鑑賞を。

希林さん残る未公開遺作は来年公開予定の浅田美代子「エリカ38」を残すのみとなりました。
録画している「寺内貫太郎一家」見ていたらしっかりミヨちゃんと悠木千帆さん絡んでいまして、なかなか感慨深い。

満足度(5点満点)
☆☆☆


Posted by kingcurtis 固定リンクComments(1)映画 
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コメント
軽く見るには良さげですな
Posted by 名無し at 2018年10月16日 19:27
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