2017年11月16日

【映画評】サーミの血

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週刊奇跡の絶景 Miracle Planet 2016年2号 ラップランドのオーロラ フィンランド [雑誌]
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政府より保護された同胞社会を倦み都市部スウェーデン社会との同化を模索する少数民族少女の差別と葛藤を描いたスウェーデン/ノルウェー/デンマーク映画。
前々からの話題作でして、ようやく当地でも鑑賞できることが出来ました。


映画『サーミの血』公式サイト

イントロダクション
2016年 東京国際映画祭で審査委員特別賞と最優秀女優賞をW受賞!
北欧スウェーデンから届いた、監督自らのルーツに迫った渾身の感動作!

2016年東京国際映画祭で審査委員特別賞と最優秀女優賞をダブル受賞、北欧最大の映画祭のヨーテボリ国際映画祭2017では、前年度『ヒトラーの忘れもの』が受賞した最優秀ノルディック映画賞を獲得。その他、世界の映画祭でも絶賛の声が相次ぐ本作は、北欧スウェーデンの美しい自然を舞台に描かれるサーミ人の少女の成長物語であり、差別に抗い生き抜く姿に心打たれる感動作である。

サーミ人とは、ラップランド地方、いわゆるノルウェー、スウェーデン、フィンランドの北部とロシアのコラ半島でトナカイを飼い暮らし、フィンランド語に近い独自の言語を持つ先住民族。映画の主な舞台となる1930年代、スウェーデンのサーミ人は他の人種より劣った民族として差別された。

監督のアマンダ・シェーネルはサーミ人の血を引いており、自身のルーツをテーマにした短編映画を撮った後、長編映画デビュー作となる本作でも同じテーマを扱った。また、主演のレーネ=セシリア・スパルロクは、今もノルウェーでトナカイを飼い暮らしているサーミ人である。その演技を超えた佇まいは高く評価され東京国際映画祭では最優秀女優賞を受賞している。劇中の民族衣装、小道具、トナカイの扱いなどはすべて正確に再現されている。

音楽を手掛けるのは、ラース・フォン・トリアー監督の『ニンフォマニアック』(2013)、『メランコリア』(2011)、ニコラス・ウィンディング・レフン監督『オンリー・ゴッド』(2013)などに携わったデンマークの作曲家クリスチャン・エイドネス・アナスン。

ストーリー
忍び込んだ夏祭りで、あなたに恋をした―私を連れ出して

1930年代、スウェーデン北部のラップランドで暮らす先住民族、サーミ人は差別的な扱いを受けていた。サーミ語を禁じられた寄宿学校に通う少女エレ・マリャは成績も良く進学を望んだが、教師は「あなたたちの脳は文明に適応できない」と告げる。

そんなある日、エレはスウェーデン人のふりをして忍び込んだ夏祭りで都会的な少年ニクラスと出会い恋に落ちる。トナカイを飼いテントで暮らす生活から何とか抜け出したいと思っていたエレは、彼を頼って街に出た――。

サーミとは

aboutsami

サーミは、スカンジナビア半島北部の北極圏を中心に、トナカイ遊牧民として知られる少数先住民族です。言語は、ヨーロッパ人の中心言語インド・ヨーロッパ語族と異なったウラル語族に属します。分布地域はサーミ語ではSapmi(サプミ)、北欧諸国一般にはLapland(ラップ・ランド)と呼ばれてきました。しかし現在は、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの北欧3ケ国とロシアの計4ケ国に分断されています。

サーミは、大きな角のあるトナカイとともに季節ごとに移動しながら、極寒の自然を生き抜いてきました。厚い毛皮をまとったトナカイは極北の寒冷気候にも耐える動物です。人間もその毛をまとい、テントの中にも敷いて暮らしてきました。フィヨルドの崖湾の入りくんだスカンジナビア半島の海岸は漁業資源豊かな海です。内陸の河川や湖沼にもサケやマスが豊富です。陸地には、さまざまなイチゴ類、漿果類やキノコが実ります。極北の自然の恵みを糧にかれらは生活してきました。

(劇場用パンフレット長谷川紀子さん解説より)




「サーミ」という言葉は本作で知りましたがラップ人のことなのね。エスキモー→イヌイットと同じ蔑称問題。主人公が際立って短躯なのでそういう民族的特徴かと思いましたが金髪碧眼もいるし、長身もいる。血統的には広義でいうコーカソイドだそうです。そういう外観の違いですが、白髪高齢になるとスウェーデン人と見分けが付かなくなるのが面白く、スウェーデン人旅行者と一緒にサーミの民族風習を詰る主人公がなんとも。お孫さんは金髪でしたが設定上血が繋がっているの?

民族学校の先生も基本は親切心、突然訪問した彼氏の両親も一宿一飯の提供、彼氏も基本優しいし、飛び込みで行った都会の学校も入学金を用意すれば入校を認めるなど映画観終わった後によくよく考えると演出上、主人公は意図的な差別らしい差別は殆ど受けていない流れでして、あとは迷惑な善意と憐憫、好奇の目と無邪気な邪気。唯一と言ってもいい学校近隣の悪ガキによる虐めについても民族衣装と異臭の模様で(相当臭いのでしょう。体臭に関するエピソードは何度もありましたし)、そういや朝鮮学校の女生徒さんも通学でチマチョゴリ着なくなったそうですね。校内着用だとか。素朴な疑問なんですが、なんで通学服がチマチョゴリだったんだろう?共和国の学生さんもチマチョゴリで通学しているの?

ということで表面的なものを追いかけても充分面白い作品ですし、穿った見方をするなら重畳的に発見があります。因みに現在のサーミ人は定住型に収束しているそうで、トナカイ放牧が出来なくなった理由はチェルノブイリ事故による複合的トナカイ汚染だそうです。

満足度(5点満点)
☆☆☆

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Posted by kingcurtis 固定リンクComments(1)映画 | 人権問題
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コメント
ニルスはラップランドを目指したのにね。
Posted by んんー at 2017年11月17日 03:50
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