2017年12月07日

【最高裁大法廷 判決文】「NHK受信契約」裁判

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NHKをぶっ壊す! 受信料不払い編―日本放送協会の放送受信料を合法的に支払わないための放送法対策マニュアル
NHKをぶっ壊す! 受信料不払い編―日本放送協会の放送受信料を合法的に支払わないための放送法対策マニュアル

結論については割とシンプルで、表現としてマスコミは報じていませんがNHK一部敗訴の内容。

1)NHK受信契約義務は合憲。テレビを設置している以上、NHK見ている見ていないは関係なく支払い義務あり
2)受信者が受信契約拒絶する場合、NHKは勝手に契約締結してはならない ← NHK一部敗訴
3)個別の判決を以て契約は成立。支払い義務が生じる
4)承諾の効力発生時期は遡及しないが受信料支払い開始期日は機器設置日に遡る
5)消滅時効は機器設置日でなく契約成立日より進行
6)機器を廃止しても過去の設置期間中の支払い義務あり

NHK側は被告の衛星放送受信機器設置日(×購入日)を添え民訴〜確定判決を経ない限り請求できない。
よく分からないのが機器設置日の挙証責任があるNHK。契約拒絶者相手にどうやって調べる?
「受信契約取締法」立法し、武装した総務省NHK受信取締部の捜査官に強制捜査させる?

昨今のテレビ番組離れ・動画配信サービス充実から大画面テレビを設置すれどPC・スマホ等デジタルデバイス用モニターとして利用している人も急増。時流は「NHKは見ていない」でなく「NHKも見ていない」にも拘らず地引網方式で課金する旧態依然とした手法には強い違和感があります。

いずれにせよPC・スマホ課金問題は先送り。肥大し続ける受信料伏魔殿が遍く国民の理解を得られているとは到底思えず、双方一番合理的な解決手段はスクランブル放送だと思われます。災害発生時だけスクランブル解除すれば何も問題ない。「あまちゃん」オンエア時、NHKオンデマンド契約者が急増した事例があります。いい番組さえ作ってくれたら視聴者はお金を払ってでも観るので心配しなくていいよ。
「駅長と副駅長は何故働かないのか?」「タクシーが韓国車では納得出来ない」NHKあまちゃん視聴者対応報告 2013年4月(要旨)




以下、長いので判決文冒頭部分は略。下線はママ。

平成26年(オ)第1130号,平成26年(受)第1440号,第1441号
受信契約締結承諾等請求事件
平成29年12月6日大法廷判決
主文
本件各上告を棄却する。
各上告費用は各上告人の負担とする。

第1 事案の概要
1 本件は,平成26年(オ)第1130号・同年(受)第1440号被上告人兼同年(受)第1441号上告人(以下「原告」という。)が,原告の放送を受信することのできる受信設備(以下,単に「受信設備」ということがある。)を設置していながら原告との間でその放送の受信についての契約(以下「受信契約」という。)を締結していない平成26年(オ)第1130号・同年(受)第1440号上告人兼同年(受)第1441号被上告人(以下「被告」という。)に対し,受信料の支払等を求める事案である。

(略)
1 放送法64条1項の意義
(略)
(2)以上によると,放送法64条1項は,受信設備設置者に対し受信契約の締結を強制する旨を定めた規定であり,原告からの受信契約の申込みに対して受信設備設置者が承諾をしない場合には,原告がその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め,その判決の確定によって受信契約が成立すると解するのが相当である。

(3)原告は,受信設備設置者が放送法64条1項に基づく受信契約の締結義務を受信設備設置後速やかに履行しないことは履行遅滞に当たるから,原告は受信設備設置者に対し受信料相当額の損害賠償を求めることができる旨を主張するが(予備的請求1に係る主張),後記のとおり,原告が策定し受信契約の内容としている放送受信規約によって受信契約の成立により受信設備の設置の月からの受信料債権が発生すると認められるのであるから,受信設備設置者が受信契約の締結を遅滞することにより原告に受信料相当額の損害が発生するとはいえない。また,放送法が受信契約の締結によって受信料の支払義務を発生させることとした以上,原告が受信設備設置者との間で受信契約を締結することを要しないで受信料を徴収することができるのに等しい結果となることを認めることは相当でない。

2放送法64条1項の憲法適合性について
(1)被告の論旨は,受信設備設置者に受信契約の締結を強制する放送法64条1項は,契約の自由,知る権利及び財産権等を侵害し,憲法13条,21条,29条に違反する旨をいう。その趣旨は,ー信設備を設置することが必ずしも原告の放送を受信することにはならないにもかかわらず,受信設備設置者が原告に対し必ず受信料を支払わなければならないとするのは不当であり,また,金銭的な負担なく受信することのできる民間放送を視聴する自由に対する制約にもなっている旨及び⊆信料の支払義務を生じさせる受信契約の締結を強制し,かつ,その契約の内容は法定されておらず,原告が策定する放送受信規約によって定まる点で,契約自由の原則に反する旨をいうものと解される。
上記,蓮な送法が,原告を存立させてその財政的基盤を受信設備設置者に負担させる受信料により確保するものとしていることが憲法上許容されるかという問題であり,上記△蓮ぞ綉,許容されるとした場合に,受信料を負担させるに当たって受信契約の締結強制という方法を採ることが憲法上許容されるかという問題であるといえる。

(2)電波を用いて行われる放送は,電波が有限であって国際的に割り当てられた範囲内で公平かつ能率的にその利用を確保する必要などから,放送局も無線局の一つとしてその開設につき免許制とするなど(電波法4条参照),元来,国による一定の規律を要するものとされてきたといえる。前記のとおり,旧法下においては,我が国では,放送は,無線電信法中の無線電話の一種として規律されていたにすぎず,また,放送事業及び放送の受信は,行政権の広範な自由裁量によって監理統制されるものであったため,日本国憲法下において,このような状態を改めるべきこととなったが,具体的にいかなる制度を構築するのが適切であるかについては,憲法上一義的に定まるものではなく,憲法21条の趣旨を具体化する前記の放送法の目的を実現するのにふさわしい制度を,国会において検討して定めることとなり,そこには,その意味での立法裁量が認められてしかるべきであるといえる。
そして,公共放送事業者と民間放送事業者との二本立て体制の下において,前者を担うものとして原告を存立させ,これを民主的かつ多元的な基盤に基づきつつ自律的に運営される事業体たらしめるためその財政的基盤を受信設備設置者に受信料を負担させることにより確保するものとした仕組みは,前記のとおり,憲法21条の保障する表現の自由の下で国民の知る権利を実質的に充足すべく採用され,その目的にかなう合理的なものであると解されるのであり,かつ,放送をめぐる環境の変化が生じつつあるとしても,なおその合理性が今日までに失われたとする事情も見いだせないのであるから,これが憲法上許容される立法裁量の範囲内にあることは,明らかというべきである。このような制度の枠を離れて被告が受信設備を用いて放送を視聴する自由が憲法上保障されていると解することはできない。

(3)放送法は,受信設備設置者に受信料を負担させる具体的な方法として,前記のとおり,受信料の支払義務は受信契約により発生するものとし,任意に受信契約を締結しない受信設備設置者については,最終的には,承諾の意思表示を命ずる判決の確定によって強制的に受信契約を成立させるものとしている。受信料の支払義務を受信契約により発生させることとするのは,前記のとおり,原告が,基本的には,受信設備設置者の理解を得て,その負担により支えられて存立することが期待される事業体であることに沿うものであり,現に,放送法施行後長期間にわたり,原告が,任意に締結された受信契約に基づいて受信料を収受することによって存立し,同法の目的の達成のための業務を遂行してきたことからも,相当な方法であるといえる。
任意に受信契約を締結しない者に対してその締結を強制するに当たり,放送法には,締結を強制する契約の内容が定められておらず,一方当事者たる原告が策定する放送受信規約によってその内容が定められることとなっている点については,前記のとおり,同法が予定している受信契約の内容は,同法に定められた原告の目的にかなうものとして,受信契約の締結強制の趣旨に照らして適正なもので受信設備設置者間の公平が図られていることを要するものであり,放送法64条1項は,受信設備設置者に対し,上記のような内容の受信契約の締結を強制するにとどまると解されるから,前記の同法の目的を達成するのに必要かつ合理的な範囲内のものとして,憲法上許容されるというべきである。

(4)以上によると,放送法64条1項は,同法に定められた原告の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の受信契約の締結を強制する旨を定めたものとして,憲法13条,21条,29条に違反するものではないというべきである。
その余の上告理由は,違憲をいうが,その前提を欠くものであって,民訴法312条1項及び2項に規定する事由のいずれにも該当しない。

3以上によれば,所論の点に関する原審の判断は是認することができる。論旨はいずれも採用することができない。

第3平成26年(受)第1440号上告代理人高池勝彦ほかの上告受理申立て理由第2の2について

1論旨は,被告に対して受信契約の承諾の意思表示を命ずる判決が確定することにより受信契約が成立した場合に発生する受信料債権は,当該契約の成立時以降の分であり,受信設備の設置の月以降の分ではない旨をいうものである。

2放送受信規約には,前記のとおり,受信契約を締結した者は受信設備の設置の月から定められた受信料を支払わなければならない旨の条項(第1の2(1)キ(イ))がある。前記のとおり,受信料は,受信設備設置者から広く公平に徴収されるべきものであるところ,同じ時期に受信設備を設置しながら,放送法64条1項に従い設置後速やかに受信契約を締結した者と,その締結を遅延した者との間で,支払うべき受信料の範囲に差異が生ずるのは公平とはいえないから,受信契約の成立によって受信設備の設置の月からの受信料債権が生ずるものとする上記条項は,受信設備設置者間の公平を図る上で必要かつ合理的であり,放送法の目的に沿うものといえる。
したがって,上記条項を含む受信契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により同契約が成立した場合,同契約に基づき,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生するというべきである。
所論の点に関する原審の判断は是認することができる。論旨は採用することができない。

第4平成26年(受)第1440号上告代理人高池勝彦ほかの上告受理申立て理由第2の1について

1受信料が月額又は6箇月若しくは12箇月前払額で定められ,その支払方法が2箇月ごとの各期に当該期分を一括して支払う方法又は6箇月分若しくは12箇月分を一括して前払する方法によるものとされている受信契約に基づく受信料債権の消滅時効期間は,民法169条により5年と解すべきであるところ(最高裁平成25年(受)第2024号同26年9月5日第二小法廷判決・裁判集民事247号159頁参照),論旨は,受信契約の成立によって,前記第3のとおり,受信設備設置の月以降の分の受信料債権が発生する場合,当該受信料債権の消滅時効は,受信契約上の本来の各履行期から進行し,本訴請求に係る受信料債権のうち一部については時効消滅している旨をいうものである。

2消滅時効は,権利を行使することができる時から進行する(民法166条1項)ところ,受信料債権は受信契約に基づき発生するものであるから,受信契約が成立する前においては,原告は,受信料債権を行使することができないといえる。この点,原告は,受信契約を締結していない受信設備設置者に対し,受信契約を締結するよう求めるとともに,これにより成立する受信契約に基づく受信料を請求することができることからすると,受信設備を設置しながら受信料を支払っていない者のうち,受信契約を締結している者については受信料債権が時効消滅する余地があり,受信契約を締結していない者についてはその余地がないということになるのは,不均衡であるようにも見える。しかし,通常は,受信設備設置者が原告に対し受信設備を設置した旨を通知しない限り,原告が受信設備設置者の存在を速やかに把握することは困難であると考えられ,他方,受信設備設置者は放送法64条1項
により受信契約を締結する義務を負うのであるから,受信契約を締結していない者について,これを締結した者と異なり,受信料債権が時効消滅する余地がないのもやむを得ないというべきである。
したがって,受信契約に基づき発生する受信設備の設置の月以降の分の受信料債権(受信契約成立後に履行期が到来するものを除く。)の消滅時効は,受信契約成立時から進行するものと解するのが相当である。所論の点に関する原審の判断は是認することができる。論旨は採用することができない。

第5結論

以上によれば,原告の請求のうち予備的請求2を認容すべきものとした原審の判断は,是認することができるから,本件各上告を棄却することとする。よって,裁判官木内道祥の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官岡部喜代子,同鬼丸かおるの各補足意見,裁判官小池裕,同菅野博之の補足意見がある。

裁判官岡部喜代子の補足意見は,次のとおりである。
被告は,放送法64条1項は訓示規定であると主張し,また,これを訓示規定と解さなければ憲法に違反すると主張するので,その点について補足する。多数意見の見解は,放送法64条1項の規定によって原告に私法上の権利である受信契約承諾請求権が発生すると解するものといえる。放送法は,主に原告その他の放送主体の組織及び業務について規定しており,公法であると性格付けられるものである。しかし,公法であっても私権の発生要件について規定することもあり得るところであり,放送法内において受信契約の締結を強制する具体的な方法についての規定がないことが,強制力のないことを理由付けるものではない。放送法の規定中に受信契約締結義務が定められたのは,同法の立法に至る経過において,原告の財政基盤確保の方法が変遷したことによるものである。その規定を読めば,ー信設備を設置したこと,原告による受信契約申込みの意思表示がなされたことという二つの要件を充足することによって,原告が当該受信設備を設置した者に対して受信契約承諾請求権を取得することになると理解できる。原告がその取得した受信契約承諾請求権を行使しても相手方が承諾しないときには,民法414条2項ただし書の規定によって意思表示を求める訴訟を提起することができる。そして,判決の確定によって承諾の意思表示をしたものとみなされたときに受信契約が成立する。放送受信規約第4条第1項は,受信契約は受信設備設置の日に成立するものとする旨を規定しているところ,その趣旨は,受信設備の設置の時からの受信料を支払う義務を負うという内容の契約が,意思表示の合致の日に成立する旨を述べていると解すべきである。また,放送法64条1項が,受信契約承諾請求権の発生要件として「受信設備を設置した者」と規定していて「受信している者」と規定していないことからすれば,受信設備を設置して受信することができる地位にあることによって受信料を支払う義務を負うことになるものといえる。
このように,放送法64条1項は,原告の放送を受信しない者ないし受信したくない者に対しても受信契約の締結及び受信料の支払を強制するものと解されるところ,被告は,そのような放送法64条1項は憲法に違反すると主張する。憲法は表現の自由の派生原理として情報摂取の自由を認めている(最高裁昭和63年(オ)第436号平成元年3月8日大法廷判決・民集43巻2号89頁参照)。情報摂取の自由には,情報を摂取しない自由(情報を摂取することを強制されない自由)を含むものと解することができる。被告は,このような情報摂取の自由について明確に主張するものではなく,多数意見もこれに触れるものではないが,放送法64条1項は,原告の放送の視聴を強制しているわけではないとはいえ,受信することができる地位にあることをもって経済的負担を及ぼすことになる点で,上記のような情報摂取の自由に対する制約と見る余地もある。しかし,多数意見が判示するように,受信料制度は,国民の知る権利を実質的に充足し健全な民主主義の発達に寄与することを究極的な目的として形作られ,その目的のために,特定の個人,団体又は国家機関等から財政面での支配や影響が及ばないように必要かつ合理的な制度として認められたものであり,国民の知る権利の保障にとって重要な制度である。一方,受信設備を設置していれば,緊急時などの必要な時には原告の放送を視聴することのできる地位にはあるのであって,受信料の公平負担の趣旨からも,受信設備を設置した者に受信契約の締結を求めることは合理的といい得る。原告の独立した財政基盤を確保する重要性からすれば,上記のような経済的負担は合理的なものであって,放送法64条1項は,情報摂取の自由との関係で見ても,憲法に違反するとはいえない。

裁判官鬼丸かおるの補足意見は,次のとおりである。
私は,多数意見と同意見であるが,以下の点を補足したい。放送法64条1項は,「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は,協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」と規定しているが,その契約の内容は,原告の策定する放送受信規約により定められている。受信契約の締結が強制されるべきであることは多数意見のとおりであるところ,このことが契約締結の自由という私法の大原則の例外であり,また,締結義務者に受信料の支払という経済的負担をもたらすものであることを勘案すると,本来は,受信契約の内容を含めて法定されるのが望ましいものであろう。現に,放送受信規約の中には,受信契約の締結を強制するについて疑義を生じさせかねないものも含まれている。すなわち,放送受信規約第2条第1項は,「放送受信契約は,世帯ごとに行うものとする。」と定めて,原則として世帯を単位として契約を締結することとしているが,これは,放送法64条1項の規定から直ちに導かれるとはいい難い。さらに,放送受信規約は,受信契約を世帯ごととしつつも,受信契約を締結する義務が世帯のうちいずれの者にあるかについて規定を置いていない。任意に受信契約が締結される場合は別であるが,受信契約の締結が強制される場合には,締結義務を負う者を明文で特定していないことには問題があろう。家族のあり方や居住態様が多様化している今日,世帯が受信契約の単位であるとの規定は,直ちに1戸の家屋に所在する誰かを締結義務者であると確定することにならない場合もあると思われる。受信契約の締結を求められる側からみても,その義務を負う者が法令上一義的に特定できなければ,締結義務を負っていることの自覚も困難であろう。

裁判官小池裕,同菅野博之の補足意見は,次のとおりである。
私たちは,多数意見に賛同するものであるが,放送法64条1項の意義に関し,木内裁判官が反対意見で触れられている点について,補足的に意見を述べておきたい。多数意見が,民事執行法174条1項本文により承諾の意思表示を命ずる判決の確定時に受信契約が成立するとしつつ,受信設備の設置の月からの受信料を支払う義務が生ずるものとしていることについて,問題がある旨の指摘がされているが,この点については,岡部裁判官の補足意見で述べられているとおり,上記判決の確定により「受信設備を設置した月からの受信料を支払う義務を負うという内容の契約」が,上記判決の確定の時(意思表示の合致の時)に成立するのであって,受信設備の設置という過去の時点における承諾を命じたり,承諾の効力発生時期を遡及させたりするものではない。放送受信規約第4条第1項は,上記のような趣旨と解されるのであり,承諾の意思表示を命ずる判決の確定により受信契約を成立させることの障害になるものではない。
また,受信設備を廃止した場合の問題点も指摘されるが,過去に受信設備を設置したことにより,それ以降の期間について受信契約を締結しなければならない義務は既に発生しているのであるから,受信設備を廃止するまでの期間についての受信契約の締結を強制することができると解することは十分に可能であると考える。
さらに,不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求を認めるとの考え方が示されているところ,このような構成は,受信契約の締結に応じない受信設備設置者からも受信料に相当する額を徴収することができるようにするためのものであると考えられる。しかし,不当利得構成については,受信設備を設置することから直ちにその設置者に受信料相当額の利得が生じるといえるのか疑問である上,受信契約の成立を前提とせずに原告にこれに対応する損失が生じているとするのは困難であろう。不法行為構成については,受信設備の設置行為をもって原告に対する加害行為と捉えるものといえ,公共放送の目的や性質にそぐわない法律構成ではなかろうか。また,上記のような構成が認められるものとすると,任意の受信契約の締結がなくても受信料相当額を収受することができることになり,放送法64条1項が受信契約の締結によって受信料が支払われるものとした趣旨に反するように思われる。反対意見には傾聴すべき点が存するが,放送法は,原告の財政的基盤は,原告が受信設備設置者の理解を得て受信契約を締結して受信料を支払ってもらうことにより確保されることを基本としているものと考えられるのであり,受信契約の締
結なく受信料相当額の徴収を可能とする構成を採っていない多数意見の考え方が放送法の趣旨に沿うものと考える。

裁判官木内道祥の反対意見は,次のとおりである。
私は,放送法64条1項が定める契約締結義務については,多数意見と異なり,意思表示を命ずる判決を求めることのできる性質のものではないと解する。以下,その理由を述べる。

1意思表示を命ずる判決をなしうる要件
(1)意思表示の内容の特定
判決によって意思表示をすべきことを債務者に命ずるには,その意思表示の内容が特定されていることを要する。契約の承諾を命ずる判決が確定すると,承諾の意思表示がなされたものとみなされて契約が成立することになるが,1回の履行で終わらない継続的な契約においては,承諾を命じられた債務者は判決によってその契約関係に入っていくのであるから,承諾によって成立する契約の内容が特定していないまま,判決が債務者の意思表示の代行をなしうるものではない。
(2)意思表示の効力発生時期
判決が命じた意思表示の効力発生時期が判決の確定時であることは,民事執行法174条が定めており,これと異なる効力発生時期を意思表示を命ずる判決に求めることはできない。

2放送受信規約の定める受信契約の内容
放送法は受信契約の内容を定めておらず,原告の定める放送受信規約がその内容を定めている。そのことの当否は別として,放送受信規約の定める受信契約の内容は,次のようなものである。
(1)受信契約の種別と受信料(第1条第1項,第5条)
受信契約には,3つの種別があり,1の受信契約につき,その種別ごとの受信料が定められている。
(2)受信契約の単位(第2条)
受信設備が設置されるのが住居であれば,世帯が契約単位であり,1世帯で複数住居なら,住居ごとが単位となる。世帯とは,住居および生計をともにする者の集まり,または,独立して住居もしくは生計を維持する単身者である。事務所等の住居以外の場所に設置される受信設備については,設置場所が契約単
位であり,設置場所の単位は,部屋,自動車などである。
同一世帯の1の住居に受信設備が何台あっても,契約は1,受信料も1であり,住居以外の場所では1の設置場所に受信設備が何台あっても,契約は1,受信料も1である。
(3)受信契約書の提出義務(第3条)
受信設備を設置した者は,遅滞なく,\瀉崋圓了疚承擇喀蚕蝓き∪瀉屬瞭,受信契約の種別,ぜ信できる放送の種類及び受信設備の数などを記載した受信契約書を原告に提出しなければならない。
(4)受信契約の成立(第4条第1項)
受信契約は受信設備の設置の日に成立するものとする。
(5)受信契約の種別の変更(第4条第2項)
受信契約の種別の変更については,受信設備の設置による変更は設置の日に,受信設備の廃止による変更は,その旨を記載した受信契約書の提出の日に,原告の確認を条件として,変更される。
(6)受信料支払義務の始期と終期(第5条第1項)
受信契約者は,受信設備の設置の月から解約となった月の前月まで,受信料を支払わなければならない。
(7)受信契約の解約(第9条第1項,第2項)
受信設備を廃止すると,受信契約者は,その旨の届出をしなければならない。原告が廃止を確認できると,届出があった日に解約されたものとする。
3放送受信規約の定めと意思表示を命ずる判決をなしうる要件の関係
(1)放送受信規約による契約内容の特定
受信契約の承諾を命ずる判決には,承諾の対象となる契約の内容の特定が必要なところ,判決主文において明示するか否かを問わず,判決の時点における放送受信規約を内容とする受信契約の承諾を命ずることになる。そこで,放送受信規約の定めが,それ自体として,契約内容を特定するものとなっているのか否かが問題となる。

(2)放送受信規約による契約内容
放送受信規約は,受信設備設置者が設置後遅滞なく前記2(3)の事項が記載された受信契約書を提出して受信契約が成立することを前提としている。そのようにして受信契約が締結される限り,受信契約が受信設備設置時に遡って成立すると合意することは可能であり,1世帯に複数の受信設備があり,受信設備の種類が異なっていても,提出された受信契約書の記載によって,契約主体,契約の種別を特定することは可能である。
他方,以下の 銑で示されるとおり,判決によって受信契約を成立させようとしても,契約成立時点を受信設備設置時に遡及させること,また,判決が承諾を命ずるのに必要とされる契約内容(契約主体,契約の種別等)の特定を行うことはできず,受信設備を廃止した受信設備設置者に適切な対応をすることも不可能である。

〃戚鵑寮立時点と受信料支払義務の始点
意思表示を命ずる判決によって意思表示が効力を生ずるのは,民事執行法174条1項により,その判決の確定時と定められている。承諾を命ずる判決は過去の時点における承諾を命ずることはできないのであり,承諾が効力を生じ契約が成立するのは判決の確定時である。したがって,放送受信規約第4条第1項にいう受信設備設置の時点での受信契約の成立はありえない。受信料債権は定期給付債権である(最高裁平成25年(受)第2024号同26年9月5日第二小法廷判決・裁判集民事247号159頁)が,定期給付債権としての受信料債権を生ぜしめる定期金債権としての受信料債権は,受信契約によって生じ,その発生時点は判決の確定時である。受信契約が成立していなければ定期金債権としての受信料債権は存在せず,支分権としての受信料債権も生じない。したがって,放送受信規約第5条にいう受信設備の設置の月からの受信料支払義務の負担はありえない。

契約の主体と受信契約の種別の変更
同一の世帯に夫婦と子がいる場合,放送受信規約第2条は,住居が1である限り,受信設備が複数設置されても受信契約は1とするが,夫婦と子のそれぞれが受信設備を設置しあるいは廃止すると,判決が承諾を命ずるべき者が誰なのかは,不明である。それぞれが設置した受信設備の種類が異なる場合,判決が承諾を命ずる契約の種別が何なのかも,不明である。

受信設備を廃止した受信設備設置者との関係
承諾を命ずる判決は,過去の時点における承諾を命ずることはできないのであるから,現時点で契約締結義務を負っていない者に対して承諾を命ずることはできない。受信契約を締結している受信設備設置者でも,受信設備を廃止してその届出をすれば,届出時点で受信契約は解約となり契約が終了する(放送受信規約第9条)ことと対比すると,既に受信設備を廃止した受信設備設置者が廃止の後の受信料支払義務を負うことはありえない。仮に,既に受信設備を廃止した受信設備設置者に対して判決が承諾を命ずるとすれば,受信設備の設置の時点からその廃止の時点までという過去の一定の期間に存在するべきであった受信契約の承諾を命ずることになる。これは,過去の事実を判決が創作するに等しく,到底,判決がなしうることではない。
原告が受信設備設置者に対して承諾を求める訴訟を提起しても,口頭弁論終結の前に受信設備の廃止がなされると判決によって承諾を命ずることはできず,訴訟は受信設備の廃止によって無意味となるおそれがある。

4財源としての受信料の必要性と放送法64条の関係
放送法の制定当時においても民事訴訟法736条が現行の民事執行法174条と同様の意思表示を命ずる判決を定めていたのであるから,放送法の制定にあたって,同法に定める受信契約の締結義務を,意思表示を命ずる判決によって受信契約が成立するものとし,それによって受信料を確保するものとする動機付けは存したかもしれないが,そのことと,実際に制定された放送法の定めが,受信契約の締結を判決により強制しうるものとされているか否かは,別問題である。受信契約の内容は放送受信規約によって定められ,その規約による受信契約の条項は電波監理審議会の諮問を経た総務大臣の認可を経ているのであるから,放送受信規約は放送法64条1項の趣旨を具体化したものとなっていると解されるが,その規約の内容が,判決によって承諾を命ずることができるものにはなっておらず,かえって,任意の契約締結を前提とするものとなっていることは,前項で述べたとおりであり,放送法64条1項は判決により受信契約の承諾を命じうる義務の定め方をしていないのである。

5判決によって成立する受信契約が発生させる受信料債権の範囲
多数意見は,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生する理由を,受信契約の締結を速やかに行った者と遅延した者の間の公平性に求めるが,これは,受信契約が任意に締結される限り受信料支払義務の始点を受信設備設置の月からとすることの合理性の理由にはなるものの,放送法の定めが判決が承諾を命じうる要件を備えたものとなっていることの理由になるものではない。
契約の成立時を遡及させることができない以上,判決が契約前の時期の受信料の支払義務を生じさせるとすれば,それは,承諾の意思表示を命ずるのではなく義務負担を命ずることになる。これは,放送法が契約締結の義務を定めたものではあるが受信料支払義務を定めたものではないことに矛盾するものである。

6受信料債権の消滅時効の起算点
多数意見は,判決により成立した受信契約による受信料債権の消滅時効の起算点を判決確定による受信契約成立時とし,任意の受信契約の締結に応じず,判決により承諾を命じられた者は受信料債権が時効消滅する余地がないものであってもやむを得ないとする。
受信設備設置者は,多数意見のいうように,受信契約の締結義務を負いながらそれを履行していない者であるが,不法行為による損害賠償義務であっても行為時から20年の経過により,債権者の知不知にかかわらず消滅し,不当利得による返還義務であっても発生から10年の経過により,債権者の知不知にかかわらず消滅することと比較すると,およそ消滅時効により消滅することのない債務を負担するべき理由はない。

7放送法の契約締結義務の私法的意味
放送法64条1項の定める受信契約の締結義務が判決により強制できないものであることは,なんら法的効力を有しないということではない。受信契約により生ずる受信料が原告の運営を支える財源であり,これが,原告について定める放送法の趣旨に由来することから契約締結義務が定められているのであるから,受信設備を設置する者に受信契約の締結義務が課せられていることは,「受信契約を締結せずに受信設備を設置し原告の放送を受信しうる状態が生じない」ことを原告の利益として法が認めているのであり,この原告の利益は「法律上保護される利益」(民法709条)ということができる。受信契約の締結なく受信設備を設置することは,この利益を侵害することになり,それに故意過失があれば,不法行為が成立し,それによって原告に生ずる損害については,受信設備設置者に損害賠償責任が認められると解される。同様に「受信設備を設置し原告の放送を受信しうる状態となること」は,受信設備設置者にとって,原告の役務による利益であり,受信契約という法律上の原因を欠くものである。それによって原告に及ぼされる損失については,受信設備設置者の不当利得返還義務が認められると解される。

(裁判長裁判官寺田逸郎裁判官岡部喜代子裁判官小貫芳信裁判官鬼丸かおる裁判官木内道祥裁判官山本庸幸裁判官山崎敏充裁判官池上政幸裁判官大谷直人裁判官小池裕裁判官木澤克之裁判官菅野博之裁判官山口厚裁判官戸倉三郎裁判官林景一)

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Posted by kingcurtis 固定リンクComments(16)N H K | 注目の裁判
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コメント
BSの放送に関してはわけのわからんのが画面に出るので契約しないでもいいんですかね?
そこが知りたいなあ。
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2017年12月07日 11:45
公共伏魔殿 筒井康隆。
良い番組もある。
反日活動家、外国人パージ希望。
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2017年12月07日 11:58
ネット上では、NHK-BSに表示される「契約を促すテロップ」の消去を申しこんだ人(申込時に住所氏名を把握済)を相手に訴訟を起こしたとの情報がありますね(ソースは不明)。しばらくは、NHK-BSに表示される契約を促すテロップの消去を申し込み、設置場所・時期・申込人が明らかな相手に対する訴訟をするのでしょう。
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2017年12月07日 12:07
競馬場や競艇場のようなテレビが多数設置してある事業所はどうなるのであろうか。
設置単位の概念がクリアになってるようななってないような。
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2017年12月07日 12:27
漁師としては、18時50分の「天気予報」はマストなんだが、それ以外は全く見ない・・・ほんの4分程度だが、これで年に数万円は高すぎるかな・・・
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2017年12月07日 12:58
TV捨てない限り、契約済みだと解約出来ない感じか
理不尽だな
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2017年12月07日 18:27
オウム青木、エロラノベ室井や生姜中のような工作員を重用するNHKは公共どころか完全にプロパガンダ放送。

憲法云々というより民法的に、公共放送を詐称する不法集団とは契約できない、既に契約した人なら不法行為を繰り返すテレビ局への良心的受信料支払い保留という理屈は無理筋なんでしょうか。。
Posted by ヤマ at 2017年12月07日 20:45
この迷宮のような判決文を意訳するとだな、
裁判官「放送法を改正するか、もしくはNHKはスクランブルかけろ。そのへん察しろよバカ!」
まあ、こんな感じだろうw

現状にマッチしない放送法をほっといてるのは政府の責任だし、
スクランブルかけないのはNHKの責任だし、その責任のツケを
わざわざ最高裁に回すのはお門違いだし、税金と時間の無駄と
いうものだろう。
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2017年12月07日 21:25

電力会社と同じ。

原価に勝手に高額な人件費を載っけて

パッパラ市民から有無を言わせず、

ゼニゼニ銭を徴収する恥晒し反日企業。

早く、NHK死ね死ね運動を推進すべし。
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2017年12月08日 01:33
>漁師としては、18時50分の「天気予報」はマストなんだが、それ以外は全く見ない・・・ほんの4分程度だが、これで年に数万円は高すぎるかな・・・

民放(やラジオ?)やtenki.jpとかで代用できない類の内容が含まれてるんでしょうか?
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2017年12月08日 01:46
結局受信機器=テレビがなきゃ契約義務はないわけでね
要は現状受信料義務は適法だから嫌なら法改正しろとしか言ってない
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2017年12月08日 08:24
スクランブル等しないでも法が守ってくれる(くれていたし、今後も大きくは変わらないだろう(希望的観測))し、鼻くそほじってても民法の3倍もの収入が勝手に入ってくる。

そりゃ自分がNHK上層部になったら意地でも体制守ろうとするわw
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2017年12月08日 11:58
>2)受信者が受信契約拒絶する場合、NHKは勝手に契約締結してはならない

この時点で確かに、NHKかなり敗北ですね。
んであとの判決は
「法がこうなってんだからしゃーない」
って感じですよね。
Posted by んんー at 2017年12月08日 12:38
テレビは捨てたから現在死角はないが、
PCとスマホに課金されて来たらどうするかは悩む。
恐らく渋谷放送センターを取り囲む暴動に発展するだろうけど、
石ころの一つぐらい投げに行くわ。
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2017年12月08日 12:47
直接は関係ないですが、よく言われる【NHKだけ受信できないテレビ】というのは開発できないそうです。なぜならば今の地デジ受信機にはNHKの特許が多く絡んでおり【NHKだけ受信できないテレビ】にはその使用許可が出ないからだそうです。
Posted by 名無しのぱよぱよちーん at 2017年12月09日 05:50
>テレビが多数設置してある事業所

事業所の場合はテレビ設置台数分の契約が必要です。
(たしかこの件でNHKが東横インを提訴してたはず)

家庭においては1世帯1契約ですね。

ちなみに、現行の放送法(2016年〜)において、
"放送の受信を目的としない受信設備を設置した者については、
協会(NHK)との受信契約をしなければならないとは限らない"
のです。
(判決と重複してたらごめんなさい。まだ読んでないので)

ゲーム専用モニタとして使ってる、って言い張れば、
合法の範囲内でNHKとの契約が不要になるような気がす・・・。
Posted by 名無しはデモに苦しむぱよぱよちーん at 2017年12月11日 00:28
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