2015年05月12日

【映画評】皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇

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Narco Cultura
Narco Cultura

凄くいい内容なのになんちゅうタイトルを付けるの。ビジュアルの「ナルコ・コリード」が更にいんちき臭い。(原題はnarco cultura 直訳すると「麻薬密売文化」です)とはいえ中身は凄い映画でした。カルテルからの襲撃を恐れ警官はマスク着用必須とか意味不明なメキシコの最前線。

映画「皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇」


イントロダクション

「世界で最も危険な街」とされるメキシコの都市シウダー・フアレス。およそ100万の人口を抱えるこの街では、年間3,000件を越す殺人事件がある(2010年3,622件)。地元警察官として殺人事件の現場で証拠品を集める男リチ・ソト。彼と彼の同僚警官たちは、報復を恐れて黒い覆面を被って事件現場に出動する。メキシコでは起きた犯罪の3%しか捜査されず、99%の犯罪は罪に問われること無く放置される。実際、下手に捜査を続けると命が危ない。メキシコ国内で強大な力を持つ非合法の麻薬密輸カルテルが、それらの事件の背後にいるからだ。彼らは警察組織や軍を買収し、捜査を阻む。組織に従わないものは次々と処刑される。リチの机の上には、現場検証で集めた証拠物品の山が積み上げられていくだけ。周りの人々は「銃弾コレクター」と彼を皮肉まじりに揶揄する。1年間で彼の同僚警官が4人も殺害されている。真面目に職務をこなす警官にとって、フアレスは非常に危険な街なのだ。国境をまたいで目と鼻の先にあるアメリカ合衆国の都市エルパソは、年間殺人件数5件、全米で最も安全な街だ。家族は危険なフアレスを離れてアメリカに行くようリチに強く勧めるが、彼の故郷を想う気持は強く、街を少しでも平和にしたいとの信念を持ち、決して離れようとは思わない。「この街にあるのは、死と暴力だけじゃない。愛もやさしさも気遣いもある。この仕事で私は街を救いたいんだ。」

麻薬カルテルのボスたちは、“ナルコ・コリード”という、現在メキシコ国内だけでなくアメリカ合衆国でも人気を集める音楽ジャンルで、英雄として讃えられている。ナルコ・コリードの歌手、エドガー・キンテロは、その人気に乗ってのし上がっていく若者だ。麻薬ボスたちは彼を呼びつけ、自分の武勇伝を話し、彼に歌にしてもらう。歌が気に入ればボスたちはエドガーに1万ドルを超える多額のチップを払う。エドガーは彼の所属するバンド“ブカナス・デ・クリアカン”でCDアルバムをリリースし、セールスは10万枚を超えて人気急上昇中だ。CDは飛ぶように売れ、ライブハウスはお客でいっぱい。レーベル主催者は「俺たちは次のヒップホップになるのだ」と息巻く。ティーンエイジャーたちに人気のこの音楽ジャンルの歌詞の内容は、殺し、拷問、誘拐、麻薬密輸にまつわる暴力的なもの。ライブのステージ上では、バンドメンバーがアサルト・ライフルやバズーカ砲を持って登場する。麻薬王たちを英雄視するその音楽は、メキシコ国内では放送禁止となっているが、一方でいまや彼らのアルバムは、全米のウォルマートでも販売されビルボードにもランクインしている。メキシコ系アメリカ人のエドガーはロサンゼルス育ち、実際にはインターネットでしかメキシコの麻薬カルテルのことを知らない。本当のギャングたちに会いたいと、彼はメキシコ最大の麻薬密輸組織、シナロア・カルテルの本拠地、クリアカンへと旅立つ。リチとエドガー。暴力が蔓延する狂った世界に身を置きながら、正気を保って、自分の住み慣れた街を必死に守り抜こうとする男と、麻薬が生み出す莫大な富の夢を体現し、成功を掴もうとする男。この映画はそれぞれ対照的な人生を送る二人の男の物語でもある。

監督インタビュー

Q:まず、監督ご自身についてと、なぜこの作品を作るに至ったかを教えてください。
私はイスラエルに生まれ、1999年に、ニューヨークに移り住みました。私は20年間フォトジャーナリズムに従事しており、軍事衝突とその社会に対する影響について撮影してきました。2008年から、メキシコのシウダー・フアレスの暴力を写真に収めるようになり、2年間暴力の記録を撮影し続けて、すっかり圧倒されてしまいました。そして、死や暴力、犯罪現場の写真を見せるだけでは、私が伝えたい物語を伝えきることは出来ないと考え、映画を撮ることに決めたのです。

Q:麻薬戦争を扱った他の映画作品との違いはなんでしょうか。
これまで麻薬戦争について作られたものは、全てインタビュー形式のドキュメンタリーです。それに時々借りてきた資料映像が挟まれるたぐいのものでした。『皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇』はシネマ・ヴェリテ的なドキュメンタリーで、麻薬戦争に巻き込まれた二人の登場人物の人生を、一人のカメラマンが追っています。この映画は、観る者を現場のど真ん中に連れて行きます。獣のはらわたのさなかに。フアレスの街角からLAのナルコ系のクラブ、それからシナロアの麻薬ボスのリヴィング・ルームまで。本作品はメキシコの麻薬戦争の内情にかつて無いほど入り込んで撮影しています。

麻薬戦争は一説に6万人を超えると言われる命を奪っています。犠牲者の数がうんざりするほど繰り返される一方で、麻薬取引によって生み出される、より広い社会的なリアリティーについては、ほとんど語られていません。この作品では、国境の街で生き抜く厳しさを描くだけでなく、麻薬取引に不可避的に関わったり、影響を受けたりしている何百万人ものメキシコ人とラテンアメリカ人が分かち合う文化や、「ナルコ・ラグジュアリー(麻薬密輸がもたらす富)」に対する欲望についても描いています。

Q:このドキュメンタリーを完成するのに作家として一番困難だった部分は何でしょうか。なにか想像しなかったような事態はおこりましたか。
まず第一の苦労は、この作品の可能性を信じて、製作チームに参加してくれる人たちを捜すことでした。プロデューサーを探して、資金を投入してもらったのは大きかったです。同様に私とフアレスに一緒に行ってくれる録音技師を見つけられたことも。彼らと編集マンがチームに加わって、プロジェクト自体が良い形で進行できるようになりました。

それ以外の苦労は、取材しながら安全を保つことでした。登場人物たちを通して麻薬戦争の神髄に近づこうといつも試みていたので、彼らの完全な信頼を得ることが重要でした。彼らの信頼を得たあとは、自分たちが撮影したくないことは何なのかを明白にしなければいけませんでした。安全を守るため、そして他の人を危険な目に遭わせないために、どこかできっぱり線を引く必要がありました。撮影時だけでなく、編集室でもその問題は現実化しました。誰かを危険にさらす可能性があると我々が考えた場面は、結局映画には使いませんでした。

Q:あなたは写真家として非常に印象的な仕事を残しています。初めて映画というものを手がけてみていかがでしたか。
長編ドキュメンタリーを作ることは何て複雑で疲弊するものなんだ、と思いましたよ。報道写真は非常にミニマルな表現なのです。一人で行うものですし、シャッターを押せばだいたい仕事は終りです。映画というのは全く別のものです。編集作業に至るまで一緒に仕事する人の数も多いですし、何度も映画の物語について考え、形作っていかなければなりません。この二つの表現は非常に異なっていて、私はこの作品を製作しながら映画作りについて学んでいきました。一方で報道写真というのは、映画作りの入門として非常に役に立つのです。わたしの現場での経験、つまり恐怖と危険のなかで撮影すること、報道で培った私のものの考え方、取材対象の見つけ方、取材の仕方、そしてもちろん光と影の捉え方の感覚。それら全てが、この作品に寄与しました。

Q:この映画の観客に何を感じて欲しいですか。この作品を通して特に伝えたい希望や感情がありますか。
感情といえば、私はこの映画を見た人に、私がこの題材を取材していた4年間に感じていた無力さや、やるせなさを胸に映画館を去ってほしいと思います。麻薬戦争が、自分と関係のないどこか遠い国の出来事で、国境の先でのみ起きていることだと思わないでほしい。これは我々の問題ですし、我々もこの問題の一部を成しているのです。問題を否定しても、その問題が消えてなくなることは無いのだと理解して欲しい。若い世代は、現状に色濃く影響を受けます。組織犯罪こそが自分たちが浮上する唯一の道だと信じるような、そんな世代を我々は残したいでしょうか。機能していない政治状況を見過ごしながら、状況が良くなっている、などと言いつづけることなどできるでしょうか。

麻薬戦争の歴史とカルテル勢力図

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セタス
アメリカ合衆国の麻薬取締局によって「最も進歩したテクノロジー を持ち、洗練された、暴力的な集団」とされるカルテル。セタスの 登場によってメキシコの麻薬戦争に絡む暴力が激化したと言われ ている。元々はゴルフォ・カルテルのボス、オシエル・カルデナス・ ギジェンが90年代の終りにメキシコ軍の特殊部隊員らを雇い、カ ルテルの武装部隊としたもの。その後ゴルフォ・カルテルと袂を分 かち、独自の組織となった。隊員にはZ(セタ)のコードネームが付 けられている。創設時の隊長であるZ-1=アルトゥーロ・グスマンは メキシコ軍との銃撃戦で2002年に死亡。麻薬密輸よりも恐喝や 誘拐などその他の犯罪からより多くの資金を得ているとされる。メ キシコ北東部からメキシコ湾岸地帯を支配し、グアテマラにも勢力 を伸ばしている。

ゴルフォ・カクテル
アメリカ禁酒法時代にさかのぼる歴史を持つ、メキシコで最も古 い麻薬カルテル。当初はアルコールの密輸をしていたが、やがて コカインなどの麻薬を扱うようになった。かつてはメキシコで最大・ 最強を誇ったが、武装部隊として創出したセタスに裏切られ、かつ ての敵対組織シナロア・カルテルと手を組んでいる。本拠地はタ マウリパス州マタモロス市。2014年11月4日にはタマウリパス州 の警察司令官が暗殺されたが、タマウリパス州はゴルフォ・カルテ ルとセタスの縄張り争いの舞台である。

テンプル騎士団
カルト宗教的な性格を持ったカルテル、「ラ・ファミリア」のボス、大 狂人=ナサリオ・モレノらによって創出された集団。2011年にラ・ ファミリアが内部分裂し、主流派がテンプル騎士団と名称を変え た。モレノは暗殺や斬首を“聖断”と呼び、自分自身の“聖書”を書 きあげた。一方でモレノらは、農民への貸し付け、灌漑事業への 出資、学校や教会の建築などによって地元ミチョアカン州の貧困 層に多大な人気を得ていた。メキシコ軍との銃撃戦で2010年に 死亡したとされ、組織はこれを聖人に祀り上げ、廟も建てられた。 2014年3月に生存が確認され、再度銃撃戦が行われ、死亡が確 認された。最近は地元住民がテンプル騎士団に対抗するため、自 ら武装し自衛団を結成して、抗争にも発展している。ミチョアカン 州を拠点とする。

シナロア・カルテル
世界最大級の麻薬密輸組織。シナロア州・デュランゴ州・チワワ 州にまたがるメキシコ最大の麻薬生産地“ゴールデン・トライアング ル”に強い影響力を持ち、また南米産のコカインを毎年トン単位で アメリカ合衆国に密輸しているとされる。『フォーブス』誌の世界長 者番付に名を連ね、史上最大のボスとされたチャポ=ホアキン・グ スマンが2014年2月に逮捕されたことによって、シナロア・カルテ ルの状況は流動的になっている可能性がある。本作品の主人公 のひとり、エドガーが旅をするシナロア州クリアカンが本拠地。エ ドガーはクリアカンで、シナロア・カルテルのギャングたちに接し、 その権勢を目の当たりにする。

ティファナ・カクテル
グアダラハラ・カルテルが分裂して生じたカルテル。80年代末から 90年代前半にかけて、メキシコで最も大きく暴力的な犯罪組織と されていたが、ボスであるアレジャーノ・フェリックス兄弟の相次ぐ 逮捕、殺害によって現在は弱体化。しかし、地元のティフアナで は変わらず影響力を持っていると見られている。本拠地はバハ・カ リフォルニア州、ティフアナ。

ファレス・カクテル
この作品に登場するリチ・ソトが住む、チワワ州シウダー・フアレス を拠点とするカルテル。映画撮影時には、フアレスの街を舞台に シナロア・カルテルと激しい抗争を行っていた。かつてメキシコか らアメリカへのコカイン密輸の大部分を担っていたが、ボスの整 形手術の失敗による死、またつながりのあった将軍の逮捕もあり、 現在はシナロア・カルテルに縄張りを奪われつつある。殺人部隊 のラ・リネア、地元ギャング団バリオ・アステカなどを傘下に置いて いる。

history





2013

映画が作成された2010年当時、メキシコのファレスでは年間3,622人が殺害され、対岸のテキサス州エルパソでは年間5人が殺害されたそうです。南北朝鮮並の格差社会。

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永く続いているようですが、改めて振り返ると2007年からだったんですね。あれだけ人が殺されたら、一件一件警察が捜査するのは無駄に思えてなりません。軍事独裁政権ってのも時と場合では必要悪かも。

ナルコ・コリードの人気ボーカル兄ちゃんの情報収集先はネットのグロサイトってのがみっともない。アメリカパートは半分以下でよかったのでは?日本の任侠映画と同じくああいうカルチャーって万国共通普遍的なモノなので、あそこまで尺を割いて掘り下げる必要はないでしょう。
それ以外はぐうの音も出ません。夥しい死体死体死体。バラバラ遺体も首ちょんパも全てモザイクなし。極限の世界を写した素晴らしいドキュメンタリー作品です。麻薬戦争に関心がある人は是非映画館で。

満足度(5点満点)
☆☆☆☆

メキシコ麻薬戦争: アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱メキシコ麻薬戦争: アメリカ大陸を引き裂く「犯罪者」たちの叛乱
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Posted by kingcurtis 固定リンクComments(3)映画 | メキシコ
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コメント
しょぼい国家がその状態を一旦整える必要がある時は、
独裁者がいたほうがまとまりますよね。
マンネルヘイムやフランコ、アンリ・ギザン。
カダフィもよく頑張ったほう。
Posted by んんー at 2015年05月12日 13:55
>軍事独裁政権ってのも時と場合では必要悪かも。

アラブの春の大失敗を見るとまさにその通りかと。
ISISがのさばるようになるよりは、ハマー虐殺だのなんだの言われても
アサド政権がシリアを牛耳ってたほうがはるかにましだと思う。
Posted by 名無しさんはデマに苦しんでいます at 2015年05月12日 20:57
アサド政権の遊撃隊というか、独立愚連隊がISISなんだけどね。アサドに敵対する組織ばかり襲ってテリトリーを広げるとか。

クレしんもメキシコ映画だし、注目の国なのでしょうか
Posted by 名無しさんはデマに苦しんでいます at 2015年05月13日 23:45
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