2017年03月02日

【映画評】TOMORROW パーマネントライフを探して

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DEMAIN [Blu-ray]
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大好きなメラニーが「コレイイヨ!」って勧めてくれたので拝見しました。とはいえ変な宗教とかイデオロギーとか獣権団体、九条教団、放射脳等のりこえねっと的な邪悪さや、ハリウッドの金持ちセレブが上から見下すアカデミー賞的なポリコレ警官ごっこも警戒しましたが、思想政治的にフラットな作品です。問題なし。

映画『TOMORROW パーマネントライフを探して』オフィシャルサイト

イントロダクション
クエンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』などハリウッドでも活躍、大ヒット作の『オーケストラ!』で知られる女優メラニー・ロラン。監督としてもカンヌ国際映画祭で作品が上映されるなど評価が高く、ファッション誌の表紙も飾る女性たちの憧れの存在。そんな彼女が、活動家・ジャーナリストのシリル・ディオンと、フード、エネルギー、マネー、教育の今を巡る旅に出た。“新しい暮らしを始めている人々”との驚きの出会い。世界とつながりシェアしながら、新しいライフスタイルが見えてくる―。

ストーリー
2012年、21人の科学者たちが権威ある学術雑誌「ネイチャー」に、私たちが今のライフスタイルを続ければ、人類は滅亡するという論文を発表し世界に衝撃が走った。 女優で監督、子供を持つ母でもあるメラニー・ロランは、シリル・ディオンと共に、未来のために解決策を求めて世界へと旅に出る。

1stステージ:新しい食のあり方
デトロイト:アーバンファーム
大半の住民が自動車産業に従事する単一工業都市だったデトロイトは、1960年以降、工場閉鎖に伴い従業員は失業、人口は200万から70万に減少した。新鮮な食品が手に入らなくなり、残った貧しい住民たちは、自給自足を始めた。この密集地帯には約1600のアーバンファームがあり、2400ヘクタールもの未開墾地がある。デトロイトの例はアメリカ国内と世界の数十の都市にも影響を与えた。

トッドモーデン:インクレディブル・エディブル
マンチェスター近郊にある人口1万4000のトッドモーデンは、世界的なインクレディブル・エディブル(みんなの菜園)の生まれた地。これは町の真ん中で花壇や公共の土地に作物を植え、共有するというもの。何百種類もの果物の木、豊富な種類の大量の野菜を植え、園芸農業の訓練センターを設立し、農民たちの移住を受け入れた。このやり方は数十カ国と数百の町にも広がった。

ル・ベック・エルアン:アグリカルチャー※1
ル・ベック・エルアンには、フランスのパーマカルチャーで最も成功した農場がある。自然のままをモデルとし、人間が介在するのは、生産性の向上と資源のエコシステム構築のためだけ。何も加えず、石油も、除草剤も、機械も動力も使用しない。収穫は量も質も充実しており、更には腐植土をつくり、植物多様性を守り、CO2の削減にも寄与している。
(※1)パーマカルチャー…持続型農業。パーマネント(永続性)と農業(アグリカルチャー)、そして文化(カルチャー)を組み合わせた言葉。

2ndステージ:石油など化石燃料からの脱却
コペンハーゲン:カーボン・ニュートラル※1
2012年、カーボンニュートラルを実現させるため、風力発電機建設、地熱エネルギーの開発などを実施。大手企業は石炭からバイオマス・エネルギー(※3)へ方向転換。農家の藁や廃材を利用して、130万世帯の電力を生み出す。2025年までにカーボンニュートラル100%を目標、市民の50%が自転車で移動し、緑のある空間から300メートル以内で生活する都市型の生活計画を構築した。
(※1)カーボンニュートラル…ある生産や活動を行う場合に排出される二酸化炭素(カーボン)の量と吸収される二酸化炭素の量が同じ量である状態のこと。
(※3)バイオマス・エネルギー…エネルギー源や原料として使うことができる、再生可能な生物由来の動植物資源(化石燃料は除く)の総称。

レイキャビク:再生可能エネルギー※4
1970年代の石油危機が脱化石燃料に舵を切らせた。レイキャビク市は水力発電、地熱エネルギーなど、再生可能エネルギーで利益を得ている。火力・原子力発電は一切ない。
(※4)再生可能エネルギー…化石燃料とは違い、太陽光、風力、地熱、水力といった自然の力で常に補充されるエネルギーのこと。

レユニオン島:アグリ・エナジー※5
島内で使用されるエネルギーの35%が再生可能エネルギー。住居、食料、エネルギーの島への供給問題を解決するため、アクオ・エナジー社はアグリソーラーを開発。温室の屋根を使って太陽光を発電、電気を供給。ソーラーパネルの屋根と引き換えに、温室を無料で農民に提供している。
(※5)アグリ・エナジー…農地を活用した再生可能エネルギーのこと。

サンフランシスコ:ゼロ・ウェイスト
ゴミ・ゼロの象徴的都市。2020年までにすべてのゴミをリサイクル活用させる、「ゼロ・ウェイスト」プロジェクトを推進。活動は数年内に市の全域に達する予定で、いまやゴミの80%が再利用され、堆肥や再生品として活用されている。さらに、税金の優遇制度も設定されている。

3thステージ:消費を増やしながら、同時に減らすことはできない
リール:エコロノミー※6
封筒づくりを専門に行うポシェコ社は、「環境配慮型の生産体制のほうがより経済的である」という信念のもと、20年間会社を運営してきた。その結果、フルタイムの雇用を生み、労働時間も短縮、緑の拡大のリーダーとなった。工場は、環境保護を理想的に行っている。
(※6)エコロノミー…エコロジー(環境)とエコノミー(経済)の融合、環境を保護しながら節約して経済活動すること。

トットネス:トランジション・タウン
2006年、ロブ・ホプキンスがトットネスで始めたのがトランジション・ネットワーク(※7)。まず、町中の庭や畑を共有するということから始め、土地所有者に対して、土地をもっていない人たちに貸し出すよう奨励。この運動は町独自の地域通貨であるトットネス・ポンドの創設という経済分野にまで広がった。また、エネルギーや交通といった分野にも広がり、世界で1200人におよぶリーダーが育っている。
(※7)トランジション・ネットワーク…石油への依存と地球温暖化を防止するため、理想的な地域作りを目指す。

ブリストル:地域通貨
発展を遂げた地域通貨の成功例。ブリストル・ポンドは市内に800軒ある店やレストランで使える。コミュニティを支えるために地域通貨が役に立ち、地元企業の振興にも寄与している。食品も建材も地元で手に入れられるものは多く、輸送時間の短縮で二酸化炭素の排出も減らせる、地産地消のグリーン・エコノミーである。

バーゼル:補完通貨
世界有数の補完通貨の例。ヴィール(WIR)銀行は、1929年の世界恐慌と銀行の過度な警戒に直接影響を受けた15名の起業家によって、1934年に設立。使用範囲が限られた無利子のWIR通貨を作り、相互貸付システムを提供。経済危機で銀行システムが麻痺している間も企業が営業でき、かなり低いコストで投資ができるようにしている。

オークランド:ローカルビジネスネットワーク
ローカルビジネスネットワーク(地元で生きる経済のためのビジネス連合)のバリーは3万5000の起業家が所属し、全米に渡って80のネットワークに分けられている団体。10年で、アメリカにおける地元起業家の最大のネットワークに成長し、地域と起業家たちが雇用を生み出し、資金の再割り当てを行い、地元の食料システムを発展させるツールも作れるようにした。

4thステージ:私たちが持っている力”民主主義の問題
レイキャビク:市民革命
2008年の金融危機によって、政府は退陣に追い込まれ、市民は銀行を救済しなかった。2010年、政治家、銀行家、大企業を監視する組織が生まれ、無作為に選ばれた市民1000人が政策提言し、新憲法を作成する25名の市民を選出。市民による市民のための憲法を作った。ウェブを通して寄付金が集まり、検討会はつねにオープンなものだった。2011年に新憲法の草案を国会に提出、国民の67%が賛成したが、保守党が拒んだ。

カザンバッカム:グラムサバ
革命的な民主主義の村。2006年、村長になったエランゴ・ランガスワミーは村の集会「グラムサバ」を開いた。すべての家庭の人たちが平等に代表として選出され、市議会と同様の方式で問題について議論する。村民たちが決めたことに基づいて、村長が実行計画を立てて村民たちに提示、集会において承認。承認が得られた後、村民たちが計画を実行に移すことを村長は要請する。

5thステージ:人として成長するため大切なもの
ヘルシンキ:教育改革
フィンランドが教育システムの改革に取り組んで40年。2000年になって、OECDによる15歳の子どもたちに対する国際的な学習達成度調査(PISA)で、フィンランドは世界でもっとも優秀な成績を収めた。ヘルシンキ郊外にあるキルコヤルビ小学校を支える哲学は、子どもたちに将来に備えて学び方を教えること。また、小学校には全国的なテストはなく、高校の卒業時に行われる共通テストが存在するだけである。




正直、地域通貨パートまでは「ふ〜ん」って感じでしたが、デモクラシー・パートとエデュケーション・パートは面白かった。インドのアンタッチャブル階級乞食がバラモン階級乞食と建物を区分し同一敷地で共生しているそうで、地域レベルでは手の付けようがないカースト制度は留め置き、不可触賤民リーダーを据えた合議体による民主主義方式により身分差別制度を包含したまま合理的に住環境問題を解決。これは目からウロコ。

エデュケーション・パートはヘルシンキの学校が事例。すし詰めだった定員を半数に削減し担当職員を倍に配置。資源も産業もないフィンランドが国家として生き残る術は「頭脳」しかないそうで、独創性創造性を持たせるため指導内容を個々人の適性にアジャストし画一的なテスト形式を排し、基本の基本に絞り「考える力教育」に特化した結果、国家規模でトップクラスの成績。社会人同士なら伝わると思いますが「勉強」ってのは学校卒業してからが本番でして、逆回しすると学校の時に身に付けるスキルは「自分に最適な学習仕組み作り」「学習するための基本所作(読む・書く・理解する・伝える・持続力・集中力)」だけでいいんですよ。結果でなくプロセス。インプット・アウトプットの経路。咀嚼する力。とはいえフィンランドと違い我が国は人員的時間的制約から前者は画一方法しか学べず、学外教育機関は受験に特化しているので尚の事プロセスより結果。結局、「仕組み」に早く気付いた者勝ちの掴み取り状態となっているのが現状。そして咀嚼力弱い者は噛まずとも飲み込める流動食に魅了され易いので、「何故※※なのか?」を考えることが段々億劫になる。行き着く先が「とりま反対」ワンセンテンス・ポリティクス集団シールズ。共産党筋が発明した若年向け政治思想のネットワークビジネス。

何が何でも受験偏重が悪いとは申しませんが、俯瞰的にIQ大差なき筈の日中韓でのノーベル賞受賞者問題。結果論として高度な幼児教育や過度な受験戦争は百害あって一利なく、糞の役にも立たないということ。「何故※※なのか?」がまるで分からないので権力者のプロパガンダを無思考無批判で全て受け入れ、マスコミが批判すると地滑り的に魔女狩りし、挙句の果てに泣き叫ぶ。
火病 - Wikipedia

罪刑法定主義を否定し最高法規として憲法より国民情緒法を上に据える民主主義の先進国というかデモクラシーの墓場。当事者に自覚症状が一切ないだけにカースト制度自縄自縛なインドよりある意味深刻。



とはいえ、本作の全体を貫くのは西側先進国の上澄みのお話でして、貧困問題や少子化問題、移民問題、イスラムとかアフリカ、中国北朝鮮の暗黒社会現実に置き換えると砂上の楼閣っぽさは否めません。そういう意味でもインドの例は民度格差を擬似的に埋める参考事例になりそうですね。南北朝鮮合併時とか。

満足度(5点満点)
☆☆☆

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Posted by kingcurtis 固定リンクComments(3)環境問題 | 映画
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コメント
まあ、なんだかだいってもいずれは絶滅するんだろうけどね。>人類
Posted by 名無しさんはデマに苦しんでいます at 2017年03月02日 16:08
真の民主主義だの理想社会を作ろうと思ったら、程度の高い人間集めて文句言わずにみんなで汗流して努力して自立集団作らないとだめだっって事だ。
しかし日本の左翼はウチの母が言ってた「共産党のもんは文句ばかしゆうて、いっちょん働かん」だから、何の役にも立たない。甘ったれの不要物。
Posted by aikobros at 2017年03月02日 20:17
でもさー
OECDが2013年に発表した大人の学力調査(PIAAC)結果で、日本は「読解力」と「数的思考力」で世界1位。
いずれも2位のフィンランドに勝ってるんだよね。
フィンランドはそんなにすごいのか?…
Posted by 名無しさんはデマに苦しんでいます at 2017年03月02日 21:20
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