2012年05月06日

【映画評】ルート・アイリッシュ

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民間軍事会社の内幕 (ちくま文庫 す 19-1)
民間軍事会社の内幕 (ちくま文庫 す 19-1)

最盛期、イラクには民兵16万人がやりたい放題状態で常駐していたそうです。タイトルの「ルート・アイリッシュ」ってのはバクダッドのとある道路を指す用語。
主要キャストは映画初出演だそうですが、前評判に違わず面白かったです。



映画『ルート・アイリッシュ』ROUTE IRISH公式サイト


公式サイトプロダクションノートより転載。

コントラクターの実態を調査したラヴァーティの脚本

今回の映画でケン・ローチ監督が焦点を当てるのは、コントラクター(民間兵)と呼ばれるイラク戦争での兵士の存在である。主人公のファーガスと親友のフランキーはコントラクターとして戦争に参加していたという設定になっている。「海外の地から帰国の途についた兵士の遺体にまつわる式典は、我々もよく目にするもので、壮厳な音楽、国旗、エスコートと敬礼と、その様子は国家のメディアが詳細に記録する。しかし、同じように戦争に参加しながら、ファンファーレも、ユニオンジャックもない者もいる。その死はどんなリストにも掲載されることがない。それは彼が個人として契約したコントラクトーだったせいだ」と語るのは脚本家のポール・ラヴァーティだ。「戦争を突き進ませるには、彼らの力が不可欠だったはずだ」とラヴァーティは語る。そして、イラク議会が強引に通過させた指令第17号により、コントラクターたちのイラクでの行動は一切裁かれることなく、刑事処分を免れた。そんな社会背景が「ルート・アイリッシュ」でも物語の下敷きとなり、特にドラマの後半では重要な意味を持つことになる。また、戦争の後遺症に悩む元兵士たちをケアする慈善団体、「コンバット・ストレス」を取材することで、後遺症に悩む兵士たちの体験談も映画に取り入れている。

ケン・ローチ監督が見つめるイラク戦争のもうひとつの真実

アカデミー作品賞を受賞した『ハート・ロッカー』、イラクでの息子の死を調査する父親を描いた『告発のとき』、イラク兵の戦場を見つめた『グリーン・ゾーン』など、過去にもイラクを舞台にした映画は数多く作られているが、ケン・ローチ監督は、この戦争をイギリス人の視点で見つめることで、これまでにない物語を創造する。「脚本家のポールがファーガスというキャラクターを作り、友人だったフランキーの死の謎解きを通じて、私たちは戦争をめぐる恐るべき犯罪の様々な要因に近づいていく。なぜなら、歴史は今も人々の人生や経験の中に生き続けているからだ。そういった人々の経験を探ることで、戦争の恐ろしさを見せたいと思った」とローチは語る。「この戦争の最大の犠牲者はイラク人であることも忘れてはいけないと思う。私はアメリカ人の兵士こそが最大の犠牲者であるかのような描き方をしたアメリカ映画にはうんざりしている。彼らだって苦しんできたが、イラク人の苦しみもけっして忘れるべきではない」


映画のポイントというのが、イラクでの「民兵無答責」みたいなルール(指令第17号)があるそうで、それに乗じた民兵によるマンハントと、民間軍事会社のビジネスライク。
日経ビジネスがいい感じで纏めていましたので、要所を転載。
(全文は会員登録しないと読めません)

民間軍事会社のリアルな実態を描く『ルート・アイリッシュ』

 イラク戦争では、西側の正規軍のメンバーのほかに、民間軍事会社と呼ばれる民間企業の武装警備員という名の民間兵士たちが、2万人以上、武器を持って警備任務についていた。彼らの大半は元軍人、つまり民間人なのだが、軍隊顔負けの個人装備品を身につけ、自動小銃を携帯し、また使用していた。戦後の米国による占領期間中、イラクではこの民間兵たちはイラクの法律によって裁かれることなく、しかも軍人でもなかったため、軍の法律の対象にもならないという法の空白の中で、何の責任に問われることもなく武器を使用できる立場にいた。

 ケン・ローチ監督は、今回、その戦争の民営化の暗部に光をあてている。

映画のモチーフになった事件とは

 この映画のストーリーは、細部にわたるまで、過去数年間にイラクで実際に起きた数多くの事件をベースに組み立てられている。恐らくは映画のモチーフになったと推測される1つの事件を紹介しておこう。

 2007年9月16日、バグダッドのニソール広場で、米国の民間軍事会社ブラックウォーター社の民間兵5名が交差点で乱射し、一般市民を17名殺害する事件が起きた。当時この事件はイラク国内だけでなく、米国内でも大きく取り上げられ、米議会がこの事件に関する公聴会を実施するまで大きな話題となった。

 この公聴会で明らかになったことは、2005年から2007年の間に、ブラックウォーター社が実に175件の銃撃事件にかかわり、この間、122名の民間兵を「不適切な行為があった」として解雇していたことである。「不適切な行為」の多くは、民間人への発砲であろう。ブラックウォーター社1社だけでこれだけの事件を起こしていたのだから、イラク全土で見れば似たような事件は無数に起きていたことを示唆している。

 この映画では、「恐ろしい真実」が暴かれているわけだが、これは実は当時のイラクではあちらこちらで起きていた実に日常的な事件の1つにすぎなかったとも言えるわけである。

 この映画を観る上で知っておくといい背景知識にもう1つだけ触れておこう。

民間軍事会社にとっての脅威は

当時のイラクにおいて、米軍や民間軍事会社にとって一番の脅威はIED(即席爆破装置)と呼ばれる仕掛け爆弾であった。路肩に爆弾を仕掛けておいて、米軍車両などが通過するときに爆破させる、又は爆弾を山ほど積んだ車両でターゲットの車に突っ込んで自爆する自動車自爆テロなど、様々な爆弾テロに西側の軍関係者は悩まされた。

 路肩に仕掛けられたこうしたIEDは、携帯電話による遠隔操作で起爆させることが多かったため、道路脇で携帯電話をいじくっている人や、車間をつめてくる車両は、皆テロリストではないかと疑われたわけである。

 また一時期は民間軍事会社の警護車両は、100メートル以内に近づいてきた車両に対しては警告射撃を行う習慣までできていた。敵が一般人の中にいる、だれが敵だかわからない恐怖心は、「やられる前にやる」先制攻撃を常態化させ、この映画で出てくるような事件が、イラクのあちらこちらで起きていた。

 そもそもなぜこんなことになってしまったのだろうか。なぜこんなにたくさんの民間兵たちがイラクに入っていったのだろうか。
(続きはリンク先をどうぞ)


2010年の作品だそうで、大人の事情で日本上映の機会を逸していたそうです。
フィルムの使い回しなのか、上映館はこのざまでした。皆さまお住いの地域は如何でしょうか?

2012.4.27日現在
エリア 上映劇場 電話番号 公開日 公開終了日
関東 東京/銀座 銀座テアトルシネマ 03-3535-6000 3/31(土) 5/11(金)
群馬/高崎 シネマテークたかさき 027-325-1744 6/2(土) 未定
埼玉/川越 川越スカラ座 049-223-0733 8/25(土) 未定
千葉/千葉 千葉劇場 043-227-4591 3/31(土) 4/27(金)
神奈川/横浜 シネマ・ジャック&ベティ 045-243-9800 5/5(土) 未定
北海道・東北 北海道/札幌 シアターキノ 011-231-9355 5/19(土) 未定
宮城/仙台 フォーラム仙台 022-728-7866 6/23(土) 未定
青森/八戸 フォーラム八戸 0178-38-0035 9/8(土) 未定
岩手/盛岡 フォーラム盛岡 019-622-4770 7/14(土) 未定
秋田/秋田 シアタープレイタウン 018-835-6589 9/7(金) 未定
山形/山形 フォーラム山形 023-632-3220 8/11(土) 未定
福島/福島 フォーラム福島 024-533-1717 7/28(土) 未定
中部 愛知/名古屋 名演小劇場 052-931-1701 5/19(土) 未定
富山/富山 フォルツァ総曲輪 076-493-8815 9/8(土) 未定
長野/長野 長野ロキシー 026-232-3016 8/18(土) 未定
静岡/静岡 シネ・ギャラリー 054-250-0283 5/26(土) 未定
静岡/浜松 シネマイーラ 053-489-5539 6/16(土) 未定
近畿 大阪/梅田 シネ・リーブル梅田 06-6440-5930 4/7(土) 5/11(金)
三重/伊勢 進富座 0596-28-2875 7/7(土) 未定
京都/京都 京都シネマ 075-353-4723 4/14(土) 5/18(金)
兵庫/神戸 シネ・リーブル神戸 078-334-2126 4/7(土) 5/4(金)
九州・沖縄 福岡/福岡 ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13 092-272-2222 5/26(土) 未定
長崎/長崎 セントラル劇場 095-823-0900 7/21(土) 未定
沖縄/那覇 桜坂劇場 098-860-9555 6/30(土) 未定


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Posted by kingcurtis 固定リンクComments(0)映画 | テロ
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