2014年04月14日

【映画評】アクト・オブ・キリング

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ポスター アクリルフォトスタンド入り A4 アクト・オブ・キリング 光沢プリント
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よく分からないのですが、マイナーな内容且つ、公開後それなりの日時が経過しているのに箱は超満員です。なんで?







映画「アクト・オブ・キリング」|公式サイト


これが“悪の正体”なのか―――。60年代のインドネシアで密かに行われた100万人規模の大虐殺。その実行者たちは、驚くべきことに、いまも“国民的英雄”として楽しげに暮らしている。映画作家ジョシュア・オッペンハイマーは人権団体の依頼で虐殺の被害者を取材していたが、当局から被害者への接触を禁止され、対象を加害者に変更。彼らが嬉々として過去の行為を再現して見せたのをきっかけに、「では、あなたたち自身で、カメラの前で演じてみませんか」と持ちかけてみた。まるで映画スター気取りで、身振り手振りで殺人の様子を詳細に演じてみせる男たち。しかし、その再演は、彼らにある変化をもたらしていく…。

実際の大量虐殺者に、カメラの前で自らの殺人を演じさせるという前代未聞の手法は、証言と資料のみで構成される一般的なドキュメンタリーとは大きく異なり、出演者と観客の両方に、大きな衝撃を与えることとなった。出演者は演技(=アクト)を楽しむうちに、自らの行いを追体験し、あるいは仲間たちが演じる様子を見ることで、彼らは人生で初めて、自分たちのした行為(=アクト)に向き合うことになる。過去に類を見ないアイディアと勇気を持ったこの映画は、長く恐怖に支配されてきたインドネシアの歴史に大きなインパクトを与えたのはもちろん、単なる告発ドキュメンタリーを超越し、「“悪の正体”とは、“悪”とは何なのか」、「人間の本当の恐ろしさとは」、という全人類にとって普遍の問題を、我々の眼前に突きつけた。それゆえに、世界中の至る所で、これほどまでに強く人々の心を揺さぶり続けているのである。

完成前のラフカットを観て心を奪われたエロール・モリス、ヴェルナー・ヘルツォークという2人の巨匠監督が製作総指揮として参加し、劇場公開を全面的にバックアップしている本作は、2012年のテルライド映画祭、トロント映画祭で上映され、その衝撃的な内容と斬新な手法、圧倒的な作品力が話題を呼び、瞬く間に批評家たちの熱烈な支持を集めた。翌2013年にはベルリン国際映画祭で2部門を制覇し、以降、15以上の映画批評家協会賞を総なめにしたほか、山形国際ドキュメンタリー映画祭最優秀賞はじめすでに50以上の映画賞を受賞。さらに、数々の著名なメディアの年間ベスト1にも輝いている。快進撃は今なお続き、第86回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にもノミネートされ、オスカー受賞の最有力候補として、その圧倒的な評価を不動のものとした。

この映画は、1965年9月30日深夜にインドネシアで発生し、この国のその後の運命はもちろんのこと、国際関係にも大きな変化をもたらした、いわゆる「9・30事件」後の大虐殺を描いたドキュメンタリーである。これは大統領親衛隊の一部が、陸軍トップの6人将軍を誘拐・殺害し、革命評議会を設立したが直ちに粉砕されたというクーデター未遂事件であるが、それだけでは終わらず、未曾有の大混乱をインドネシア社会に呼び起こした。9・30事件そのものは未だにその真相が明らかになっておらず、陸軍内部の権力争いという説も強いが、当時クーデター部隊を粉砕し事態の収拾にあたり、その後第二代の大統領になったスハルト少将らは、背後で事件を操っていたのは共産党だとして非難し、それに続く一、二年間にインドネシア各地で、100万とも200万ともいわれる共産党関係者を虐殺したのである。そしてそれに対して、日本や西側諸国は何ら批判の声を上げることなく口をつぐんだのであった。

それまで、容共的なスカルノ大統領のもとでインドネシア共産党は350万人もの党員と、傘下に多くの大衆団体をかかえる有力な政治勢力のひとつであった。しかしかねてからそれを快く思っていなかった陸軍はその力を削ぐ機会を伺っており、この9月30日の事件を口実にそれに乗り出したものである。とはいえ、当時共産党は合法政党であったから、国軍が前面に出るのではなく、イスラーム勢力やならず者など反共の民間勢力を扇動し、密かに彼らに武器を渡して殺害させたのである。ごく普通の民間人が武器を握らされ、国軍からにわか仕立ての訓練を受けて殺害に手を染めた。イデオロギーの違いから近隣の者はおろか肉親にさえ手をくださねばならない場合もあった。スハルトによる新体制が確立した後の1973年に、この一連の虐殺の中で共産主義者の命を奪ったものに対しては法的制裁が課されないことが検事総長によって正式に決定されたが、その記憶は多くの人にとってトラウマとなって残っている。




一般的には震撼すべき内容なのでしょうが、上述の特殊な映画製作展開上、正直な話、恐ろしいほど退屈でした。
オスカー取った「バックコーラスの歌姫(ディーヴァ)」、「ハンナ・アーレント」と一緒。
同じドキュメンタリーながら「ゆきゆきて進軍」とか「シュガーマン」は面白かったのですが。

自己分析するに、長々と、淡々と、にこやかに「独白」が続き、「展開がない」のが苦手のようですね。字幕見ないとナニ言っているのかサッパリ分からんし、お経みたいで眠くなる。
当時のドキュメンタリー映像挟んだり、様々な人々のインタビューを束ねたらよかったのでは。と、個人的に思いました(それが無理だからこういうスタイルに頼らざるを得ないのですが)。加害者メインで被害者側のメッセージも少なく、全般に亘りフィルムに感情移入できないです。

無論、最後の動揺し「ゲロ吐く」シーンは非常に印象的でした。貰いゲロしそうになった・・
エンドロールの「ANONYMOUS」も洒落になりません。

そうそう。新聞社が「売上目的」に罪もない人を「アカ」だとでっち上げ、主人公がインスタント死刑する一連のリレーション。朝日新聞による「従軍慰安婦」「従軍サンゴ」ほか破廉恥な自作自演の捏造報道(及びそれらに連座する赤報隊襲撃事件云々など)を彷彿したのは私だけではない筈。

最後に、町山さんとデヴィ夫人の公開対談を一部転載。

この大虐殺には日本も関与していた─映画『アクト・オブ・キリング』デヴィ夫人によるトーク全文|60年代にインドネシアで起きた大量虐殺の実行者に再び殺人を演じさせたドキュメンタリー - 骰子の眼 - webDICE

デヴィ夫人


「当時日本の佐藤首相はポケットマネー600万円を、殺戮を繰り返していた人に資金として与えていた」

デヴィ夫人:スカルノ大統領は別に共産主義者ではありませんし、共産国とそんなに親しくしていたわけではありません。あの当時(この映画の背景となっている1965年9月30日にインドネシアで発生した軍事クーデター「9・30事件」)、アメリカとソ連のパワーが世界を牛耳っていた時に、スカルノ大統領は中立国として、アジアやアフリカ、ラテンアメリカの勢力を結集して第三勢力というものをつくろうと頑張っていた為に、ホワイトハウスから大変睨まれましておりました。太平洋にある国々でアメリカの基地を拒絶したのはスカルノ大統領だけです。それらのことがありまして、ペンタゴン(アメリカの国防総省)からスカルノ大統領は憎まれておりました。アメリカを敵に回すということはどういうことかというのは、皆さま私が説明しなくてもお分かりになっていただけるかと思います。

1965年の10月1日未明にスカルノ大統領の護衛隊の一部が6人の将軍を殺害するという事件が起きてしまいました。(この事件は)その6人の将軍たちが、10月10日の建国の日にクーデターを起こそうとしているとして、その前にその将軍たちをとらえてしまおう、ということだったんですが、実際には、とらえただけではなく殺戮があったんです。建国の日には、大統領官邸の前にインドネシアの全ての武器、全兵隊が集まり、その前で立ってスピーチをする予定だったものですから、そこで暗殺をするというのは一番簡単なことだったわけなんです。エジプトのアンワル大統領(アンワル・アッ=サーダート)も軍隊の行進の最中に暗殺されたということは皆さまもご存知かと思いますが、そういったことが行われようとしていたということなんです。

7番目に偉かった将軍がスハルト将軍で、10月1日の朝早くに、インドネシアの放送局を占領しまして、「昨夜、共産党によるクーデターがあった」「将軍たちが殺害された」と言って、すぐに共産党のせいにしました。そして赤狩りと称するものを正当化して、国民の怒りを毎日毎日あおって、1965年の暮れから1966年、1967年にかけまして、100万人とも200万人ともいわれるインドネシアの人たち、共産党とされた人、ないしはまったく無関係のスカルノ信仰者であるというだけで罪を着せられて殺されたといった事件が起こりました。この度、この映画で初めてそれが事実であるということが証明されて、私は大変嬉しく思っておりまして、ジョシュア・オッペンハイマー監督には、その偉業を本当に心から心から感謝してやみません。何十年間と汚名をきたまんまでいたスカルノ大統領ですが、この映画で真実が世界的に広まる、ということにおいて、私は本当に嬉しくて、心より感謝をしております。

町山:クーデターが起こった時、どちらにおられましたか?

デヴィ夫人:私はジャカルタにおりました。大統領もジャカルタにおりました。(スハルト将軍は)大変頭の良い方で、それがクーデターだとなったというのは結果的なもののわけで、要するに、その当時のインドネシアの情勢を完全に彼が握ってしまったということなんですね。そして当時の空軍、海軍の指導者たちにも国民から疑いの眼を向けられるようにしたりしました(*スハルトは陸軍大臣兼陸軍参謀総長)。その当時のアメリカ、日本はスハルト将軍を支援しています。佐藤(栄作)首相の時代だったのですが、佐藤首相はご自分のポケットマネーを600万円、その当時の斉藤鎮男大使に渡して、その暴徒たち、殺戮を繰り返していた人に対して資金を与えているんですね。そういう方が後にノーベル平和賞を受けた、ということに、私は大変な憤慨をしております。

町山:事件が起こった時は、大統領官邸にいらっしゃったんですか?

デヴィ夫人:私はヤソオ宮殿におりました。

町山:戦車が出たり、大変な事態になっていたわけですよね?

デヴィ夫人:そうですね。もうホントに夜は……。あの時は誰が味方で誰が敵か、もう分からない状態で……。戦車の音がゴーッ、と響き渡っていて。私はその音で飛び起きていました。(何か起こった時には)窓を飛び降りて、庭を突っ切って、ヤソオ宮殿の裏にある川の中に身を沈めて、竹をもって日本の忍者みたいにあの冷たい川の中で何分くらいいられるのか、走って何分くらいでそこに辿り着けるか、そんなことを考えて、毎晩ズボンを履いて寝ていました。

(中略)

町山:虐殺が行われていたということを当時は知っていましたか?

デヴィ夫人:はい。PKI(Partai Komunis Indonesia/インドネシア共産党)というんですが、その当時のインドネシアの共産党の幹部たちは、言い訳もできない、そういうチャンスも何も与えられない、「自分たちは無実だ」とは言っていましたけれども、逃げるしか無いということで逃げまわりましたけれども、結局全員捕まって、虐殺されています。その内の一人で、ニョトという幹部がいたんですが、この方が全身を針金で縛られてその針金を引っ張られて亡くなったというニュースを見ていて、まさかそんなことがと思っていたんですが、この映画をみると、そういったことが(確かに)あったんだと……。

町山:そのシーンでてきますね。この映画を観たご感想はいかがでした?

デヴィ夫人:1966年を中心にインドネシアで大虐殺があって、(この映画では)メダンの周りの虐殺しか出てこないんですが、もうジャワ中、それからバリ、スワベシ、スマトラ、もう村から村へと、総なめに殺害されていました。その時にあれだけの人間が殺害されていたのに国連が全然動かなかったんです。国連は完全にアメリカの影響下にあったということがこれでよく分かると思うんですけれども、いずれにしましても、スカルノ大統領は第三勢力というものを作り上げようとした、アメリカに基地を与えなかった、そしてアジア・アフリカのリーダーとなっていたということで、アメリカにとってスカルノ大統領は目の上のたんこぶだったんですね。なので、彼はアメリカによって5回くらい暗殺を仕掛けられたんですが、幸いに神のご加護か、助かって来たわけですけれども。とにかくこれは(その虐殺を証明する)大変貴重な映画で、(映画を通して)初めて真実が世界に伝わるのではないかなと思います。

普通は殺人を犯した人間が、虐殺をしていた人間が、それを再現するという神経、これは非常に異常なことだと思うんですね。監督がそれを虐殺者にそれを演じさせるという、どのように話を持っていったのかは映画をご覧になれば分かりますけれども、最初この映画いったい何なのかしら?と分からなかったんですけれども、段々引きこまれてその恐ろしさに身震いをしました。

(3月25日、シネマート六本木にて)

ということで、内容以前にパッケージとして満足度能わず。

満足度(5点満点)
☆☆

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Posted by kingcurtis 固定リンクComments(4)映画 
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コメント
これは昨年山形国際ドキュメンタリー映画祭でも上映された作品ですね。
罪悪感も一つのテーマね・・・。
悪の心は皆持ってるとジョシュア・オッペンハイマー監督が答えたらしいけど同じレベルの罪悪感では無いよね。

ところデヴィ夫人青色のドレスがお似合いで相変わらずお美しい。お嬢様のカリナさんとお孫さんもいてお幸せなんでしょうね。

Posted by 福岡市民 at 2014年04月14日 19:39
このオバハンは、どうでもエエけど
加害者がどうたらなんて、米国の作品は全て加害者の賛美じゃん。
マントヒヒの延長の白人は言葉を操って正当化するのが慣わしだ。
Posted by 名前はくるくるね at 2014年04月14日 22:24
デヴィ夫人は以前TVで着の身着のまま欧州に逃げたと言ってたと思う。だが最近のTVで、パリに持つ家はフランス人が言うには宇宙人(想像できない金持ち)しか住めない地区に家が有るとかNYには時々行く家(マンションかも)常駐のスタッフに数人雇ってるとかに払う金はドコから?
海外から持ち込む財産にかかる日本の税金に激怒してた。
Posted by 40男 at 2014年04月14日 23:46
津田が絶賛してる時点でつまらなさそうなんだが、これは左翼=共産主義者の被害者面ホルホル映画ですね。
前にあった韓国の虐殺映画と同じじゃん。虐殺自慢が流行ってんの?
Posted by 名無しのクネクネ at 2014年04月15日 02:05
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